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純情シンドローム

普段、漫画を読まない私が、引っ越しの度に捨てられない漫画がある。

セーラームーンの武内直子さんの「The チェリープロジェクト」第3巻。

フィギュアスケーターの話で、ミラクルが起こりまくりのThe 少女漫画なのだけど、小学生の時に読んで以来、何回も読まずにはいられない。

物語の詳細は割愛するけれど、

主人公の飛鳥ちえりは、とにかく真っ直ぐ。好きなスケートに対しても、好きな人へも。

強力なライバルに勝てるわけないと思っていた主人公が、奇跡を起こす瞬間は、スケートが好きって気持ちと好きな人とペアを滑りたいというピュアな気持ちで溢れている。

ラストシーンでは、好きな台詞がたくさんある。

「自分に勝つんだ、自分にしかできないコトで」

「わたしには誰にも追いつけない、わたしのスケートがある」

「ひとりで滑るのは好きよ。でも2人ならもっと素敵。好きな人とならもっと」

真っ直ぐになりたい時に、この漫画を手に取る。

もちろん、現実はおとぎ話とは全く違って、弱々な私は、何故か読んだ後毎回ちょっと涙目になってしまう。

大人になると、感動が減ってゆくというよりも、気持ちを揺さぶられるのがどんどん怖くなってゆくのかもしれない。「〜しなければならない」とか「〜すべきだ」とかが自分の中でどんどん増えて、年齢を重ねる毎に身動きが取れなくなってくるから。

だけど大人は、誰しも深層では子供の頃に感じたような、真っ直ぐな気持ちが懐かしい。そして、unpredictableで感動的なことが起こって、心揺さぶられたいという矛盾を抱えているのだと思う。

純情シンドローム。

私が一番大切にしたいことは、自分の正直な気持ちに従う勇気。真っ直ぐに。おばあちゃんになっても、この漫画をずっと読み続けるだろう。

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ちなみにもう一つ好きな、地味なシーンがある。主人公のちえりがもっと夜遅くまで4回転ジャンプを練習したいのに、リンクが閉まってしまうという事態に「腰を痛めているから、練習は控えた方がいい」とみんな(コーチ等)が言う中で、続(ちえりの好きな人)だけは、「腰が痛むようだったらすぐ辞めろ」と言って、ちえりに自分のプライベートリンク(!!)を貸してあげるシーンがある。

大切な人の「もっと無理したい!」は一番困る。身体のことを考えないはずないから、ついつい「無理しないで」とか「たまには休んで」とか言いたくなる。

でもそれって本人を信じていない言葉にも聞こえる。「(いやいや、貴方はそんなに無理できないでしょ?) だから休んで」もちろん、心配しているからこそだから、難しい。

ただ、大事な時に断腸の思いで、大切な人の無理したい!を応援できるのは、本当に信じているからかなと思う。

続の、深い愛を感じたシーン。私もかくありたい。

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