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「旅行どうだった?」と聞かれたら、ちょっと困る

旅から帰ってきて、
日本で誰かに「旅行どうだった?」と聞かれたとき、いつもちょっと困る。
多分、見出しの写真みたいな表情で目が泳ぐ。
そんなことを感じる人はどのくらいいるのかな。
割と旅人あるあるなのではないかとも思っている。

「楽しかったよ」と言って、あえて会話が弾まない空気を出してそれ以上聞かないで欲しい時もあるし、
「色々あったで」という前振りを聞かせてどの程度のレベルの話をお求めですか?と相手を探る時もある。
その時の自分の気分と相手にもよる、まあ大体が前者ではあるけど。
ほとんどが、浅い内容の話になって、「ふーん…」てな雰囲気で終わることもあって、でも実はそれはこちらの狙い通りなことも多い。
私が経験した旅のことを全て分かった気になられるのも嫌だし、理解してもらえないで話が終わるのも嫌だという、正に私という人間のひねくれ具合がそうさせている。
それに、興味はないけど一応旅の話を聞いておこうかという人に対して話をすぐ終わらせてあげる気配りでもあるし、海外に自由に旅することへの妬みの対象にならないように注意している、ということもある。

また、その人が知っている私と、旅での私の人物像があまりにかけ離れているため、説明が難しいということもある。まさか、日本で割と潔癖にしているあの人が、汚いインドの虫の死骸の落ちた部屋で平気で他人と寝ているとか結びつかないらしい。
それに温度も違いすぎる。「温度」という言葉がぴったりだと思うのだけど、異国の地を1人で彷徨っている時の自分と、質問してくる人の温度が違いすぎるし、帰国して日本の綺麗なカフェで誰かとアイスレモンティーを飲んでいる自分自身ともまた温度が違う。

そうなると、やっぱり分かりやすいテーマに絞って、どこの何が美味しかったとか、有名なあれを見たとか、何を買ったとかそういう話が1番無難。質問者の求める好奇心レベルに合わせてスポット的にお伝えして話を終えるのがやっぱりベストだ。

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フランスの田舎の森を雨の中、凍えそうになって歩いていた時にそこが映画「ジェヴォーダンの獣」の舞台になった地域で実在の話だったと知り、霧が深くなり急に怖くなって早歩きになったら、向こうの方にいた鹿と目があった神秘的な話などは万人受けしない。

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ジェヴォーダンの獣、なんていう映画、まわりで覚えてる人なんておそらくいない。フランスに行ったなら、あまり仲良くない人にはそんな話はせず、エッフェル塔の話をすれば大体OKだ。

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そんなことを繰り返してどんどん私が周りから見て謎の人間になっていった。
3週間旅したのに「インドには辛くないカレーもあるよ」とか「エッフェル塔はキラキラ輝く時間帯があるよ」くらいの浅いことしか言わない人間。
一体向こうで何をしてきたのか全く見えてこない人。
むやみに自分の大切なかけらを見せたくない、と思ってしまうタイプの人間でやってきたから、一定の人以外とは踏み込んでこない距離感になれてちょうど良かった。

とはいうものの、いつの間にか、旅での写真やつぶやき、ブログなどで、大切なかけらたちをアウトプットするのが定着してしまった。なんなら最近このnoteにまで手を出し始めた。
自分から全世界に自分の体験や考えを披露するという、私にしてはかなり思い切った自己開示。まあ匿名ではあるが。

私の知らない人でいいから、
どこかにいる、私のことを分かってくれるかも知れない人に向けて(どこかにジェヴォーダンの獣を見た人がいるかもしれないしね)、旅の話を聞いてもらっているのだ。多分。それがちょうどいい。
そして、未来の自分に向けて、
この旅がどうだったか?の問いを、
長々と答えてるのかも知れない。
きっと、今の自分の一番の理解者だから。




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