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IKEA、グッチ、アディダスらが「きのこ」に注目。プラスチックに置き換わる意外なポテンシャル【ポッドキャスト番組『グローバル・インサイト』文字起こし】

海外のトレンド、若者の間で生まれる新しい価値観を、各国で暮らす編集者・ライターがお届けするポッドキャスト番組『グローバル・インサイト。この番組ではリスナーからの反響が大きかった人気エピソードの文字起こしをnoteで配信しています。

今回はIKEA、グッチ、アディダスらが「きのこ」に注目。プラスチックに置き換わる意外なポテンシャルの回を文字起こししました。

プラスチック代替素材として、その優れた耐久性や機能性から「きのこ」が注目を集めています。特に関心を寄せているのが、ブランド企業、パッケージ産業、ファッション産業など。IKEAグッチの親会社アディダスといった世界的な大手企業が導入に向けた動きを見せています。きのこの意外なポテンシャルをお伝えします(出演:岡徳之 / 写真:Dylan Leagh on Unsplash)。

深刻化するプラスチックごみ問題

「プラスチックごみ問題」、この番組でも数多く取り上げてきましたが、実際、どれほど深刻なのでしょうか。

2016年にエレン・マッカーサー財団がまとめたレポートによると、その時点でのプラスチック・パッケージの年間生産量は7800万トン

このうちリサイクル用に収集されているのは14%で、最終的に「クローズドループ・リサイクル」されるのは2%のみ。

残りはどこに行くのかというと、14%は焼却処分され40%が埋め立て処分。そして、残りの32%は河川などに流出し、海に流れ出ていると言われています。

救世主は「きのこ」? 意外なポテンシャル

このように、喫緊の課題であるプラスチックごみ問題ですが、その解決には、大きく3つのアプローチが必要となります。

1つ目は、プラスチックごみの収集・リサイクルの徹底化。2つ目は、プラスチック消費量の削減。そして3つ目が、プラスチックに代わる素材の開発です。

このうちの3つ目、プラスチックの代替素材として、今、パッケージ産業、ファッション産業などで関心を集めているのが、なんと「きのこ」を由来とする素材なんです。

最新のバイオテックでは、きのこの本体である「菌糸体」を使い、パッケージ人工皮革アパレル素材建材を生成することが可能。

プラスチックの代替素材は、他にもさまざまあるのですが、中でも、きのこは、耐久性機能性に優れていると言われています。

すでにそのテクノロジーを活用したいくつかのスタートアップが、きのこ由来の素材を大手企業に提供し始めています。

注目の「きのこスタートアップ」

例えば、ニューヨークを拠点とするEcovative。同社が開発するきのこ素材ブランドのMycoFlexは、その耐久性と柔軟性から人工皮革のプロダクトスキンケア用スポンジなどに活用されています。

同社はこのほか、家で100%堆肥化できるきのこパッケージ素材MycoCompositeも開発。これまで、IKEADellなど大手企業とパートナーシップを組んできました。

スタートアップの動きとしてはこのほか、カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得した、化学、生物学の専門家らが立ち上げたBolt Threads

きのこ由来のアパレル素材を開発し、現在、人工皮革素材「Myloに加え、きのこ由来の人工繊維「MicroSilk、美容液などに活用できるきのこ由来のたんぱく質素材「B-Silkを提供しています。

さらにこのほど、アパレル業界の大手プレーヤーとコンソーシアムを形成。コンソーシアムに参加したのは、アディダスグッチなどの親会社であるKeringStella McCartneyLululemonの4つのアパレルブランド企業。

アパレル業界においては、動物福祉環境汚染の観点から「天然皮革」「人工皮革」ともに批判されることが増えており、アパレルブランドにとって、きのこ由来の人工皮革は、そのネガティブなイメージを払拭するうえで、重要な役割を果たすことになるかもしれません。

きのこ素材の開発に携わる企業は、この2社だけではありません。きのこ由来の人工皮を開発するMycoWorks、きのこを使ったサステナブルな建材を開発するRedhouse Architectureなど、さまざま。

その可能性はどこまで広がっていくのか、今後、きのこの動向は要注目です。

編集者/Livit代表 岡徳之
2009年慶應義塾大学経済学部を卒業後、PR会社に入社。2011年に独立し、ライターとしてのキャリアを歩み始める。その後、記事執筆の分野をビジネス、テクノロジー、マーケティングへと広げ、企業のオウンドメディア運営にも従事。2013年シンガポールに進出。事業拡大にともない、専属ライターの採用、海外在住ライターのネットワーキングを開始。2015年オランダに進出。現在はアムステルダムを拠点に活動。これまで「東洋経済オンライン」や「NewsPicks」など有力メディア約30媒体で連載を担当。共著に『ミレニアル・Z世代の「新」価値観』『フューチャーリテール ~欧米の最新事例から紐解く、未来の小売体験~』。ポッドキャスト『グローバル・インサイト』『海外移住家族の夫婦会議』。


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