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キャベツーショッカー論

串カツ屋では大抵生キャベツが無料で付いてくる。そしてキャベツはいくらでもおかわりしていい。それは、ソースの二度漬け禁止ルールゆえなのだそうな。一度噛り付いた串カツを共用のソース入れに再度漬け込むのは衛生的にも良くないし、マナー違反だ。だけども、「もう少しソースつけたい!」となる時があるのが人の業。そこで、ざく切りのキャベツをスプーン代わりにしてソースを掬って串カツにソースをかける。そのためにキャベツが付いてくるのだという。

僕にそんな経験はないし、串カツ専門店に通いつめた事もないし、そんな人を見た事もない。だから、それが嘘か本当かは分からないんだけれども。
キャベツはそのまんま齧って口の中をさっぱりリセットするためくらいに思ってた。そして、生キャベツは美味しいからパクパク食べてた。ま、庶民の店であるのが串カツ屋だから、二度漬け禁止以外のマナーはそれほどうるさくないのがキャベツの存在意義をあやふやなままにさせてきたのかも知れないし、生キャベツを頬張る事を責める人もいないから、これは今も僕にとっては「へー」と頷くだけのトリビアに過ぎない。

そんな、キャベツ。串カツ屋以外でもお通し代わりに出てくる店もある。大抵は、無料で。

ふむ……。もしも、【食べれば食べるほど腹が減るキャベツ】みたいなものが開発出来たら、そういったキャベツ無料のお店は飛びつくだろうな。キャベツを出した分だけ普通の料理のオーダーが増えるのだから。

だけども、大っぴらに【食べれば食べるほど腹が減るキャベツ】を当社は開発しました!とは宣伝しにくいだろうな。マジックのタネみたいな情報商材的な価値がそこにはある。

販路は口コミで、信頼のおけるルートにしか捌けない。すると、流通量も限られるわけだから、普通のキャベツと大きく価格帯の違う高額なものにしなくてはならない。開発費等を回収するためにはそれが必須だ。だが、購入する側にとってはキャベツの仕入れが高くなったら本末転倒も甚だしい。そんなものは誰も買わない。

うむ。そんなキャベツは存在し得ないな。無料キャベツ陰謀論、ここに頓挫。我々は安心して無料のキャベツを存分に食べていいのだ。

【食べれば食べるほど腹が減るキャベツ】を開発可能で、秘密が保たれる販路開拓も可能、そして、そこにしっかりと利益を生む事が出来るのは、架空の世界、仮面ライダーの世界の秘密結社ショッカーくらいのものだろう。それくらいに、【食べれば食べるほど腹が減るキャベツ】のハードルは高い。

【食べれば食べるほど腹が減るキャベツ】が存在し得る世界……、そこには人が寄り付かない採掘場跡の洞窟の奥深くに秘密基地があって、そしてその上部、地表部分には広大なキャベツ畑が広がっているのだ。ショッカー農業部門。それがない事には【食べれば食べるほど腹が減るキャベツ】はあり得ない。

商品開発に余念がなく、真面目に働く人材が豊富に揃っていないと悪の秘密結社は成り立たないというその証左を本日のこのコラムの着地点としたい。

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