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無口な歌詞

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あの日から、やめられない作詞。 歌い出してくれたら嬉しいのに。
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2020年12月の記事一覧

とある夜の影

とある夜の影

何度も説明させないで
ただ淋しい
それだけのことで
泣いちゃ駄目ですか
.
.
夜の静けさが
怖いわけではなくて
賑やかさの消えた
この違和感が不安なの
.
やいのやいのと
繰り返す雑音の中に
日常を捜す
.
何度も説明させないで
ただ淋しい
それだけのことで
泣いちゃ駄目ですか
.
それでも
駄目じゃないとは
言わないで
.
.
増える奇怪さが
嫌なわけではなくて
穏やかさの欠けた
この違和感が

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ララバイト

ララバイト

最後に聴くのは
子守唄がいい
明日もまた
目覚めるように
無邪気に眠りたい
.
ゆりかご
揺らす風は
吐息
.
冷たい指先でなぞる
途中の線のカーブ
迷いのない輪郭だったから
それ以上に語ることなど
もう多分きっとない
ありがとう
おやすみ
.
.
最後に聴くのは
子守唄がいい
腕の中
忘れるように
素直に眠りたい
.
微笑み
返す朝は
綺麗
.
優しい木洩れ日が作る
大きなボタンホール
期限のな

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逃した魚の泳ぐ水槽

逃した魚の泳ぐ水槽

明け方の空が
あまりにも赤くて
泣いてしまった僕を
何処かから見つめている人へ
だからせめて笑っていて
.
暮れてゆく暮らし
巻き戻しても
昨日はない
.
いつかぶつかる壁を見て
広さを知ったように
それならばと
決めつけの中で泳いだ
棲み心地のよさと
美味しいご飯が
言い訳を許さないから
帰れないんだ
.
.
泣き方の癖が
あまりにも強くて
触れてしまったことを
いつまでも気にしている人へ
だか

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心掛け

心掛け

優しい色のコート
道路を挟んだ向こうの通り
見憶えのある面影とか
捜しかけてしまった
.
引き留める手の温もりに
はっとして息をつく
光はいつも片面にしか当たらない
.
どちらかがあるのならば
僕は今日もそっち
こっちにはならないように
そう心掛けているのは
誰のためでもなく
そうなるべきだから
そうであるべきなんだと
.
.
優しい街の感度
景色を睨んだ瞳の通り
可愛げのある淋しさとか
選びかけ

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どうせまたすぐ

どうせまたすぐ

頭文字から
推測する
あたり
それだけが欲しい
それだけが欲しい
.
いつかのレアカード
拾ってきたまん丸の小石
今はどこにある
.
夢が夢のままだったら
僕が僕のままということ
せがんではいないけれども
少し描いてしまった
淡い絵の具の滲んだ明日とか
どうせまたすぐ失くすのに
欲しくてたまらない
.
.
言葉尻から
想像する
ふたり
ここだけに居たい
ここだけに居たい
.
いつかの置き手紙
困っ

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FOURTEEN

FOURTEEN

この世界で一番
人を殺したのは神様か
じゃあ逆に
この世界で一番
人を生かしたのも神様か
.
でもどうだろう
やっぱり
この世界で一番
人を殺したのは人間で
この世界で一番
人を生かしたのも人間か
.
十代で終えるべき
妄想の類いを
今日とて広げて待つ
.
お前の番だと
肩を叩かれるその日
.
.
高い崖から落ちる
そんな気分
耐えるべきは
恐怖心ではなくて
走馬灯に浮かんだ後悔
もうないものばか

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エピソード

エピソード

目の前から居なくなれば
それとなく捜してしまうくせに
追いかけたりはしないんだね
.
掻き込んだ牛丼が
胃の中で踊っている
.
.
手の平から滑り落ちる
それなのに忘れられないままで
投げ出したりはしないんだね
.
息巻いた口上が
絵の中で笑っている
.
これで最後のエピソード
.
.
選んでいいのに
そればっかり
悪目立ちすればと
飾った気障
今世紀中には終わらない
次の台詞も出てこない
.

