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【PIT】飛躍する長髪左腕

お久振りです、前回の更新から1週間以上経ってしまいました。

今季のPittsburgh Pirates(PIT)で最大のサプライズといえば、おそらくDillon Petersの活躍ではないでしょうか?

G 10┃IP 19.2┃ER 4┃H 5┃K 15┃BB 9┃HR 0

5月8日にアウトが取れず3四球を与え(引き継いだ次の投手が)満塁弾を浴びた事で数字は悪化しましたが、それでもWHIP 0.71と走者はほとんど許していません。

開幕から時にはロングリリーフ、時には接戦でのショートリリーフ、またある時にはオープナー(ショートスターター)としてフル回転中ですよ。

彼の活躍を開幕前に予想出来た超有能アカウントなんて…えっ?なんでしょう?このツイートは!?

…はい、白々しいのはこの辺にしておきまして。

彼は17-18年にMIAで計13登板、19-20年はLAAで計18登板した左腕。21年はMLBで登板機会がなく7月にLAAをDFAされ、金銭トレードでPITに加入しています。

[-2020] G 31┃IP 132.2┃ERA 5.83┃FIP 5.85
[ 2021] G   6┃IP    26.2┃ERA 3.71┃FIP 3.66
[ 2022] G 10┃IP    19.2┃ERA 1.83┃FIP 2.97

※上段は4シーズン合計

PITに加入した21年、そして今季と分かりやすく内容(FIP)が良化しており、それに伴って結果(ERA)も付いてきています。

おそらく多くの方が「サンプル数少ないだろ」と思うでしょうが、これは単純に運が良かっただけではないというのが今回のテーマです。



Petersは移籍前年の20年に1.2回しか投げていないので、比較するのは(LAA所属の)19年シーズン。17登板も72.0回も現時点ではキャリアベストですね。

まずは投球割合を見てみましょう。

[FA%] 45.4 → 25.9
[SI%] 5.0 → 26.6
[SL%] 3.9 → 8.6
[CB%] 24.7 → 12.6
[CH%] 21.0 → 26.3

2019→2022年の投球割合(Baseball Savant)

19年からファストボールの割合はほぼ変わっていないものの、フォーシーム(FA)とシンカー(SI)がほぼ半々になっています。

ひと昔前のPITはシンカーとカーブを軸に投手を魔改造してきましたが、スピン量が多く以前は多投していたカーブの割合は逆に10%以上減っています。

代わって軸になったのがチェンジアップ。彼を獲得して3A級へ送られた際に取り組んだのがこの球種の割合を増やす事だったそうです。

もう1つ増えているのがスライダーですが、実は21年に一度投げるのを止めているんですよね。22年から再び投げ始めたボール。

このスライダーは現在新たなトレンドになりつつある球速は遅めで縦変化が小さく横変化の大きい“スウィーパー”に分類されるそうです。

要は「真横に大きく曲がるスライダー」ですね、以前から“ブーメランスライダー”と言われているものに近いでしょうか。

19年は投球の70.1%を占めていたフォーシームとカーブは今季は48.0%まで低下、現在は5球種を満遍なく使っており以前とは別人の様です。

また、ペース配分をする必要が無くなった事でこれまで91.0mph前後だったフォーシームの平均球速が92.7mphまで上がった事も大きいでしょう。


特筆すべきはここまで70人の打者と対戦してヒットを5本しか許していない上に、それが全てシングルヒットだという事です。

AVG .082/BABIP .109という数字がこのまま続く訳はありませんが、statcastのデータを見てもxBA .222はMLB上位25%に、xSLG .328は13%に入る数字。

特に前述した移籍後に割合を増やした2球種…チェンジアップがxBA .088、スライダーがxBA .038と素晴らしい威力を発揮していますね。

更に詳しくデータを見てみるとChase%とExit Velocityが非常に優れている一方で、Chase Contact%は平均よりも劣っています。

つまり、ここまでは「打者に的を絞らせず、ボール球に手を出させて打ち損じさせる」事が出来ているという事でしょう。

特徴的な投球フォームだったり、誰が見ても凄いボールを投げ込んでいたり、奪三振を量産している訳ではありませんが、今のPetersは地味ながら非常に興味深い投球を続けています。

もし貴方が彼の事を知らなかったのであれば、これを機に名前だけでも憶えて戴ければ幸いです。

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