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朝帰り女の繊細さは昨日を生きる

衝撃を受けた曲。吉澤嘉代子さんの『残ってる』。

「繊細さ」をテーマに書いているこのnoteですが、男の繊細さと女の繊細さは違うんですね。

まだ あなたが残ってる
からだの奥に残ってる
ここも ここも どこかしこも
あなただらけ
でも 忙しい朝が 連れていっちゃうの
いかないで いかないで いかないで いかないで
私まだ 昨日を生きていたい

大好きな人とはじめて一線を越えた翌朝に、始発で家に帰る女の子」の心情を描いたと思われるこの歌詞。

「繊細ボーイ」を自認する私ですが、「私まだ昨日を生きていたい」と言うほど深く余韻に浸った記憶はありません(そんなこと言ってたらやばい)。

「ことが終わったその後が大事」ってよく言いますよね。すっと切り替えたい男と、余韻に浸りたい女。その感覚の違いで起こるすれ違い。

頭ではわかっていたつもりだったんですが、この曲を聴いて、はじめてその意味の輪郭にすこしだけ触れられた気がします

「誰がが煙草を消したけれど 私の火はのろしをあげて 燃えつづく」なんて翌朝になっても言ってる子が、終わって5秒後に「ちょっとシャワー浴びてくるわ」って言われて、ぽつんとひとり取り残されてしまったらーー

もし自分がその子だったら、シーツにぐるぐる巻きになって枕に顔をうずめて「ゔーーぅぅぅ」ってわけわかんない声と感情を押し殺しながら足をバタバタさせてさびしさをまぎらすと思います。

もしくは仰向けになって、まばたきもせず身動きもせず、天井と自分の間にあるなにもない空間をひたすら見つめ続けるか(こわい)。

ほんとうにこうなってよかったんだろうかーー

私がひとりで舞い上がってるだけなんじゃないかーー

ほんとうに彼は私のことを愛してくれてるんだろうかーー

男は欲に突き動かされやすいだけに、そんなふうに不安になってしまうかもしれません。

ほんとうに彼女のことが好きだったとしても、男がその「余韻」をないがしろにしてしまうがために、幸せなはずのその時間にせつなさやむなしさが入り混じってしまうんですよね、きっと。女性の気持ちは想像するしかないですけど。

この曲を聴いて、主人公の女の子が無性に愛らしく感じました。季節にも「あなた」にも置いていかれそうな、その不器用さと繊細さ。

まだ 耳に残ってる
ざらざらした声
ずっとずっと ちかくで 聞いてみたかったんだ

「こんなにも想ってくれてるのに、なんでもっと大切にしてあげないんだ」って、そのざらざらした声の男に言いたくなりますが、それは第三者だから言えること。自分だって彼女をそんな切ない気持ちにさせてるかもしれないんですよね。ていうかきっとさせてる。

繊細な男に足りないのは「おおらかさ」で、繊細な女に足りないのは「大胆さ」です。

自分の基準とは違う他人を許容できず、おおらかさに欠けるのが男の繊細さ。細やかであるがゆえに、大胆に前に進んでいくことができないのが女の繊細さ。

「繊細」の種類が違うから、繊細な男であっても、女性の繊細さを汲み取るのは難しいんですよね。

ぼくのなかでこの主人公は、彼の目にかかりそうな前髪や、ワイシャツのしわや、靴ひもの半分くずれた蝶結びにさえもときめいてしまうほど、彼のすべてを丁寧に愛している「繊細な」女の子です。

だから夏の終わりの寒々しさにも、朝にはいなくなってしまう「あなた」にも遅れをとってしまう。

そんな繊細さを置いてけぼりにしないで、ひとつひとつ一緒にすくい上げていけるような「繊細な」男になりたいものです。

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