2023年阪神JF②(伝説の新馬戦)

以前から競馬メディアやファンの中では「伝説の新馬戦」という言葉が使われて(いささか安売り感もあります)、盛り上がることがあります。

私の中で「伝説の新馬戦」と言えば、古くて申し訳ないのですが、後にも先にも2008年10月26日(菊花賞当日)、京都競馬場芝1800の新馬戦です。

このレースは、1着アンライバルド(皐月賞1着)、2着リーチザクラウン(ダービー2着)、3着ブエナビスタ(G16勝)、4着スリーロールス(菊花賞1着)という驚異的な内容でした。

このように、のちのG1ホースが複数出走していた、振り返ってみたときにメンバーレベルの高かった新馬戦をいつの間にか「伝説の新馬戦」と称するようになったわけですが、今年も何やら「伝説の新馬戦」という言葉を見聞きしています。

今回の阪神JFに出走を予定していて、1番人気になるであろう「ボンドガール」が出走した、2023年6月4日の東京6レース、芝の1600メートル戦を、一部の競馬メディアやファンが「伝説の新馬戦」と言っているようです。

このレースは、1着ボンドガール(次走サウジアラビアロイヤルC2着)、2着チェルヴェニア(次々走アルテミスS1着)、3着コラソンビート(その後4走目の京王杯2歳S1着)で、さらにボンドガールの次走サウジアラビアロイヤルCで3着だったシュトラウスが次走の東京スポーツ杯2歳Sを勝っていることから、レベルの高い新馬戦だったと評価されています。

それでは、当該レースの内容はどうだったでしょうか。

所詮、新馬戦と言えばそうなのですが、このレースはテンの3ハロンが37.1秒で、前半1000メートルまで12秒を切るラップが一度もなく、上り3ハロンが33.3秒という極端なスロー・後傾ラップとなり、稍重馬場のせいもあるとは思いますが、前目に行った馬がそのままラストも33秒台前半の脚を使って上位入線したレースでした。

勝ったボンドガールの次走サウジアラビアロイヤルCについても、同様にスローで前残りの流れを後方から一気に差した勝ち馬(ゴンバデカーブース)は強かったと思いますが、ボンドガールを含む2〜4着馬は展開面で恵まれたように見えました。

くだんの新馬戦に戻って、2着のチェルヴェニアの次々走アルテミスS(1着)についても、35.9ー33.6の後傾ラップでテンの2ハロン目こそ11.4と少し早くなっていますが、そこ以外は1000メートル地点まで12秒台を連発するスローの流れで、新馬戦と同様、前に行った馬がラストもそこそこのラップでまとめた印象です。

要するに、くだんの新馬戦を「伝説」と言うのは時期尚早と言うのが、私の見解です。

これも、あくまでも私の見立てですが、当該新馬戦でいちばん強かったのは、前残り気味の流れを中団から差してきたコラソンビートだと思います。

コラソンビートに関しては、2走めの未勝利戦(東京芝1600)で一転して、34.7ー35.9という前傾ラップを3馬身差で逃げ切り勝ち、3走めのダリア賞(新潟芝1400)では34.7ー34.7というフラットなラップながら、テンの1ハロン目以外は全て11秒台で緩まずに流れる中を中団から上り最速(34.0)で差し切り勝ち、次の京王杯2歳Sもダリア賞と同様に11秒台が続く緩みのない流れを中団追走から差し切り勝ちしています。しかも新馬戦以降は全て牡馬相手でしたので、価値があります。

ちなみに、本番の阪神JFは過去10年のうち8回が前傾ラップで、前に行った馬が苦しくなるレースですので、前述のようなコラソンビートの経験がそこで活きてくるように思います。

おそらくボンドガールよりも人気は落ちると思いますが、ボンドガールは前述のとおり厳しい流れを経験しておらず、また折り合い面にも難がありそうですので、個人的には「コラソンビート」の方を強く推したいと思います。

最後に、ちょっと「伝説の新馬戦」からは話が逸れてしまいますが、レースの流れ(ペース、ラップ)という視点でみると、前走京都芝1400のファンタジーSから臨む「カルチャーデイ」が侮れないような気がします。

ファンタジーSは34.1ー35.2という前傾ラップでラストの1ハロンが12.1に落ちた以外は全て11秒台(テンの2ハロン目は10.8)というハイペースだったのですが、同馬はそういう緩みのない流れを4番手で進み、直線で前を捉えてゴールまで後続の追撃を凌ぎきるという、なかなか強い勝ち方をしました。京都芝1400で行われたときのファンタジーSは概ねスロー・後傾ラップになることが多いのですが、2019年に33.7ー35.1の前傾ラップ・ハイペースになったとき、道中2番手から抜け出して勝った「レステンシア」は本番の阪神JFも勝っています。「カルチャーデイ」は血統も少し地味ですし、おそらく人気にならないと思いますが、軽視禁物だと思います。

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