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無口な歌詞

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あの日から、やめられない作詞。 歌い出してくれたら嬉しいのに。
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2021年5月の記事一覧

帯に短し襷に長し

帯に短し襷に長し

今夜もシャットダウン
きっと再起動には
時間がかかってしまうから
もうおやすみ
.
.
いつからのことだろう
眠りに就くまでで
映画を一本は観られるくらい
ただ天井を見つめていた
.
小さなずれが積もりに積もって
こうなったのならばまた
改善の糸口も見つけ易いのに
.
今夜もシャットダウン
きっと再起動には
時間がかかってしまうから
もうおやすみ
帯に短し襷に長しと
知ってはいながら
広げたままの

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桃の缶詰め

桃の缶詰め

鮮やかな花束の中に
枯れた花があったとして
それだけで全てを穢す
要因になるのでしょうか
.
解けたリボンが
風に踊ると
色とりどりの花も釣られて
.
花瓶の水も飲める
そんな気持ちで
今さら見つめ返すと
浮かび上がる
もう一つの彩り
まるで囁き
そうした初鳴き
茜色を注す斜め上
蹴りそこなった小石
.
.
穏やかな退屈の中に
割れた日々があったとして
それぞれが最初に戻る
必要があるのでしょうか

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lento

lento

あまりにも青すぎて
空がそれほどに思える
.
それでも高く遠く
なるたけ遠く高くまで
上って行った
見えそうなのにと
.
元気にしているかい?
そんな一言に
救われたのならば
それでもいいけれど
気のせいだと
もしも知った時
誰がそこに居てくれるの
.
.
あまりにも痛すぎて
痣が段々と薄れる
.
それでも深く遠く
なるたけ遠く深くまで
潜って行った
聴きたいからだと
.
優しくしているかい?

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みかん

みかん

青いまま
摘み取られたら
どうするの
もう返せない
でも食べられない
そんな感じ
.
小説は途中でやめられない
それと同じだった
.
下手なりにビリーブ
左側だけ熱い熱い
みかん色に染め上がる空
だいたい独り言
たまに囁いて
剥きかけの果実から
垂れる泪
.
.
知らないで
捥ぎ取られたら
どうしよう
もう戻せない
でも望まれない
そんな感じ
.
行き先はその都度変えられる
それも同じだった
.

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相当傾いた機嫌

相当傾いた機嫌

改まって言うような
話でもないから
「行ってきます」くらい
さらっと零せたら
.
他にも何か
あるのだとすれば
今日じゃない方がいい
.
言葉にしたくない気持ちが
一つになりきれない気持ちが
マーブル模様になって
心に幕を張っているんだ
燦燦と降り頻る陽も
暮れなずむだろう
あと一歩のところで笑った
捨てたもんじゃないと
言われるのは癪に障るけれども
.
.
すれ違っているような
場合でもないから

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I'm Toast

I'm Toast

半ば無理やり
捥ぎ取ったような
傷口は痛々しく
鮮やかな赤は
作りたての苺ジャム
.
あくびと一緒に飲み込んだ塊は
ゆっくりと喉を過ぎる
.
スクロール1つで
簡単に葬られた
埋め立て地の上を行く
忘れてはいけないことと
忘れたくはないこと
曖昧に振り分けてしまったら
きっともう戻せないから
どれだけ面倒臭くても
負けなりのモットーがある
.
.
半ば無理やり
噛みついたような
傷跡は生々しく

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ギャグ

ギャグ

大事なところを
聞き逃した気がして
振り返ったら
よく似た私も笑っていた
.
大事なことほど
言い触らしたくなって
また笑ったら
よく似た私が困っていた
.
最期のために
持ち寄ったクラッカー
間違えて鳴らして
.
こんがらがった場面を
何とかしてでも
落ち着かせたくて
けれどもどうしても
悪循環に嵌ってしまって
やることなすこと
コメディーのように
ならばせめて笑ってほしくて
窺う相手の顔色
.

