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考える技術・書く技術 (バーバラ・ミント)

ロジカル・ライティング

 いわゆる「ロジカル・ライティング」の解説書です。
 著者のバーバラ・ミント氏は、世界の主要なコンサルティング・ファームに対してもライティングの講義を行っているこの分野の実力者です。

 当然のことながら、「ライティング」の前提には「シンキング」があります。この本では、分りやすい文章を書くためにはしっかりした「論理構成」が不可欠との観点から、いくつもの具体的なフレームワークやツールを紹介しています。

 たとえば、「適切な文章構成の3つの鉄則」として示しているのは、以下のポイントです。

(p15より引用)
1.どのレベルであれ、メッセージはその下位グループ群を要約するものであること
2.各グループ内のメッセージは、常に同じ種類のものであること
3.各グループ内のメッセージは、常に論理的に順序づけられていること

 これが、まさに著者が提唱する「ピラミッド原則」の基本スキームになります。
 著者によると、ピラミッドを形成する「事実」や「思考」を論理的に並べるパターンは、以下の4つしかないと言います。

(p17より引用)
演繹の順序(大前提、小前提、結論)
時間の順序(1番目、2番目、3番目)
構造の順序(北から南、東から西、等)
比較の順序(1番重要なもの、2番目に重要なもの、等々)

 また、ピラミッド型に構成されたロジックに基づき「ビジネス文書」や「コンサルティング提案」等を書き起こす際には、「導入部」の内容がポイントになると述べています。
 この導入部の構成としては、「古典的なストーリー展開」を推奨しています。「状況→複雑化→疑問→解答」という一連の流れです。

(p26より引用) まず、「状況(Situation)」の時間と場所を設定します。この「状況」の中で何かが起きます。これを「複雑化(Complication)」と呼びます。この複雑化によって読み手は「疑問(Question)を抱き(あるいは、おそらく抱くはずであり)、それに対してあなたの文章が「答え(Answer)」を与えるというパターンです。

 割り切りすぎた説明という感じもしますが、まずは「基本の型を身につけることに専念すべし」ということです。

要約の効能

 プレゼンテーションのHow Toでは、あることを説明する場合、まず、これから説明する具体的な項目の「数」を示してイントロとするように薦められることがよくありますね。
 「・・・には、3つの課題があります」とか「・・・のために、5つの改善点を指摘します」といった感じです。

 しかしながら、著者は、そういった表現は「白紙の主張」であって不十分だと言います。著者が求める導入部の記述内容は、「最終結果がイメージできるように、行動や考えを具体的なことばにする」ことです。そのために必要な作業が「要約」です。

(p158より引用) 正しく要約を表現することの最大の価値は、そうすることが、いったい自分が何を本当に言いたいのかを見つけ出す助けになるということです。またもうひとつの価値は、読み手に対し、自分がこれから詳しく伝えようとしている考えを事前に伝え、読み手の頭の中に受け入れ態勢を準備させることです。

 著者は、こういった「要約」のコンセプトを踏まえた「グループ化」が適切になされていれば、自分の考えを相手(読み手)に明快に伝えることができると言います。
 具体的には、

(p102より引用) 第1に、考えのグループを構成しているロジックの枠組みを見つけ、それをロジックの順序で書き表わすことです。次に、混乱した考えの中から本質的な考えを抜き出すこと、つまり帰納法的な要約を見つけることです。

というプロセスにより、伝えたいことの「ピラミッド構造」をつくりあげるのです。

 グループ化する場合は、「構造」「因果関係」「分類」という3つの視点のどれかの軸でまとめることになります。
 その際の肝は、「なぜ、これらをグループ化したのか」という「基準」です。これについて、著者は、以下の2点を挙げています。

(p164より引用)
・それらはすべてある特性を共有しており、かつ、その特性で関連づけられるすべての考えであるから(このケースでは、要約ポイントはその類似点の意味から得られる考えとなります)
・それらはすべてある結果を達成するために一緒にとらねばならない行動であるから(このケースでは、要約ポイントは一連の行動によって得られる直接の結果を述べます)

 さて、本書を読み通しての率直な感想です。
 非常に懇切丁寧に説明されているのですが、一度ザッと読んだぐらいで著者の方法論を理解しきるというのは、私にはちょっと無理でした。理解と実践を繰り返して身に着けていくのでしょうね。



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