特許はすぐに取るな その1

中小企業を応援する坂岡特許事務所、弁理士の坂岡です。

この記事のタイトル、特許はすぐに取るな その1についてお話しします。

弊所のお客様は大体、中小企業か個人事業主の皆様です。
これらのお客さんから特許を出願したいと相談を受けたとき、私は大抵の場合4~5年かけてゆっくりと特許にしましょうと提案します。
すると、最初は殆どのお客さんから、そんなに時間がかかるのですかと聞かれます。

これ、実は、数ヶ月で特許にすることは可能です。
但し、それがお客さんにとって最良とは限らない場合が多いのです。

というのも特許の権利化までには色んな手続があります。
主なものを説明しますと、先ずは調査、これは同じような発明が過去にあるかどうか調べるものです。
それから出願、次に出願から3年以内に審査請求をします。また次に拒絶理由通知に対応する中間対応、さらに特許査定となったときの登録手続です。

そして、これらの手続にはそれぞれにお金が必要となってきます。
これらの必要なお金を合計すると、権利化まで安くても60万円くらい、高いと100万円を超えるときもあります。

これを数ヶ月で支払うのか、あるいは4~5年かけて支払うのか、どちらが良いかです。
弁理士という立場からすれば、数ヶ月でお支払いいただいた方が、ありがたいですよ、、
さらに、その場合は早期審査の手続をするため、追加で手数料をいただくことができますので、弁理士としてはそちらの方が嬉しいです。

でもね、お客さんの立場からすればどうなんでしょうか。
特許というのは早く出願した方が勝ちです。
あと、特許に係る製品を販売などしてしまえば、例外規定はありますが、新規性がなくなってしまいます。
ですので、出願は急いだ方がいいのです。
出願が先なら、同じ発明を他人が後から出願してもその他人は特許を取ることはできません。
そのため、発明された技術が事業化されてからでなく、開発段階で出願することが多いのです。

すると、まだものになるかどうかわからない技術に対して、特許費用として60万円~100万円を投資することになります。
これって結構な出費ですよ。

そこで、です。
さっき、私は、審査請求は出願から3年以内にするとお伝えしました。
これ、何もせずに3年を過ぎてしまえば、その出願は取り下げとなってしまうからです。
逆の解釈をすれば、3年間はその発明が上手く行くかどうかを判断する期間があるということです。

つまり、先ずは調査をして出願をする。
そうしたら、3年間様子を見るのです。
そして、3年後に残念ながら事業化できなかったときとか、その発明が没になったときは、何もせずに放置して取下げを選択する。
そうすれば、その後の費用はかかりません。
逆に、事業化できている、利益を生んでいるような場合は、次の投資として審査請求をすれば良いのです。
さらに、審査請求後に1年弱で審査結果が通知されます。
このときに中間対応が必要になることが多いのですが、このときも同様な判断をすることができます。

このように、特許は時間をかけて手続を進めることで、費用を分散させることができますし、事業化ができなかったような場合でも不必要な出費を抑えることができます。

さらにいいますと、出願してすぐに権利化を目指して特許になればいいです。
しかし、特許にならずに拒絶査定となることもあります。
その拒絶査定となったときに、何も残りませんし、何の効果もありません。

というのはですね、特許は出願した時点で、先願の地位が発生し、1年半で公開公報が発行されます。
そして、公開公報が発行されると、他人の実施を牽制する効果があるのです。
あと、特許を出願したというとですね、中小企業や個人事業主ですと、取引先の信用を得たりする効果や、使い方によっては宣伝効果も期待できます。

このように、4~5年かけて権利化を目指した場合、仮に拒絶査定となっても、出願中の間は多少の効果を得ることができるのです。

ですので、出願だけは急いだ方がいいのですが、その後はゆっくりと権利化を目指していくことをお勧めします。
勿論、出願だけで大丈夫なのというご心配もあるかと思います。
この心配事については、また別の記事でお伝えする予定です。

YouTube https://www.youtube.com/watch?v=AC8W809UFwg&t=12s
坂岡特許事務所 www.sakaoka.jp
Facebook https://www.facebook.com/sakaoka.norio/

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?