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若い頃の私はなぜ嘘ばかりついていたのか?

嘘はつくな、とはよく言われますけれど、私の場合は若い頃はとにかく嘘ばかりついてました。それも、一番情けない姑息なタイプの嘘です。

一番ひどいやつだと、締切を過ぎて資料が届いていないと催促されたときに、過去のメールを捏造して「あれ、送りましたよ?」と返信したこともあります。これは我ながら情けない嘘ですね…

ただ、私の場合に限らず、みな実際のところ多かれ少なかれ嘘をつきます。特にマネジメントをやっていると、ビジネスレビューなどで、ほとんどの人が意識的か無意識的かを問わず何らかの嘘やごまかしをしているのがよく分かります。これは偉い人や仕事のできる人も含めてです。

なので、私が思うのは、「嘘をつくのを止めよう」と単純に考えても意味がないということ。それより大切なのは、自分の嘘を分析すること。そこには自分がすごくこだわっていることや恥ずかしいと感じていることがくっきりと表れているからです。

例えば例に挙げた私の嘘。実は締め切り前にひたすら資料作りに悩んでいたんです。大きな会議のための資料だったので、ばっちりと仕上げたいと最初は意気込んでいました。

でも、実際は自分の力が足りず仕事はなかなか進みませんでした。こうなるとある種のパニック状態に陥ってしまい、(非合理ですが)そのまま仕事をすることを諦めてしまうことが私はよくあって、このときもまさにそうなってしまいました。そして、それをごまかすために嘘をついた。

ここから読み取れるのは、私の稚拙な完璧主義とプライドの高さです。その頃の私は仕事でも「0か100か」という思考しかできず、常にベストを目指さなくてはいけないと考えていました。

ここでポイントとなるのは、100点が取れそうにない、という時の私の非合理な行動です。普通の人であれば、まあそれなら時間もないし70点くらいを目指して仕事を完成させよう、とします。しかし、この頃の私は「100点が取れないんであれば、もう仕事しても意味ない、止めてしまえ」とそのまま仕事せずに無気力になってしまうことがよくありました。

あまりに非機能的で理解できない人も多いと思いますが、ポイントはこうした内面のメカニズムや葛藤は自分しか分からない、ということです。もっと言うと自分自身もそこから目を逸らしていて、よく理解できていない場合も多いです。

なので、自分が嘘をついてしまった時に、それを単に後悔するよりも、その状況を思い出してみて、その時の自分の心のメカニズムを分析してみることをおすすめします。そこから学べることは多いので。

(おまけ)ここから私のカウンセリングの体験について書いてます。

私が認知行動療法のカウンセリングを受けている時も、この「すぐ嘘をついてしまう」傾向の分析は非常に重要なポイントでした。嘘をついてしまった時の状況を書き出し、そこで自分が何を考えていたのかを分析することは、意識より先に「自動的に」はまりこんでしまう私の心の傾向を浮き彫りにしてくれたからです。

認知行動療法ではこれを「外在化」というのですが、自分の心の中で起きていて普段見えないことを、あるモデルに沿って文章に書き出してみることで、それを「取り出して」客観的に眺めたり分析することが可能になります。

これはなかなか新鮮な体験で、今まで自分がコントロールできないと思っていた心という「不定形」のものにうまく形を与えて、それを取り扱えるようになる感覚です。「嘘をつく」という非合理な行動ほど、自分の本質的な部分が表れてきますので、そこを何度も繰り返し取り出して分析することは重要なんですよね。

本文で書いた私の場合だと、完璧主義の背後にあったのはプライドなんですよね。常に他人からよく見られたい、褒められたい、という。これは「優等生」的に育ってきた自分にとってなかなか抜けがたい性質で、しかも大人になってもこういう傾向があることは「恥ずかしく、直視したくない」事実でした。

なので、嘘をつく、ということの背後のメカニズムを分析することはなかなかタフではあります。でも、そこにはその人の「本質的な」部分が隠されている。なので、カウンセラーさんの力を借りることでそこに目を向けられたことはとても大きかったです。


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