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イギリスのエールを最近好きになった話

先日(とはいえ2月だが)、リアルエールのイベントに参加してきた。東京の某有名店の催し物で、20種類近いリアルエールを飲むことのできる狂ったようなイベントだった。

それまでまともにリアルエールを飲んだことが無かった私だが、そのイベントをきっかけにイギリスのエールが好きになってしまった。
昨今のクラフトビールビールの流行は、間違いなくアメリカンスタイルの流行と言うことができるであろう。
もちろんホッピーなビールが最高であることに対する反論の余地はないのだが、イギリスのエールもわりと美味いんだぞってことで今回はイギリスエールの魅力について書いていきたいと思う。

1. ガス圧が低い

正直これが一番大きな特徴だと思う。
要は、炭酸ガスが効いていないので腹に溜まらず延々と飲んでいられるのだ。ビール好きにはこれはありがたい。
どれくらいのガス圧かというと、グラスの底から小さな気泡が1か所から弱弱しく立ち上る程度、ビールを舌の上で転がしてもほぼ刺激を感じない程度だ。ガス圧が弱いので当然泡立ちも無い。

私の頭の中のイギリス人は、パブでひたすらビールを飲んでいるという印象が強い。なんであんな量をずっと飲んでいられるのかがずっと疑問であったが、このガス圧の低さがそれを可能にしているのかもしれない。スーパードライをパイントで3,4杯飲めと言われたら無理だけど、リアルエールならいける気がする。

クラフトビールに馴染みがない人にとっては、ガス圧の低いビールは出来損ないだと評価されてしまうかもしれない。
しかし私は声を大にして言いたい。それがいいんだと。

2. 酵母由来の香り

イギリスエールの代表的な香りはエステルとモルトだと私は考えている。
そのなかでも特にエステルは私にとっての好物だ。

エステルとは酵母が生成する香りのことで、フルーツに例えて表現されることが多い。
代表的なところでいうとドイツのヴァイツェン特有のバナナ香、ベルギービールの青りんご、オレンジの香りなどが挙げられる。
これらの香りは酵母によって生み出されているのだ。

ではイギリスのエールはどんな香りを出すのかというと、洋ナシやあんず、熟したバナナやマスカットなんかを感じることが多い。
しかし、これらの香りは前述のヴァイツェンやベルギービールほど強くは感じない。あくまでぼんやりと感じられることが多い。

このなんとも言えないふわっとした香りがちょうどよくて好きなのだ。
主張しすぎていないけどちゃんとわかるような。無いようで有るような。この絶妙な存在感が、飲み飽きさせないドリンカビリティを生み出しているのかもしれない。

3. 低アルコール

パブで飲むことのできるビールは様々だが、ビターやマイルドエールなどのビアスタイルはアルコール度数が5%以下に抑えられているものが多い。

このビアスタイルはどちらも税制逃れから生まれたビアスタイルである。19世紀当時のイギリスは、アルコール度数の高さによってビールの税金が決められた。
アルコール度数を低くしたこれらのビールは税金が抑えられ安価で提供できたため、イギリスの産業革命を支えた労働者たちに大変好まれたそうだ。

とまあそんな歴史のあるビールなのだが、なにはともあれアルコール度数が低い。
その分ボディは薄くなるのだがこの「麦ジュース感」が良い感じなのである。若干の残糖分が感じられて単純なうまさがある。発酵やホップによる複雑な味わいというより、モルトの香ばしい風味と糖化した麦の甘味をバランスよく楽しめる。

4. まとめ

つらつらと適当に書き連ねてきたが、何が言いたいかというと
とにかくイギリスのエールは飲みやすいんだということが伝えたかった。

実はあのリアルエールのイベントの参加前日に深酒をしていて、正直もうビール飲みたくないって感じの体調だった。でもチケット買っちゃったから少しだけ行くか、というこことで数杯飲んで出ようと思っていたのだが、結局6杯くらいは飲んでしまった。むしろリアルエールのあのフレッシュな味わいが体を癒してくれたかのような感覚さえあった。それほどまでに飲みやすかったのだろう。

そのため、今の私はイギリスのエール、その中でもとりわけパブで飲むビールに強く惹かれている。
日本にもパブ業態のお店はちらほら見かけるが、それらはだいたい「アイリッシュパブ」である。それじゃないんだ。ギネスじゃないんだ。(もちろんギネスも大好きだが)
アイリッシュドライスタウトではなく、私が勧めたいのはビターやマイルドエールである。度数が低く、少し甘味があってガス圧が低い飲みやすいビール。

アメリカ流のトロピカルフレーバーが爆発した濁ったビールや、樽貯蔵したスタウトなどが人気ではあるが、素朴で飾り気のないパブのエールをみんな飲みださないかなと私は密かに期待している。

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