童心を忘れるの意

 のり子は喫茶店をつくることに決めました。けれどそれはいわゆる喫茶店ではありません。街中で捨てられた空き缶やペットボトル、見つけたら撮影することにしているのですが、筆者の写真フォルダに溜まったそれらが商品で、つまりこの文章が喫茶店のようなものです。
 撮る写真にもルールがあり、それは以下の三つです。
・自分で買った物はなし。
・持ち主が既にいなくなっている。
・倒れている商品はなし。ちゃんと立っている物のみ。
 撮る前も撮った後も、そのものに触れるのもなしにしています。というか、触りたくないです。
 今までに撮った写真がそれなりに溜まっていますでの、古いのから順番に上げています。

画像1

画像2

画像3

いつ撮ったのか、全く記憶にない。
川端通りでしょう、たぶん。

全く関係のない話になりますが、先日知り合いの家に小学一年生(7歳)の女の子がいまして、そのことずっと遊んでいたのですが、それがまことに謎でした。

トランプで遊ぶのです。
『スピード』と呼びましたが、いわゆる「スピード」とは全然違うゲームです。と言うより、この呼び方になったのには、対して面白くないいきさつがあるので、余裕があれば後で書きます。

ともかく、ルールを説明しましょう。

トランプの束を赤と黒に分ける

お互いに持って、「いっせーのーで」の掛け声とともに、自分の札のカードを一枚、おでこのところへ持ってくる。

そうすると相手のカードがこちらには見えますので、「3」「12」のようにそのカードの数字を二人同時に言います。

そしてカードは床へおく。

これを手札がなくなるまで続けるのですが、出たカードが床にあるカードと揃ったら「リード」と言い、ペアを組んで、その二枚一組を左へ移動させます。(一度「リード」した数字と同じのが新しく出ると、「リード」して二枚重ねたところの上に置きます)

わかりますか?

僕にはわかりません。

ともかくこれをたぶん二時間近く(それ以上?)やっててずっと言いたかったことは、半分過ぎたあとは、ずっと「リード」の上においていく作業じゃん。です。カードは五十四枚ありますが、数十は十三しかないので。

いや、それ以前に、これはゲームとして成り立っていません。

白熱する部分もなければ、勝ち負けもなく、駆け引きもなく、単なる作業です。
それに大したルールもありません。と言うのも、やってる側から小さなルール変更が運営(7歳)が行ってきますから。
なので、僕としてはどうにかゲーム性を作ろうと、勝ち負けを提案したり、リードにしても「自分のカードでリードできたら自分の点数」と言うような対立構造を作ってみようとしましたが、ことごとく跳ね除けられ、結局元のルールへ戻されるのです。

僕は少しでも楽しませようと、カードを出すとき、とても高くあげたり、間違えて二枚あげたり、その二枚で目を隠したりと、さまざまなボケをしてみせましたが(全部笑ってくれました)、そんなことをしなくても、楽しそうなのです。

それでようやく気づきました。

このゲームは面白くない。

けれど、楽しいんだ。 と。

その7歳の女の子はその単なる作業とも言える遊びを楽しんでいました。本当に楽しくて仕方がないみたいで、二日目も「スピードしよー」としきりに言ってくれるのです。

「子どもにゲーム性や理屈や辻褄なんて、全く関係ないんだな」
「その瞬間が楽しいことが一番なんだな」
つくづくそう思わされました。
そう、その瞬間、それ自体が楽しいのです。輝いてるなと、みてて思いました。ルールがいくらつまらなくても、「一緒に遊んでる」という行為が楽しくて、幸せなのでしょう。

そして、それこそが童心だと気づいたのです。

僕らは大人になるにつれ、さまざまな概念が贅肉のように頭にぶくぶくついて、しかもそれは現実の贅肉と違って、ダイエットだ何だと痩せることはできません。一度ついたらつきっぱなし。なにをするにつけても、
「これでどれくらい評価されるかな?」
「どのくらいお金が入るかな?」
「女の子にモテるかな?」
「十五年後にも役に立つかな?」
なんて、くだらないことを考えています。

童心を持ったまま大人になる。と言う表現は、「大人になってもガンダムが好き」なんて話でなくて、「その瞬間をそれ自体で楽しめる」と言う能力だと思います。

けれど、誰しも、大人になるにつれ、そんなことは忘れてしまう。
明日のことを考えないといけない。
周りの人間の目も気になる。

それは当然、しょうがないものとも思います。と言うより、それが成長で、悪いものではありません。童心……など失うものです。忘れてしまうもの。けれども、それがあったことを忘れてはいけないと、のり子はこの前しみじみと感じていたのでした。
終わらないトランプゲームに、必死の笑顔を浮かべながら。


このゲームの名前が「スピード」になったいきさつはやっぱりつまらないので書きません。

では。

読書と執筆のカテにさせていただきます。 さすれば、noteで一番面白い記事を書きましょう。