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「人を動かす物語」が必要な時代にマネジメントはどう対応すべきか

経営学者の野中郁次郎氏と入山章栄氏のこの対談がとても面白かった。

野中氏は「物語」の重要性を強調する。

野中 最近になってわかってきたのは、組織が一体となって動くための戦略は「物語」としてしか表現できないということです。

入山 「物語」とは、企業経営者が語るビジョンのようなものですか。

野中 物語(ナラティブ)は、プロット(筋)とそれを行動につなげるスクリプト(行動規範)で構成されます。ロマンのある筋書きは誰にでも描けるんです。たとえば、技術体系のように分析的な形式知で描けるでしょう。それを実現するために重要なのは、行動基準となるスクリプトです。
京セラには、「京セラフィロソフィ」という行動指針が78項目ありますが、「こういう状況では、こういうアクションを取る」という仕事の型みたいなものが組織的に共有されている企業体は強いんですよ。
戦略が社員の間で身体化している状態と言ってもいいかもしれない。

これは経営の現場で私も日々感じていることで、いくら論理的に緻密で良くできた戦略を構築しても、それだけでは組織は動かない。そこにまず魅力的な「物語」があり、それをもとに納得のいく行動の指針が示された時に、組織は活力を持って動き出す。

そして、若い人と接しているとこうした「魅力的な物語を求める」傾向はさらに強まってきている感じている。

特に若くて優秀な人ほど、単なる報酬やその会社のブランドだけでは魅力的と感じてくれなくなっている。彼らにとって大切なのは、その会社が目指しているものの社会的意義やインパクト、そこで働く人達の魅力、そして自分をさらに高めてくれる場所であるか、といった要素だし、それは事業がどれだけ魅力的な「物語」を生み出していけるか、ということに繋がっていく。

マネジメントの現場を見ていても、リーダーがその人固有の言葉を持ってないと組織をリードできなくなっている感覚はたしかにある。一方で、「人を動かす言葉と物語」というのは簡単に身につくようなものではないので、マネジメントの難易度は確実に上がっていると感じる。

特に40代以上の大半のシニア層にとっては、課長には課長の、部長には部長の、といった感じで役割に応じたある種定型的な言葉を使いこなすことが求められるのが普通だった。そういう人にいきなり魅力的な言葉で人を動かすストーリーを語ってください、と言っても急にはできないのが当然。

でも、だからといって、使い古された言葉でただKPIの達成を現場に求めたとしてもそれはうまく機能しない。若い人を中心にそれでは目標達成に向けて現場を動機づけられないから。実際に、過去それなりにリーダーとして実績を出してきた人が、担当する部門でうまく実績を出せずに首をひねる様子をここ数年よく見かける。

では、マネジメントはどうすればよいだろうか?簡単な解はないのだけれど、「自分はなぜこの仕事をしているのか?」「チームと一緒になにを達成したいのか?」といった本質的な問いを自分に投げかけて、改めて自分の本音に愚直に向かい合うことがやはり大切なのかなと思っている。

自分の本音をごまかしてそれっぽい言葉でみんなに伝えても、毎日のようにLINEやツイッター、インスタ、さらにはスラックなどで大量の言葉を交わし、情報だけでなくそこで表現される幅広い「感情やストーリー」にも触れているみんなを動かすことはできない。

私自身もまだうまくできているとは言えないけれど、「自分はなぜこれをやっていて、なにをしたいのか?」という本質的な問いを自分に投げかけ、そこに自分だけの固有の言葉を紡ぎ出していくことが、事業やチームを統括するマネジメントにこそ必要な時代になっていると感じている。

★ボーナス・トラック★
人を動かす言葉を学ぶ上でも一番役立つのはツイッターです!

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