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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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#講談社学術文庫

貞観政要 全訳注 (呉 兢)

貞観政要 全訳注 (呉 兢)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 中国唐代に呉兢が編纂したとされる第2代皇帝太宗の言行録です。
 古来から「帝王学の教科書」とされてきた書物とのことですが、なにぶん文庫本でも800ページ近い大著なので、まずは一通り訳文に目を通すことを目標に手に取ってみました。

 「貞観政要序」には、イントロダクションとしてこう記されています。

 さて、それでは本編の中からの覚えの記録

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物理学の原理と法則 科学の基礎から「自然の論理」へ (池内 了)

物理学の原理と法則 科学の基礎から「自然の論理」へ (池内 了)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

 タイトルに惹かれて手に取ってみました。
 著者の池内了さんは宇宙物理学者、いままでも科学・物理学の「入門書」を何冊も著しているようです。

 私は、こういった “入門書”はつい中身を覗いてみたくなるタイプなのですが、ほとんどの場合 “手に負えなかった” という結果に終わっています。
 さて、今回はというと・・・、やはりかなり手こずりました

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「民都」大阪対「帝都」東京 (原 武史)

「民都」大阪対「帝都」東京 (原 武史)

(注:本稿は、2021年に初投稿したものの再録です。)

タイトルに惹かれて手に取った本です。

 著者の原武史さんは、「東京」&「大阪」、「国鉄」&「私鉄」を対置しつつ論を組み上げていきますが、その内容は日本思想史的な色合いで、ちょっと予想外のものでした。

 「はじめに」の章で、著者は、人文思想的側面から、鉄道を “シンボリックな装置” として位置付けています。
 それは、東京にとっては「国民

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中世の罪と罰 (網野 善彦 他)

中世の罪と罰 (網野 善彦 他)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)

 ちょっと前に「中世芸能講義」という本を読んで、久しぶりに網野善彦先生の著作に手を伸ばしたくなりました。

 本書は、網野氏をはじめ4名の中世史研究の大家の論考10編を採録したものです。
 かなりマニアックなテーマを扱ったもので、正直取っつきにくい内容でしたが、強いてその中から私の関心を惹いたところを覚えとして書き留めておきます。

 まず

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中世芸能講義 「勧進」「天皇」「連歌」「禅」 (松岡 心平)

中世芸能講義 「勧進」「天皇」「連歌」「禅」 (松岡 心平)

(注:本稿は、2020年に初投稿したものの再録です。)

 久しぶりに歴史関連の書物を手に取ってみました。

 著者の松岡心平さんは東京大学名誉教授で、能楽の専門家です。
 本書は、日本中世芸能の世界を「勧進」「天皇」「連歌」「禅」という四つの切り口から論じたものですが、講義形式で語りかけるような文体で書かれているので、素人でも入り込み易いですね。(内容が理解できているかは別物ですが・・・)

 

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逸楽と飽食の古代ローマ―『トリマルキオの饗宴』を読む (青柳 正規)

逸楽と飽食の古代ローマ―『トリマルキオの饗宴』を読む (青柳 正規)

(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)

 上の娘が、大学の講義で使うとのことで図書館で借りてきた本です。ちょっと面白そうだったので読んでみました。

 案内によると、本書が扱っている「トリマルキオの饗宴」は、古代ローマ時代の風刺小説「サテュリコン」の最も有名な場面とのこと。主人公のトリマルキオは、成功して財を成した大富豪の解放奴隷です。

 本書において、著者の青柳正規氏は、トリマ

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法句経 (友松 圓諦)

法句経 (友松 圓諦)

(注:本稿は、2014年に初投稿したものの再録です)

 先日、岩波文庫の「ブッダのことば」を読んだのですが、恥ずかしながらほとんど理解できませんでした。
 そのリベンジの気持ちもあって手に取ったのがこの本です。ただ、どうやらそういう俗な動機で読むのは間違いだったようです。

 先の「ブッダのことば」は、「スッタニパータ」という原始仏典の邦訳でしたが、こちらの「法句経」は、同じく最古の仏典の部類で

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「日本人論」再考 (船曳 建夫)

「日本人論」再考 (船曳 建夫)

