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台風直後の今だからこそ読むべき日本沈没

前回、高校生の頃に読んだ時の感想は、
「すごいけど、あんまり面白くない」「陰気。いかにも日本っぽい」
の2言だった。

30年後、45歳のおっちゃんになって、社会的な責任があり家族もいる状態で読んだ。
未曾有の地震や台風の記憶が新しい状態で読んだ。
これから高校生の自分への反論を書く。

「すごいけど、あんまり面白くない」

日本沈没はとてつもなく凄くてとてつもなく面白い。
日本沈没はまずSFだ。日本全部が沈む。それもたった半年で一気に。
その大ウソを科学的な理論づけで描いている。小説を読んでいると信じてしまう。

日本が沈むメカニズムの一つ、地底のマントルが大気のような動きをする。
荒く端折って書くと、地の底のドロドロの溶岩が、台風のような動きをするということ。
その動きは大気よりはるかにゆっくりだけれどそのエネルギーは莫大で、確実に日本列島の底を削り取っていく。

これ、直近に台風を体験した身としてはとんでもなく怖い。
もちろんSF的な嘘だけれど、これを描くまでに小松左京は10年以上の取材をして科学者から勉強しまくった。
それが日本沈没の迫真性の元だ。この日本が沈む理論だけでも凄く面白い。

「陰気。いかにも日本っぽい」

なぜ陰気なのか。それは日本沈没に直面した日本の責任ある大人たちが、自分のすべきことをするからだ。
日本の沈没を止められないことは最初からわかっている。
だけれども大人はすべきことをしなくてはいけない。

様々な大人が出てくる。政治家、実業家、サラリーマン、水商売、主婦。
責任ある大人たちは周りからさまざまな非難を受ける。今風に言えば炎上だ。
そりゃあ陰気にもなるわな。

それでも、1人でも多くの人を海外に逃がすため、生き延びさせるために彼ら彼女らはすべきことをする。
たとえ誰にも見られていなくても、見られたら誤解をうけて炎上するようなことでも、淡々粛々とすべきことをする大人。
こういう大人を評価する価値観がSNS時代には薄れているのじゃないか。

目に見えるものが全てではないし、みんなが納得することが正しいことでない場合もある。
日本が沈没して、日本人が大地を失う。
SFで最悪をシミュレーションすることも、防災の役に立つ。

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