人間として生きるのに向いていない
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人間として生きるのに向いていない

 学生の頃、俺は将来の為にとか大真面目に考えて、狂ったようにボランティア活動に取り組み、ゼミだのサークルだのと言った集団の中でリーダー格の仕事を、それはまた狂ったように引き受けていた。

 だが卒業する頃には、俺は生真面目に頑張ってきたやつがいかにバカを見るかを身をもって思い知らされていた。

 そうして俺は気付けば週刊誌記者となり、他人の醜態をスッパ抜いて稼いだ金でなんとか暮らしていた...


 今晩も仕事の時間がやってきた。みんな大好きタブーの匂いを追い求め、俺はクルマの中からホテル街周辺を観察していた。
「今夜、舞台女優との熱愛が報じられている男性アイドル・HARUがこのエリアのホテルで彼女と『お泊り』する可能性が高い。張り込んで撮ってこい。」
「ああ、確かその日って舞台の公演時間と歌番組の収録時間が被ってるんでしたっけ?」
「しかもこのエリアのホテル街、劇場とスタジオから歩いて行ける距離ときた。時期的にも、ボロが出そうな頃合いだ。間違いなく撮れる。」
夕方、そんな話を編集長と交わし、そのままここまでクルマを飛ばして来た。しかしその日はヤケに人通りが多く、有名人がお忍びで来れるような状況ではなかった。

 「移動するか...」
警察に怪しまれて職質からのターゲットに警戒されて成果なし、という最悪のシチュエーションは避けたい。俺はエンジンをかけ直し、ウィンカーを上げようとしたその時、
「コン、コン」
助手席側からノックの音。遅かった...
肩を落としながら振り向くと...息が止まった。


 HARUがいる。何故!?まさかバレた!?パニック寸前の中、彼が何か喋っていることになんとか気付き、俺は窓ガラスを開けた。

 「週刊誌の記者さんですか?」
やはりバレていた。...しかし、やけに落ち着いた声だ。
「ボクのこと撮りに来たんですよね?」
その通り。返す言葉もない。
「...キレイに撮ってくださいね。」

 今、何て...?

【続く】

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のりもん

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感謝の極み……
胡乱窟のニュービー。忍殺、あんスタ、ガルパン、あとは映画などを摂取して生きている。 まれにアルコールやカフェインが混じった文章をここへ投げこんでいく。 サイバーパンク・ポストアポカリプス小説「装鬼」を連載中。 ※アイコンはPicrewの「makeYo1」製です。