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集中を高めるSpotifyプレイリスト「Mix to focus」公開。カギは緊張と緩和のギャップ

Spotifyを使って初めてプレイリストを自作した。このプレイリストで、一人でも多くの人と集中を高めるティップスや「Lo-fi」という音楽ジャンルの魅力をシェアできたら――。

大事なのは勤務時間より「集中時間」

編集者の仕事というものはつくづく、高く、そして持続する集中力を求められる仕事だなと思う。

原稿の細かな誤字脱字に気づくのはもちろんのこと、どこか一つの文章に手を入れただけでも、それが文章全体あるいは読む人の感情の変化を妨げてしまわないか、前後の文だけでなく、最初の一文から最後の一文に至るまで、目を凝らし、注意を払い続けなければならない。

もちろん、高い集中力が求められる仕事というのは、編集者の仕事だけではない。経費のレシートをファイリングしたり、見もしない迷惑メールをゴミ箱にぶち込んだり、そういった雑務を除いては、多かれ少なかれ必ず集中力が求められるだろう、どんな職種であっても。

人の知的体力というものには限界がある。僕なんかは朝から4、5時間も働いて、インタビューや原稿の編集、コンテンツの企画をこなせばもうくたくた。お昼すぎにもなればもうこれ以上の重たいタスクには手をつける気にもならない、という感じになってしまう。だから、毎朝仕事が始まったら1分でも早く、高い集中状態に入りたいと思う。

人の集中をかたち作る「二つの要素」

では、どうすれば人は集中状態に入れるのだろうか。肩の力を抜いてリラックスすれば、集中できる? どうやらそうではないらしい。

以前、ある方のインタビューで知ったのだが、「集中」というものは次の二つの要素でかたち作られるそう。それは「緊張と緩和」だ。ストレスとリラックスと言ってもいい。詳しい解説(や異論?)は脳神経科学の専門家にまかせるとして、緊張と緩和、この二つのギャップが大きければ大きいほど、質の高い集中に入れるそうだ。なんとなく、緊張やストレスは人の集中を妨げるもののように思っていたから、とても興味深い。

人が集中を高めるためには、「緊張」が必要――。これが、今回僕がSpotifyのプレイリストを作ろうと思ったいちばんの理由だ。一時期、人を癒すヒーリングソングが流行ったように、緩和やリラックスを促す音源というものは世の中にあふれていると思う。一方で、緊張はどうだろう? わざわざ自分にストレスを与えるためのプレイリスト(苦笑)なんてあまり聞いたことがない。だからこそ、おもしろいと思った。

集中にふさわしい音楽ジャンル「Lo-fi」

当時は特に緊張を求めて楽曲を探していたわけではなかったのだが、あるとき、Spotifyの曲をランダムに流していて、いい意味で違和感を覚える曲のジャンルに出会った。それが「Lo-fi」だ。

Lo-fiとは、Wikipediaによると録音技巧の一つ。高音質なもの「ではない」録音環境を志向する価値観あるいはそれを備えて作られた音楽自体を指す言葉。対義語は「Hi-fi」。極端に高音質なHi-fiジャンルの商業的な側面への反発を土台とするらしいが、そんな “低音質” な音楽が、ポピュラーな音楽を好む人たちにもキャッチーに捉えられ、人気を博しているというのもまたおもしろい現象だ。

今回のプレイリスト「Mix to focus」は、このLo-fiにカテゴライズされる25曲を収録した。聴いていただければ分かると思うが、聴く人をあえて少し不安にさせるかもしれない曲が集まっている(苦笑)。“低音質” なLo-fiならではのノイズ感がそうさせている。しかし、このプレイリストの本来の目的が、聴く人に適度な緊張やストレスを与えることなのだから仕方ない。

もちろん、聴く人を不快にさせるような曲は含んでいない。イメージでいうと、禅寺の本堂に向かうまでに歩く薄暗い山道、回廊を歩いているときのような気分を再現することを目指した。僧の人たちは瞑想の前、そんな道を通って本堂に向かうらしい。イヤホンを外したとき、山道の出口で景色が開けたときの開放感、つまり、緩和やリラックスとのギャップを味わえたら、そう思って選曲した。

記事ではつながれない人との関係に期待

と・・・・・・ いかにもSpotifyを使いこなしている風に話をしたが、白状すると、Spotifyで自分のプレイリストが作れることを知ったのは実はすごく最近のことだ(苦笑)。音楽好きの友人が出かけるときに聴くプレイリストを作ってTwitterでシェアしてるのを見て、自分もちょっとやってみたいと思ったのだ。

作り始めてみるとすごく簡単で、ほとんどの作業はスマホで終わった。プレイリストの名前を決めて、ランダムに曲を聴き、いいな、コンセプトに合っているなと思ったらプレイリストに追加する。最後にパソコンでプレイリストのディスクリプションを入力するだけ。あとは、こうしてブログやSNSでシェアして、友人にフォローしてもらえばいい。今さらだけど、友人のおかげで新しい音楽体験を楽しむことができた。

こうやってプレイリストを知人にシェアするという体験は、自分が編集した記事をシェアするのとは一味違う。自分や知人のいつもとは違う側面を知ることができる気がする。「ああ、普段こういう曲を聴きながら、仕事をしたり、あの都市を散策したりしているのか」と。

もし、Spotifyでお気に入りのプレイリストを作っている人がいたら、ぜひシェアしてください。

編集者/Livit代表 岡徳之
2009年慶應義塾大学経済学部を卒業後、PR会社に入社。2011年に独立し、ライターとしてのキャリアを歩み始める。その後、記事執筆の分野をビジネス、テクノロジー、マーケティングへと広げ、企業のオウンドメディア運営にも従事。2013年シンガポールに進出。事業拡大にともない、専属ライターの採用、海外在住ライターのネットワーキングを開始。2015年オランダに進出。現在はアムステルダムを拠点に活動。これまで「東洋経済オンライン」や「NewsPicks」など有力メディア約30媒体で連載を担当。共著に『ミレニアル・Z世代の「新」価値観』。


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