思い出ムービー

彼が倒れてから一年。
ふたり旅できなくなって一年過ぎた。

倒れたのは去年の2月末。
もう少し温かくなったらドライブ旅行しよう。
ふたりの誕生日(3月と4月)と36年目の結婚記念を兼ねて。

千葉の勝浦と長野の軽井沢の宿を予約していたのに。
キャンセルすることになったし、ドライブももうできなくなった。

「もう何もできなくなった」
入院中の彼のつぶやきである。
ゴルフも登山もスポーツ観戦も、毎日の散歩も無理。
車も手放すしかない。

「何も、じゃないよ」
「何かできることがあるから」
「できることを考えようよ」
そんな言葉をかけたけれど、「何かできること」って?

あるような気がするけれど、ふわふわとしていて
「これとこれ」とはっきり表現できなかったものだ。

退院してリハビリを少しずつ重ねていく。
「何かできること」・・・彼にはまだまだつかめていないようだ。
一日のルーティンをこなし、以前のようにPCとTVの画面を交互に見る以外には。

介護の仕事をしている友人がかけてくれた言葉。
「2年3年のスパンで捉えようよ!」

「何かできること」なんて1年くらいでは見えてこない。
まだまだ時間はあるのだ。

「何かできること」が見つからないけれど、
彼はあまり悲しげでもなく寂しげでもない。
悲観するより楽観主義。

一方わたしはというと、在宅介護の軌道にも乗って
少しずつ心に余裕もできてきた。

彼のリハビリ風景を動画に撮って編集するうちに
これまで撮りためた大量の写真や動画を
編集し思い出ムービーをつくろうと思い立った。

過去の思い出なんて見たくないと言われるかな。
悲観主義でない彼。けっこう喜んで見てくれるので、
調子に乗って数本つくってみる。

100本できたら・・・車椅子で旅しよう。
いやいや、使い心地の良い杖で旅に出よう。
マイペースでゆっくり、近場を訪れる日が来ますように♪

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