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負けた気分で眠りたい

負けた気分で眠りたい

疲れ果てては
辿り着かないベッド
窓の外って
こんなに明るいんだな
知らなかった
.
息を潜めていたら
そのまま眠れないものか
ポケットの鍵が足に刺さって痛い
.
何も要らない
誰も知らない
この町の片隅のひと部屋
最新の家電は居眠り
そうだこの感じ
懐かしいと打ちひしがれながら
負けた気分で眠りたい
.
.
声を隠していたら
そのまま忘れないものか
ジャケットのタグが首に当たって痒い
.
何も要

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あめ

あめ

優しいねって
思いながら
舌の上で転がる
甘さに委ねる
.
なくなるまでの時間
それだけの恋と
.
すき
きらい
すき
並べた上をなぞっては
同じところで泣く
判っていても
それしかきっとできない
.
.
優しいねって
思いながら
舌の上で転がる
甘さに委ねる
.
嬉しいねって
笑いながら
口の中で拡がる
甘さに甘える
.
なくなるまでの時間
それだけの夢と
.
すき
きらい
すき
余った端をつま

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MODE

MODE

風の吹くこの星
君の居ないこの町
何が嫌なのか
泣いているじゃないか
.
星の降るこの夜
君の居ないこの部屋
何のことなのか
知っているじゃないか
.
声に出して言いたい
そうすれば
少しは晴れるかな
.
転んで擦りむいた膝が
まだ痛いわけじゃなくて
「痛かったな」って
何でもないそんな言葉
それを聴いてほしかった
「そうだね」って
何でもないこんな言葉
それを聴いてみたかった
それだけなの
.

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リトルガール

リトルガール

歌えたら幸せ
こんな気持ちなんて
どうにもならない
せめてあの子のように
歌にできたら
.
おとぎ話の始まりは
誰も知らない遠い昔から
.
小さな部屋から
生まれた物語
私にも届いたのは
きっと偶然ではない
やさしい風には
髪を揺らすような
ロマンシチズム
この今も変わらない
.
.
笑えたら幸せ
こんな想いだって
何にもならない
せめてあの子のように
顔に出せたら
.
おとぎ話の広がりは
誰も知

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などと話しているようです

などと話しているようです

とても弱い生き物です
開口一番にそう供述する
.
などと話しているようです
.
星が綺麗だよ
あの夜を思い出す
何の脈絡もなく
誰かの台詞のように
口から零れるのは
涙味
.
.
とても甘い果物です
錯綜する声にそう返答する
.
などと話しているようです
.
月が大きいよ
あの歌を口ずさむ
何のきっかけもなく
いつかのニュースのように
頬へと流れるのは
涙雨
.
嘘が上手だね
あの顔がほくそ笑む

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歌謡な人生

歌謡な人生

語り尽くせない
暮らしの折々
されど流れ流れ
涙は落とさない
歌謡な人生
.
夜に跨っては
乗りこなせない幼さ
いつになるのか判らない
果てしなく続く先
笑っていたいものです
時々滲んでも
笑っていたいものです
.
.
覆い尽くせない
暮らしの隅々
されど破れかぶれ
言葉は残さない
歌謡な人生
.
故意に逆らっては
振り返らない歯痒さ
どこを指すのか判らない
忙しなく動く針
願ってみたいものです

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太字

太字

いつも下書きを
繰り返しては
ただ眺める
美しいだけの文章
.
太字にもならないような
拙い切れ端が
急に輝くなんてこと
.
望んでいるのは
若い僕で
今となっては
消すという
勇気さえ失ってしまった
腑抜けた心から
それでもまだなお
溢れ出す僕
.
.
太字にもならないような
乏しい言い訳が
不意に羽ばたくなんてこと
.
狙っているのは
遠い僕で
淵に立ったら
飛ぶという
勇気さえ失ってしまった

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