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【PIT】Oneil CruzがCFコンバートへ

現地8月26日の試合前、Pittsburgh Pirates(PIT)の監督であるDerek Sheltonが「Oneil CruzをSSからCFへコンバートするつもりだ」と発言しました。

現地記者との質疑応答を見るに「選択肢を増やすためのチャレンジ」ではなく、「今後SSを守る想定はしていない本格的なOFコンバート」の様です。

今回はこの件について色々と思うところを書いていこうと思います。本文中の成績は全て現地8月26日の試合(CHC3連戦の初戦)終了時点でのものです。


▶ Oneil Cruzの今季成績

[G] 117
[AVG] .265
[HR] 18
[RBI] 63
[SB] 17

[OBP] .324
[SLG] .468
[wRC+] 115

[DRS] -8
[UZR] -3.4
[OAA] -3

[rWAR] +2.5
[fWAR] +3.1

今季はここまで大きな故障もなく、出場試合数は初めて100試合を突破。打撃に関してはwRC+も平均を超えていますし、このペースでいけば「20-20」も達成出来そう。

元々の期待値が非常に高いのでこれでもまだ物足りなくは感じますが、SSとしては充分合格点を与えて良い水準でしょう。これで文句を言っていては怒られてしまいます(誰に?)

守備に関してはマイナスが並んでおり、確かにもう少し頑張って欲しい数字ではないですが…それでもその分は打撃で取り返しておりWARは3.0前後稼いでいるので問題無いと思うんですよね。

そもそも今季が初のフルシーズンで、87試合に出場した22年と比較しても打撃では120打席以上多く立ち・守備でも250.0回以上多く守っています。間違いなく疲れはありますし。


▶ ポジション別チーム成績

[ C ] rWAR -0.4 (21)┃fWAR +1.7 (18)
[1B] rWAR -1.4 (18)┃fWAR -0.3 (24)
[2B] rWAR -0.8 (23)┃fWAR +0.8 (22)
[3B] rWAR -0.6 (22)┃fWAR ±0.0 (26)
[SS] rWAR +0.7 (19)┃fWAR +2.6 (16)
[LF] rWAR -0.1 (14)┃fWAR -0.4 (25)
[CF] rWAR -1.2 (25)┃fWAR +0.4 (29)
[RF] rWAR -2.7 (30)┃fWAR -1.6 (29)
[DH] rWAR -0.3 (15)┃fWAR +1.3 (11)

ポジション別のチームWARを見ると、今季の(も)PIT野手陣は全般的に厳しいです。主にAndrew McCutchenが座ったDHがせいぜい検討しているくらいですね。その中でも壊滅的なのがCFとRFです。

しかも、CFは守備力だけでrWAR +1.1/fWAR +0.6を稼いでいたベテランのMichael A. Taylorを先日ウェーバーにかけていますからね。現時点で引き取り手は現れていませんが、どちらにせよ今オフFAなのでリーグ最底辺と言っても過言ではありません。

ひとまずその片方を埋めようとするムーヴ自体は理解出来ます。ただ、SSからrWAR +2.5/fWAR +3.1のCruzが抜けたらどうなるか誰でも分かりますよね?穴を塞ぐために新たな穴を空けるようなものです。


▶ CruzのいないSS候補

[ Alika Williams ] G 12┃GS 8┃Inn 74.1
[ Jared Triolo ] G 9┃GS 8┃Inn 66.0
[ Isiah Kiner-Falefa ] G 7┃GS 6┃Inn 52.0
[ Nick Gonzales ] G 3┃GS 2┃Inn 19.0

※今季PITでSSとして出場した選手

幸いな事に…というか彼がいるからこそ今このタイミングで動いたんでしょうが、今年のTDLで獲得したIsiah Kiner-Falefa(IKF)はSSを安心して任せられます。21年にTEXで1360.0回就いてDRS +10・翌22年もNYYで1185.0回就いてDRS +10を記録した実績があり、実際にプレーを見ても非常に滑らか。

ただ、本来であればSSレギュラーではなく2B/3BもケアするUTとして起用したいプレーヤーです。今季のrWAR +3.4/fWAR +2.1はお見事ですが、来季も同じ水準を期待して良いかといえば微妙でしょう。そもそも彼の契約は25年オフまでですし。

IKF以外で今季MLBでSSを守ったのはNick GonzalesAlika WilliamsJared Trioloの3人だけ。Gonzalesは2Bのレギュラー最有力ですし、WilliamsとTrioloはUTが天井かなというところ。

3A級にいる元TOP100プロスペクトのLiover Pegueroは前述の3人よりもSSとしてやれる可能性は感じますが、今季ほぼMLBに呼ばれないのを見るにチーム内での評価はあまり高くなさそう。


▶ 選手としての価値

まぁ、なんやかんや書いてきましたけどね。一番大きい部分は「Oneil Cruzというプレーヤーの価値を下げてくれるな」という事ですよ。バリバリの感情論です。

彼を知らない人に説明する時に大半の人が「このスケール感でSSを守っているんだよ!」と言うでしょう。OFでも6'7"/215lbs(201cm/97kg)というサイズはそう多くありませんが、とはいえNYYのAaron JudgeやWSHのJames Woodなどチラホラいます。

確かにSSよりもOFの方が彼の身体能力を発揮出来るのかもしれません。故障リスクは減るでしょうし、打撃に専念する事でリーグ有数の左打者になれる可能性もあるとは思います。

しかし、「そこにロマンはあるのか」とぼくは問いたい訳ですよ。いまやMLB最高級のRFであるSDのFernando Tatis Jr.はもちろん素晴らしいプレーヤーですが、個人的にはSSを守っていた頃の方が好みです。

CruzのSS守備がどうにもならない壊滅的なレベルならともかく"下手"の範疇です。全体としてはまだまだ粗いですが、まだ25歳と若いので我慢して良かったでしょう。


▶ まとめ

ここまでの文章を読んでいただければ言わずとも伝わると思いますが、個人的にこのコンバートには【否定的】ですね。普段は出来るだけポジティブな受け取り方をしようとしているんですけど。

正直なところ、どういう目論見でコンバートに踏み切ったのか現時点では見えてきません。CFのポジションが埋まるメリットよりも、SSのポジションが空くデメリットの方が大きく感じるので。

傘下に期待のトッププロスペクトがいる訳でも無ければ、今オフのFA市場が特にSSが豊作という訳でも無いです。「本当にアテはあるのか?」と思わずにはいられません。

でもまぁ、結局のところファンに出来る事といえば待つ事しかありませんからね。トレードの弾はまだそれなりに保有していますし、驚くようなトレードが成立するかもしれません。論ずるのはそれを待ってからでも遅くはないでしょう。


【参考文献】

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