(注:本稿は、2012年に初投稿したものの再録です)

日本のアイデンティティ 私の学生時代は、エズラ・ヴォーゲル氏による「ジャパン・アズ・ナンバーワン」がベストセラーとなったころで、日本の目覚ましい高度成長が注目されていました。
 それに併せて、その源泉を探求する、いわゆる「日本人論」も大きなブームとなりました。私も、「菊と刀」「日本人とユダヤ人」「「甘え」の構造」「タテ社会の人間関係」等々、ポ

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ビーグル号世界周航記 ― ダーウィンは何をみたか (チャールズ・ロバート・ダーウィン)

ビーグル号世界周航記 ― ダーウィンは何をみたか (チャールズ・ロバート・ダーウィン)

(注:本稿は、2012年に初投稿したものの再録です)

 ダーウィンの著作はまだ一冊も読んでいませんでした。
 有名な「種の起源」も、何度か読もうと思ったのですが、あの分厚さに少々気後れしていたのです。

 ということで、今回手に取ったのはコンパクトな著作、「ビーグル号航海記」のエッセンス版です。内容は、1831年、英海軍の測量船ビーグル号に同乗したダーウィンによる南米大陸や南太平洋諸島の調査記録

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随感録 (浜口 雄幸)

随感録 (浜口 雄幸)

命懸け 浜口雄幸(1870年5月1日-1931年8月26日)、「ライオン宰相」と呼ばれ、大正から昭和初期の激動期に大蔵官僚・蔵相・首相と数々の重職を勤めた政治家です。

 一国の指導者の器が本当に小さくなってしまった今日、銃弾に撃たれながらも「男子の本懐」と語った覚悟に、改めて、重く尊い気概を感じます。

 本書は、その浜口雄幸氏の自伝であり遺稿集です。
 巻頭の「自序」にはこういう言葉があります

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スターリン ― その秘められた生涯 (J.バーナード ハットン)

スターリン ― その秘められた生涯 (J.バーナード ハットン)

 家の本棚にあったので読んでみました。
 原題は「The Private Life of Joseph Stalin」(ヨシフ・スターリンの私生活)で、そのタイトルどおりスターリンの私的生活の面を中心にその一生を紹介した著作です。

 とはいえ、私的生活に止まらず、レーニンやトロツキーといった面々との関係ややりとり、さらにはスターリンが政敵に対して下した公式には確認されていない行為等も記されていま

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エコエティカ ‐ 生圏倫理学入門 (今道 友信)

エコエティカ ‐ 生圏倫理学入門 (今道 友信)

今、思う、倫理学 参加していたセミナーでの必読書として配布されたので読んだ本です。
 今の時代環境に基づき考察された倫理学の入門書です。

(p60より引用) 人間が運命として甘受しなければならないもの、また、それゆえに、そこから個性の自由な展開が可能なものと、それとは異なり、人間が人力で変換しなければならないものの別があるのか、ないのか、そういう問題を倫理として考えることは、絶対に必要であり、そ

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吉田松陰・留魂録 (古川 薫)

吉田松陰・留魂録 (古川 薫)

 吉田松陰が伝馬町の獄舎で処刑されるのは1859年(安政6)10月27日。
 「留魂録」は死の前々日から前日にかけて書かれたもので、松陰の遺書ともいえる文書です。
  身はたとひ武蔵の野辺に朽ぬとも留置かまし大和魂
    十月念五日    二十一回猛子
で始まる第1章には、やはり、松陰の信念である「至誠」が登場します。

(p78より引用) 一白綿布を求めて、孟子の「至誠にして動かざる者は未だ之

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英国人写真家の見た日本 (H.G ポンティング)

英国人写真家の見た日本 (H.G ポンティング)

 スコット南極探検隊の映像記録を残したポンティングは、日露戦争を挟んで延べ3年間日本に滞在しました。

 その間、様々な人々と交流をし、また日本各地を訪れ多くの貴重な経験をしました。京都の名工を訪ねたかと思うと、浅間山噴火に遭遇し、富士登山・保津川下りなども楽しみました。
 その情景描写は細やかで豊かです。その土地土地で出会った日本人に対する暖かな視線は、その文章とともに掲載された多くの写真で証明

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