B43-2021-24 細雪(上) 谷崎潤一郎

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四姉妹、鶴子、幸子、雪子、妙子。
雪子の見合い話をめぐる物語である。
この小説を読んでいて異様だと思うのは、登場する人物の女性の多さである。
上の四姉妹に加えて、幸子の幼い娘である悦子もいる。悦子の出番はいちばん上の姉、鶴子よりも多いくらいである。
もちろん小説には男性も登場するがその声は四姉妹と悦子の声の影に潜んでいるようだ。
だが、その中でも幸子の夫、貞之助の存在感は貴重である。「いい仕事」をしている。
雪子が一時期東京に移り住むことになった際、彼女を元気づけるために寄せ書きをしようと云ったのも貞之助であれば、その時にめいめいが書いた歌を添削したのも貞之助である。この功績は大きいように思う。存在感がある。さりげなく、ささいなことだけれどもこの物語(上巻)の中ではきらりと光るものがあった。

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