マガジンのカバー画像

無口な歌詞

1,587
あの日から、やめられない作詞。 歌い出してくれたら嬉しいのに。
運営しているクリエイター

2020年11月の記事一覧

手

離れてしまう手が
淋しがっているのを
判っていながら
変えられなかった運命を
布団の中で睨みつけている
.
.
花の咲いた中庭に
迷い込んだコーギー
なんだこの夢はと
夢の中で夢に戸惑う
.
結局眠ってしまったんだね
すぐ隣りは冷たいシーツ
震える指が捜している
.
包んでくれた手が
淋しがっているのを
判っていながら
止められなかった一秒を
布団の中で思い出している
.
.
穴の空いたドーナツに

もっとみる
トースト

トースト

雨はとうに止んで
濡れることもなかった傘
人の居ない通り
振り回した勇者の剣
.
飲みたくなったコーヒー牛乳
差し込む光に翳す利き手
絵になる絵を描く
.
絶え間なく
間違える
ひび割れた朝
塗りたくったバター
太陽が焦がして
ああ お腹が空いてくる
ああ 帰りたくなる
.
.
見せたくなったオーバーフェンス
触れ込む兆しに鳴らす汽笛
更なる差を知る
.
絶え間なく
諦める
ひび割れた午後
繰り返

もっとみる
見逃した字幕

見逃した字幕

生まれるはずだった名曲が
聴こえるらしいって
当てもなく歩かされて
.
青空に星を見つけたなんて
言ったところで
誰も知らない話だろう
.
好きって気持ちは
見逃した字幕
もしかすると気のせい
ほんの少しの時差で
届かなかったメッセージ
恥ずかしいほどに
真っ白なラブソング
.
.
変われるはずだった踏ん切りが
つかないらしいって
にべもなく通り過ぎて
.
星空に君を見かけたなんて
言ったところで

もっとみる
リングリングリング

リングリングリング

意外と冷たいんだね
朝のぬいぐるみみたい
触れていた所だけ
同じ温度になる
.
高い電線に留まる
あれはたぶん烏
まだ空を見る
.
きっかけもなく
飛び立っても
変わらない景色の中
何を思ったのか
泣きそうになって
確かめるように回したのは
右手の小指のリング
.
.
意外とうるさいんだね
夜の冷蔵庫みたい
聴いていた世界まで
違うビートに乗る
.
赤い電飾が並ぶ
あれがたぶんリズム
まだ星もある

もっとみる
恋

落ち葉を拾う
もう返せないけれど
見上げた淋しさ
そっと胸に仕舞う
.
夕立ちが夢
去った後に思えば
あれは恋
.
ひらりふわりと
地面を撫でる
落ち着くことは
きっとなく
離れた時から判っていた
止むなく風任せ
.
.
言葉を辿る
もう戻せないけれど
見つけた優しさ
ちょっと頬を伝う
.
溜め息が嘘
吐いた後に思えば
あれも恋
.
のらりくらりと
目線をかわす
合わさることは
きっとなく
逸れた

もっとみる
ともだち100人できてから

ともだち100人できてから

画面がふっと消えた後
ぼやっと映った顔に
それなりの月日を感じて
息が長くこぼれる
.
そのままだと多分泣いてしまうから
好きな動画をもう一つ余分に観る
.
懐かしい歌を歌っていた彼
そう言えばあの歌
ともだちが100人できた後は
どうするんだったっけ
思い出せないくらいなら
ちょっと考えてみようかな
.
.
そもそもそんなにできなかった
だから今居るその人たちを
とても大切にした
.
いや、その

もっとみる
いんちき

いんちき

感情の引っ越しばかり
入れっぱなしのまま
段ボールは開けないで
あっちからそっちへ
移動させるだけ
.
愛おしいものから
失くなってゆくセオリー
.
自分を限りなく消してゆく
透明になるかならないか
そのくらいの薄さで
息を潜めて漂っている
淋しいがそれが私
言わばいんちき
生きづらくはなくて
むしろ楽なの
.
.
公然の失敗ばかり
脱ぎっぱなしのまま
紙おむつは履かないで
どっちでもぼっちで

