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ふつうにしてて

その日は検査に行くと知ってたから
あたしは職場でソワソワしながら彼女を待った。

病院からまっすぐ
あたしの元へ来てくれた彼女が告げた病名。

悪性リンパ腫   かも。

絶句した。。。
頭からサーッと血の気が引いて
不覚にも涙があふれ出してしまった。

「せっかく五体満足で産んでもらったのに
 親になんていえばいいんだろう…」

彼女も号泣した。

あとで聞いた話だけど
そのとき「あたし…死ぬんだ」と
真っ先に思ったらしい。

その日からあたしのお節介は始まった。

「無理してない?」
「ちゃんとわがままいってる?」
「今度の検査、ついていこうか?」

しつこいくらいにつきまとうあたしに
彼女はきっぱりとこういったのだ。

「お願い…ふつうにしてて」

強がりでもいいんだ、でないと潰れてしまうから…と。

彼女の「覚悟」にも似たその想いに
あたしはとんでもないことを言い放ったのだった。

「その気持ちはわかるけど心配で居ても立ってもいられない
 そんなまわりの人の気持ちもわかってくれなきゃ!」

ああ、、今ならわかる。

エゴだなぁ…。いちばん苦しいのはいったい誰なんだよ(T_T)
必死に平静を取り戻そうとしてるのに
やさしさとはいとも簡単に人を弱くしてしまうんだ。

結局彼女はステージ1の乳がんで
乳房は温存する内視鏡での手術ですんだ。

その後の治療も順調で
でも少しいびつになった胸を気にしてる。
それでもあたしたちはふつうに温泉にいく。

うん、ふつうに。

あたしも術後は大きな傷がおなかに残る。
その代わりきっと健康な身体がそこにある。

やさしさとは言葉でも物でもなくて
ただふつうに寄り添ってることなんだと学んだ。

そんな彼女に…
あたしがこれから挑む病気のことは
まだ
伝えてない。


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