東京から札幌へ移住して9ヶ月。コンパクトシティならではの魅力を振り返る。
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東京から札幌へ移住して9ヶ月。コンパクトシティならではの魅力を振り返る。

はじめに

今年の4月に渋谷から札幌へ移住し、北海道の成長産業支援をテーマに活動している株式会社POLAR SHORTCUT(ポーラー・ショートカット)の大久保です。
今回で3回目となるnoteでは、1年の振り返りも兼ねて、よく聞かれる「札幌行ってみてどうよ?」という話をざっくばらんにしていきたいと思います。来年以降は東京から地方都市への移住も本格的に増えていくような気がしているので、脱東京を検討中の方にも参考になれば幸いです。

わかってはいたが住みやすい街、札幌。

東京と比較すると圧倒的に住環境に恵まれているなという印象です。札幌市は主に、札幌・大通・すすきのという南北に跨がるエリアが市街中心部となり、そこに多くの商業施設、飲食店、企業などが密集しています。
市街中心部からは3路線の市営地下鉄が伸びており、その沿線が住宅街というのが基本的な街の構造です。住宅街のどの駅からも10分もあれば札幌中心部へ移動できるアクセスの良さは大きな魅力です。さらに家賃は東京の半額〜3分の2程度で、住環境のコストパフォーマンスは国内最高レベルだと感じています。

ちなみに冬が大変なのではという声もよく聞きますが、札幌駅北口からすすきのまでのメインストリートを繋ぐ国内最長(1,900m)の地下歩行空間が2011年に完成しており、市街中心部の主要施設には地下から直結でアクセスが出来るようになっています。世界最大の豪雪都市である札幌ならではの発展…!もちろん外は寒いですけど。
(写真は地下歩行空間。各種地下鉄駅だけでなく、主要な商業施設やオフィスビルと直結しています)

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さらに、近隣には小樽や定山渓、支笏湖などの北海道屈指の観光地があり週末に遊びに行くこともできます。そして、住んでみて思ったのが、山が近い...!札幌は自然豊かと言われることが多いですが、これだけ山を近くに感じる200万都市はなかなか無いのでは。

また、今年に入って急激に普及したリモートワークが、地方に住むことの可能性をかなり広げたように感じます。最も大きな変化は、顧客(クライアント)が直接対面で会うことを希望しなくなったことです。従来は特に大企業では「直接お会いするのが礼儀」という慣習がありましたが、そのハードルが消滅したことで、地方にいながら東京の企業のプロジェクトを完全オンラインで完結できるようになりました。
敢えて家賃の高い東京の狭い家に住み、満員電車で通勤することを選ぶメリットは消滅しつつあり、どこでも仕事ができるこの時代に「東京に住む理由」はシビアに問い直されています。

地方最強都市である福岡市との違い

競争力の高い地方都市と言えば、近年では福岡市が有名です。ちょうど最近読んだ書籍やセミナーで福岡市の都市経営分析に触れる機会があったので、いくつかの切り口を札幌との比較で見てみます。

まず、単純な都市人口で比較すると、政令市としては横浜市・大阪市・名古屋市に次いで、札幌市が195万人で4位、福岡市が154万人で5位となっています。そのなかで特筆すべき点として、福岡市は10-29歳の人口比率が22.05%で全国1位となっています。一方、札幌市は19.23%で全国14位。札幌は道内では継続的に人口が増加している唯一の都市ですが、その実態は道内全域から高齢者が集まってきており、高齢化が進んでいるという側面が強いそうです。

もう一つ若者の確保という観点から。福岡には旧帝大である九州大学を中心に多くの教育機関があることで、18歳の大学入学時には九州全域・沖縄・四国地方・中国地方から多くの若者が集まってくる構造になっているそうです。一方、札幌は同様に旧帝大の北海道大学があるものの、大学進学と就職の2つのタイミングで相当数が関東圏へ流出してしまうことが特徴で、東京都への転出数は実は札幌市が全国1位とのこと。感覚的に、札幌でアクティブに活動している20代がどうも少ないと感じるのは、こういったトレンドに由来しているようです。

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最後に触れておきたいのは文化的な観点です。「なぜ福岡と比べて札幌にはスタートアップが生まれにくいのか?」という質問を良く聞かれるのですが、福岡市が「伝統的に商業・サービス業を中心として民間企業主導の都市開発で発展してきた」のに対し、札幌を中心とする北海道全域は「伝統的に対ロシア政策の拠点として国策主導の都市開発で発展してきた」ことによるカルチャーの違いが大きいのだというのが最近の結論です。
この辺りの福岡の文化や歴史的な発展経緯は『福岡市が地方最強の都市になった理由(木下斉著、PHP研究所)』という書籍に詳しく書かれているので、もし都市開発に興味がある方がいればぜひ読んでみてください。木下さんの本は読みやすく、内容も深いのでオススメです。

多様なコミュニティが交わるコワーキングスペース

テーマを手触り感のある話に戻しまして...。札幌への移住以降、私は札幌の大通にあるコワーキングオフィス「Sapporo Incubation Hub DRIVE」に入居しながら仕事をしています。DRIVEは、株式会社D2Garageという北海道新聞社とデジタルガレージの合弁会社が運営を行なっているのですが、彼らは"Open Network Lab Hokkaido"という道内唯一のアクセラレータープログラムや、札幌市が行なっている"Startup City Sapporo"プロジェクトの運営事務局でもあるため、DRIVEは札幌市内の起業支援・新規事業関連の情報が集約される場所でもあります。
(下記写真はDRIVEの内装。伝統的な空気が溢れる北海道新聞本社ビルの中でここだけ異世界感。)