もっとみる
JUMP OR DIVE

JUMP OR DIVE

信じているものを
信じていればよかった
ただそれだけのことなのに
震えながら怯えている
.
風が吹けば簡単に
飛ばされてしまいそうな
地面に落っこちた羽根
.
背負いすぎた荷物を
置き去りにして
夜逃げ同然で飛び出す
それは勇気と呼べば
光り輝いて見える
とても危ういバランス感覚
飛べないのは
飛ばないから
.
.
雨が降ればぞんざいに
濡らされてしまいそうな
綺麗に飾られた花
.
重ねすぎた気持

もっとみる
雨の銀河鉄道

雨の銀河鉄道

雨の銀河鉄道
乗り継いで
傘の要らない町
捨てるだけの切符
.
星が欲しかった
笑われちゃうよな
平気な顔で言うけれど
.
また夜
まだ夜
.
.
雨の銀河鉄道
乗り継いで
鍵の要らない部屋
回るだけの時計
.
顔が見たかった
笑われちゃうよな
真面目な声で呼ぶけれど
.
いつか来たかった
考えちゃうよな
夜明けの前で知るけれど
.
.
決めた願いはあって
練習だってした
降ってくれるはずだった

もっとみる
日にち薬

日にち薬

今日はプリンを
真ん中から食べた
ぽっかり空いたその穴は
何で満たせばいいの
.
揺れる枝先の葉っぱが
落ち葉になって枯れ葉になる
それが世の常
.
誕生日が来る度に
思い出したように確かめる
今日までの道のりのこと
明日からの行き先のこと
心配はしなくてもいい
そういう風にできている
いつかいつかを
胸に抱えて
.
.
今日は日記を
字でなく絵で書いた
はっきり浮いたその箇所が
急に恥ずかしくな

もっとみる
イマジナリーフレンド

イマジナリーフレンド

坂のある町の一角
らしからぬ散歩の途中で
立ち寄れば蘇る公園
あの日もこんな空だった
.
花の咲く頃の一節
らしからぬ泪の気配に
振り向けば立ち止まるお互い
あの目もこんな遠かった
.
語りかければよかったのか
Do you dare?
.
たった一秒あれば
世界も何も変えられる
だって二人だけのものだから
あれもこれもきっと長い夢
もう一度目を瞑ろう
.
.
忘れられたらよかったのか
Do yo

もっとみる
二人

二人

二人揃って
窓を見遣って
映る姿に
微笑み合って
.
反転した髪の分け目が
似合ってないと
肩を突かれた
.
こう見えているのかな
どう見えているのかな
幸せそうだったら
何だっていいや
部屋の明かりを落として
あと少し近づく
.
.
二人並んで
外を見つめて
走る景色に
寄り添い合って
.
回転して落ちる枯れ葉が
積もってくると
首を傾げた
.
もう見えているのかな
そう見えているのかな
幸せそ

もっとみる
見上げてしまう

見上げてしまう

夜を見すぎると
目がなれてしまうから
星を捜すのは上手くなる
.
誰かが初めて繋いだ星座が
今もそこにあるのに
.
泣きそうなのは僕のせい
伸ばした指先に当たっては
また散らばるやさしい風
綺麗だねって言った
綺麗だねって言った
綺麗だったから
.
.
月が小さいと
気になってしまうから
空を見上げては立ち止まる
.
誰かが初めて浮かべた兎が
今もそこにいるのに
.
泣きそうなのは君もそう
逸らし

もっとみる
素晴らシーン

素晴らシーン

今にも呑み込まれそうな青空が
道の真ん中に落っこちていた
雨合羽の子どもが長靴で
そこに飛び込んでいっちまった
.
アポフェニア
難しい話は苦手
.
.
今にも呑み込まれそうな星空が
道の真ん中に落っこちていた
着飾った大人が革靴で
そこに飛び込んでいっちまった
.
アポフェニア
珍しい話は逆手
.
.
判らないけれども
切り取られた
翌朝の見出しには
並ばない素晴らシーン
そのスマイルは
目撃者

もっとみる