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minato

minato

たとえば雨の中
びしょ濡れもいとわず
駆け出せることを
勇気だとすれば
今夜はそれに似ている
.
何も言えないのは
信じていたいものだから
深夜発に乗り込んで
輝く君を見送る
.
手を振る姿が
鏡越しに見える
いつの日か
きっと訪れるその時を
幽かに重ねていた
美しい背中に
かける言葉なんて
見つからなくて
一緒に泣いた
.
.
たとえば雨の後
人の目も気にせず
喜べることを
健気だとすれば
今夜

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雨どい

雨どい

規則正しく流れる
あの雨どいのように
この泪もちゃんと
伝ってくれたらなって
思うのだけれど
.
.
雨音に包まれると
懐かしい気がするのは
ずっとずっと昔
始まりの始まりを
きっと思い出すから
.
もう二度と帰ることは叶わない
とても特別なふるさと
.
規則正しく流れる
あの雨どいのように
この泪もちゃんと
伝ってくれたらなって
思うのだけれど
いつも軌跡は変わりなく
頼る間もなく
程なく乾いて

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BOOKS

BOOKS

気味が悪いと
ただそうやって
言われでもしないと
気づかないような
二人ならば
.
半透明のビニール袋なら
それとなく判るかな
.
本を読むその姿
空中に浮かべるのか
背景に並べるのか
前方に連ねるのか
そのイメージの切れ端
誰にも奪えないのに
そんなに大切そうに抱えて
愛くるしい
.
.
君が悪いと
ただそうやって
言われでもしないと
気づけないような
二人だから
.
半解凍のクレームブリュレな

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大人しい大人

大人しい大人

アナタになれなかったアナタは
ワタシになりたかったワタシ
巡り巡っているようで
ずっと変わっていない形
.
冷静になるほどに
よく見えてしまうから
多弁な夜は眠る
.
自分ではないものばかりが
この世界の下書き
好きにならないものばかりが
この未来の下敷き
どんなつもりで立っていようと
少なからずは何かの上に
片足をかけているんだって
悟っていながら
.
.
ワタシになれなかったワタシは
アナタに

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もぐもぐ

もぐもぐ

もぐもぐ もぐもぐ
よく噛んで
.
もぐもぐ もぐもぐ
飲み込んでしまえ
.
複雑な味も
お腹の中ではブレンド
曖昧な顔も
明日になったらフレンド
.
食いしばる歯はもうなくなった
一思いにごっくん
.
.
もぐもぐ もぐもぐ
よく噛んで
.
もぐもぐ もぐもぐ
飲み込んでしまえ
.
退屈な日々も
暦の上ではひねもす
贅沢な意味も
素直になったらつれづれ
.
噛みしめる歯はもうなくなった
一思いに

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him

him

あまり多くは望まないから
あと少しだけここに居て
信じられなくてもいい
今夜中は騙されて
.
.
海岸線に沿って
等間隔に置かれた信号機
あなたが予告した通り
三秒後に全てが青になった
.
握りしめたままだった
手の中には指輪
綺麗だった
.
あまり多くは語らないから
あと少しだけそばに居て
忘れられなくてもいい
今夜中は外させて
独り言が大きくなるのは
ただの癖だから
気にしないで
.
.
口に

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たりないゆめ

たりないゆめ

まもなく潰える
蛍光色の夢
おどろおどろしい
真四角の月
.
たで食う虫も好き好き
振り向き様に見る
善し悪しを知る由もなく
駆け足で街並み
流し見したところで
夢はただの夢
持っては行けない
.
.
ほどなく費える
想像力の種
既に頼もしい
言い訳の質
.
たで食う虫も好き好き
振り向き様に見る
善し悪しを知る由もなく
駆け足で街並み
流し見したところで
夢はただの夢
持っては行けない
.
.

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