DRIVE背景

また、DRIVEの特徴として、起業家・スタートアップが活動しているそばで、それとは全く違う文脈のコミュニティが交わる場所にもなっているのが面白いところだなと思っています。
具体的には、"北海道移住ドラフト会議"や"ほっとけないどう"など地域系のイベントを主宰している株式会社大人の五十嵐さんがプロデューサーとしてDRIVEの運営に入っていたり、 NoMaps for studentsの運営主体である学生コミュニティ(IRENKA KOTAN)のメンバーがクリエイティブ関連のプロジェクトをやっていたりするのが象徴的です。

属性の違う複数のコミュニティが、一つの場所で接点を持つという現象は、コミュニティの数が多岐にわたる東京ではなかなか想像しづらく、コンパクトな規模を保っている地方都市だからこそ、コミュニティを横断した面白いコラボレーションが生まれる余地が残っているのかなと感じます。
私自身も仕事の合間に、D2Garageの社員さんだけでなく、札幌市の職員の方、絵描きとして活動しているアーティストさん、17歳の現役高校生クリエイターなどと雑談することも多く、普段のスタートアップ経営者を相手としたプロジェクトとは異なる視点での学びを感じています。

えぞ財団が溶かす組織の境界線

札幌で活動しているコミュニティの中でも、特に今後に注目しているのがえぞ財団。えぞ財団は、サツドラホールディングスの富山社長とエリア・イノベーション・アライアンス代表理事である木下さん(前述の書籍の著者)が発起人となって設立したコミュニティです。
現在は、特別ゲストによるパネルディスカッションを中心としたセミナーやnoteによる情報発信を行っているほか、"チームえぞオフィス"というえぞ財団内のバックオフィス業務経験者を中心としたサイドプロジェクトが動いていたり、組織横断的な仲間づくりの場となっています。
(写真は11月に開催されたイベント"EZO SUMMIT"の札幌会場。オンラインでは100名近くの方が参加)

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えぞ財団の一番の特徴は、北海道を盛り上げることに興味を持ったメンバー(団員と呼ばれる)が、所属組織に関係なく個人として集っており、組織横断的なサイドプロジェクトを自発的に推進していける点です。団員の属性も、経営者、地元企業の社員、自治体関係者、フリーランスのエンジニアやクリエイターなど幅広く、多様な視点・スキルがコミュニティにもたらされています。
また、発起人である富山社長はイノベーション創出のためのコミュニティやコラボレーションの場作りに懸ける意気込みが強く、来年以降の取り組みにも期待です。なお、富山社長の考えについては(私が執筆した)こちらのインタビュー記事がまとまっていてオススメです!

さらに、えぞ財団には余市町の齊藤町長や、旭川のプロバレーボールチームのヴォレアス北海道の池田社長なども団員として参画しています。今年は発足初年度だったこともあり札幌での活動がメインでしたが、来年以降は、札幌以外の道内の各地方都市のキーマンを繋ぐネットワークとして機能していくとより意義深いのではないでしょうか。

2021年に向けた可能性と課題

特に今年の夏以降から顕著だったように思いますが、私の活動に興味を持ってくれて、実際に札幌に来た際に話を聞きたいと声をかけてくれる東京在住の方が増えてきました。北海道出身でUターンを検討中の方、東京にいながらサイドプロジェクトとして手を貸してくれる方、地元は全然別だけど札幌に興味を持ってくれた方などがいて、多くの人がいま東京から地方へ目を向けているのだとリアルに感じています。

東京からの移住やワーケーション事業が、閉塞感の強い地方を変えるきっかけになるのではないかと期待している方も多いですが、東京から人を呼び込んでも、単に移住先から東京の仕事を受託的にこなしているだけでは、あまり地域の発展という観点で見ると意味がないんですよね。
彼らを上手く自分たちのプロジェクトに巻き込んでいくことこそが重要だし、別に東京に住みながらでも地方に興味を持ってくれる人たちと共創する仕組みを作ることの方が重要。でもそういうことが出来そうだなという手応えは最近感じています。

一方で、引き続き課題感を感じていることは、北海道発のプロジェクトは、事業のマネタイズやスケールにあまり執着していないように感じる活動の割合がまだまだ多い点です。(あくまでも個人の感覚的な話ですが)。
札幌に来る前に言われて凄く印象に残っているのが『10年くらい前にも、札幌に若い世代の中心となる人がいて、その人が中心になって色んな面白い取り組みがされてたんだけど、その人がいなくなったら、いつの間にかそういう取り組みも無くなっちゃったんだよね』という話。
善意や楽しさから始まるプロジェクトももちろん素晴らしいのだけれど、個人的には、事業として成立して雇用が生まれ、持続性のある取り組みを作ることにこだわっていきたいなと思っています。

最後に

前述の通り、多様なコミュニティが近い距離で交わっているのが札幌の良いところでもあるのですが、私自身としてはやはり専門領域である「スタートアップ」というものを増やしていく事にしっかりと取り組んでいきたいなと思っています。今年は、まず土地を知る・土を耕すという位置付けの1年でした。来年からは本格的に種を蒔くような仕事を始めていく予定です。

引き続き、POLAR SHORTCUTでは北海道のスタートアップ支援の取り組みを行っています。何かご一緒できそうな方、興味があるという方がいれば、ぜひご連絡ください!
Mail:info@polarshortcut.jp
Twitter:@OkbNori







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北海道で起業家育成とスタートアップ投資(シードVC)をやっています。帯広生まれ→慶應義塾大→DeNA→SoftBank→Crevo役員→POLAR SHORTCUT1号ファンド代表。起業家支援を通じて北海道の新産業を創っていきたい。