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建築と不動産の間に降る冷たい雨

建築雑誌で【建築×不動産】をお題に取材いただきました。

建築業界と不動産業界の間には、業界外の人からは意外なほど大きな隔たりがあります。

奇しくも明日は七夕ですが、本来はそばで手をとりあいたい両者をわかつ天の川に今日も冷たい雨が降る、といった感じでしょうか。

両者は言語も価値観も行動様式もかなり違っていて、相容れない部分が多いのだけれど、目的は同じはずです。

建物、とくに住宅は使う人、住まう人をどれだけ幸せにできるか、どれほどの笑顔や豊かな時間、物理的・経済的・心理的な安心をもたらせるか、結果としてその建物がどれだけの期間、どれほどの人に大切に愛着をもたれ、住み継がれるか。

それにぎりぎりまで最大限できる力や知見をコミットするのが、建築だろうと不動産だろうと業界人すべての使命であり、誇りでもあると思っています。

その観点で見たときに、住宅を購入する時には誰しもが資産性を気にするけれど、その資産性の定義は漠然としていて、成約価格や査定価格、作品性といった要素だけで語れるものだろうか、ともやもや考えてきました。

気づけば長く不動産流通の現場でコンサルティングやインスペクションという、建築と不動産とユーザーの架け橋をやらせていただいてきて感じたのは、

人は選択肢がもてる時に迷いもするけれどゆとりと納得度、豊かさや楽しさを味わえる、というごくシンプルなことです。

買った住宅を売る、貸す、長持ちさせて相続する、用途転換するといった選択肢、欲しい、住みたい複数の人から価格や条件、相性や価値観で選ぶ選択肢などなど、

流通可能性という選択肢の有無、大小で経済合理性はもちろん、心のほがらかさやすこやかさが激変する。

でも残念ながら選択肢自体もてない状態に陥ることも多いのが、日本の住宅にある残念で不都合な真実です。

そんな現状をふまえながら、建築学会の方々へ、より課題や反省点の大きい不動産業界にいる者として自戒もこめつつ、ラブレターのような想いをお話させていただきました。

明日の天の川は晴れるといいですねえ。

その先もいつもずっと、この業界の仕事は誰かの晴れやかな笑顔につながるものでありたいと、心から願っています。



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