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アマゾンのヘルスケア進出は成功するか

テレヘルスという新分野

コロナ禍で苦しむ産業界の中で、勝ち組の代表がアマゾンです。

巣ごもり需要が爆発したわけですが、昨日この連載で報じたように、先月はアメリカのネット通販は落ちてきて、ワクチン接種が進む中、人々はよりin-person(対面)のサービスに移行するだろうと言われています。

しかし、さすがそこはアマゾン、コロナ禍でもいい気にならず、次の一手を考えていました。それがヘルスケア事業への参入です。

それもアマゾンですからオンラインでの展開です。このサービスはテレヘルス(telehealth)と呼ばれ、アマゾンは別会社Amazon Careを設立しこの業態に本格参入する予定です。

過去になかった新サービス

具体的には利用者がチャットボットと呼ばれるAIでの受付を済ませると、ヘルスケアのプロフェッショナルとの面談を行い、アドバイスを受ける仕組みです。必要があれば、ドクターが60分以内に訪問し、採血、ワクチン接種などのサービスが受けられます。

処方箋も患者の住所に2時間以内に送られます。アマゾンは2019年からこのAmazon Careのサービスを従業員に実施し好評を得ており、今年の夏には全米のすべての州で一部サービスを、ワシントンDCではフルバージョンのサービスを実施する予定です。

アマゾンは昨年11月にすでにオンラインの医薬関連機器の配達サービスを始めています。喘息用の吸入器、ジェネリックブランドの医薬品などです。

今回アマゾンは満を持してテレヘルス業界に参入するわけですが、成功するかはまだ未知数です。あるテレヘルス業界のエクゼクティブは、アマゾンは自社のサービスを使っているテレヘルスのベンチャーを、次々買収するかも知れない可能性を指摘しています。

アマゾンの支払うコスト

オンラインとは言え、アマゾンがこれから本格参入しようとするヘルスケア業界は規制が厳しく、また地域的要素が複雑です。

地域により法律や規制が複雑に入り組んでいるのです。テレヘルス戦略の担当者、 パビス氏(Babak Parviz)は「我々が知らないことがたくさんある、これは認めなくてはならない。謙虚の精神を持ってやる、でもチャンスは逃さないという精神も忘れない」と語っています。

ヒューマンが足りないアマゾンは失敗する

ポストパンデミックについては、世界中のリーダーが真剣に考えているでしょう。皆さんもそうです。

アマゾンのポストパンデミック観は2つ。一つはリモートワークが増えるという見方、もう一つはヘルスケアが成長分野で、企業に便利で低コストのリモートケアというサービスを提供できれば近未来のアマゾンは盤石、という考えです。
 
僕は懸念があるんです。それはアマゾンは一部でブラック企業との風評があることです。従業員を実に簡単に切り捨てる。AIに仕事ぶりを監視させ、働きが悪いとAIにピンクスリップ(解雇通知)を送りつけさせる、という塩梅なんです。

そんな人に優しくない企業がヘルスケアという人の命を預かるようなことができるか、という疑問です。

アナログサービスこそポストコロナの目玉

もう一つは、リモート需要ですが、それはそのとおりだと思うのですが、今回のパンデミックで日本の独特な事情が明らかになりました。

それは高齢者をはじめ国民の一部にリモートワークへの拒否的な反応、IT使用に対しての苦手意識があることです。

ワクチン接種申し込みをネットでできない、やりたくない方々がこれだけいるのだ、という現実があるのです。

日本はむしろ、反リモート、非ITのサービスを強化すべきではないでしょうか。DX云々の時代などと言われています。しかし、まだFAXのほうが便利な場合もあるし、何よりもデジタルを使いこなせない人々を取り残さないことも、パンデミック後の企業の社会的責任ではないでしょうか。

今日も最後までお読み頂きありがとうございました。

また明日お目にかかりましょう。

                              野呂一郎

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