34.雷天大壮(らいてんたいそう)~過ぎたるは猶及ばざるが如し②

六十四卦の三十四番目、雷天大壮の爻辞です。
卦辞はこちらです。
https://note.com/northmirise/n/n84ca34664e35

34雷天大壮

主爻

主爻は、九四です。盛んに過ぎる時において、陽の剛強と陰の柔順が程よく調和して、行き過ぎることを抑えるのです。

初九

趾(あし)に壮(さかん)なり。征けば凶。孚有り。
象に曰く、趾に壮なりとは、其の孚窮するなり。

動き進むこと、盛んに過ぎる。これ以上進めば凶。誠実なる真心あれども窮するであろう。

大壮の時にあって、陽位の陽爻は行き過ぎる恐れがあり、それが正しい道であったとしても自制すべきであることを教えるのです。応爻も比爻もなく孤立無援であり、行き過ぎれば窮するのです。

九二

貞にして吉。
象に曰く、九二の貞にして吉なるは、中なるを以てなり。

中徳をもって正しい道を守り通せば吉。

陰位にある陽爻、大壮の時にあって剛柔程よく調和し、かつ中徳をもって進みすぎず止まり過ぎず、正しい道を正しい行動をもって守るので吉です。

九三

小人は壮を用ふ。君子は罔(もう)を用ふ。貞なれども厲(あやう)し。羝羊(ていよう)、藩(まがき)に触れ、其の角(つの)を羸(くるし)む。
象に曰く、小人は壮を用ふ。君子は罔(な)きなり。

小人はむやみに猛進する。君子はそのようにしない。正しい道であったとしても猛進は危い。牡羊の角が垣根に引っかかって抜け出せずに苦しむようなものである。

大壮の時にあって、陽位に陽爻、しかも危い三爻にあります。猛進は厳に慎むべきです。羊は弱い生き物ですが、好んで角をもって突進する癖があります。互卦の外卦は兌、羊の象です。大壮の卦は兌卦の似象でもあります。また震卦は竹の象であり、垣根を表します。

九四

貞にして吉、悔亡ぶ。藩(まがき)決して羸(くるし)まず。大輿(たいよ)の輹(とこしばり)に壮(さかん)なり。
象に曰く、藩決して羸まずとは、往くを尚ぶなり。

正しい道を守り通せば吉にして後悔することはない。牡羊が垣根に角を引っかけて苦しむようなことはないであろう。車の車輪がしっかりと廻って盛んに進むことができよう。

陰位に陽爻、剛柔のバランスが取れております。九三の牡羊は猛進に過ぎて角を垣根にからませて苦しんでおりましたが、九四は柔和さを兼ね備えておりますので、程よい勢いで車を前進させて、僅かに残る陰の勢力を征伐しようとするのです。

六五

羊を易(さかい)に喪(うしな)ふ。悔无し。
象に曰く、羊を易に喪ふとは、位当らざればなり。

牡羊を田畑のあぜ道に見失う。後悔するようなことはなかろう。

羊は外柔内剛なる兌卦の象、大壮の卦は兌卦の似象であり、羊はこの卦を象徴する存在です。九三にて手こずった牡羊は、九四にて手懐けられて、六五にて遂に姿を消しました。六五の天子は陽位にあって陰爻、ここに至って大壮の盛んに過ぎる勢いは中和されて、丁度良い塩梅になるのです。

上六

羝羊、藩に触れ、退く能はず、遂(と)ぐる能はず。利しき攸无し。艱(なや)めば即ち吉。
象に曰く、退く能はず、遂ぐる能はずとは、詳(つまびら)かならざるなり。艱めば即ち吉とは、咎、長からざるなり。

牡羊が垣根に角を引っかけて、退くこともできず、進むこともできない。よろしいところは全くない。悩み苦しめば吉へと転じよう。

大壮の窮まりにして、性懲りもなく牡羊が再び暴れ回っております。しかし六五の段階で大壮の問題は解決されておりますので、これは小人の無謀な悪あがきに過ぎません。

まとめ

沢風大過の卦と同じく、不正の爻が剛柔程よく、正位の爻が行き過ぎて失敗する傾向にあります。

陽の正位は初九と九三、いずれも猪突猛進に過ぎております。陰の正位は上六、身の程をわきまえずして足掻きます。

陽の不正は九二と九四、いずれも剛強さと柔順さが程よく調和しており、適切な行動をとります。陰の不正は六五、盛んに過ぎる勢いはここでようやく落ち着くのです。

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