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エイプリルフールの由来

エイプリルフールってなんで嘘をついても良い日になったんだろう、と思って調べてみたら、アイルランドに伝わるこんなお話が由来になっていました。

アブリルは9歳。7歳の妹のメイと一緒に、アイルランドの小さな村で暮らしていました。窓から見える海は揺れるたびにキラキラと光り、家の周りには太陽の欠片を散りばめたような菜の花畑が広がっています。

3年前に国一体に大飢饉が起こり、未曾有の食糧難に陥りました。アブリルの両親は家族4人分の食糧を賄いきれず、幼い娘たちを優先して食べさせた結果亡くなってしまいました。現在は幼い子どもふたりで、村の人たちに助けてもらいながらなんとか暮らしています。

ある4月のこと。

「おねえちゃん、おなかへったよー」

「もうちょっと我慢してね。もうすぐお隣のジュノおじさんがお店で余ったパンを持って来てくれるから」

「ねーなんで他の子たちは好きな時に好きなだけごはんを食べれるのに、わたしたちはがまんしなきゃいけないの?」

「それはね、我慢をしてると良いことがあるからだよ。世の中には良いこともあれば悪いこともあるんだってお父さんが言ってた。晴れの日はうれしいけど、毎日毎日晴れてたら外できれいに咲いてるお花も枯れちゃうでしょ?だからときどき雨の日が必要なんだよ」

「ふーん。そうなんだー。でもやっぱりおなかへったよー」

「そんなこと言っても食べるものなんてないし…(グー)」

「なんだー、おねえちゃんもおなかへってるんだ!(グー)」

「へへ。一緒だね。じゃあおねえちゃんが菜の花でブーケをつくってあげるからちょっと待っててね!お母さんが菜の花にお願いごとをすると叶うって言ってたし、きっと遊んでたらお腹すいてるのも忘れるよ!」

「……うん!」

両手いっぱいに菜の花を抱えてアブリルが戻って来ました。

「メイ、ただいまー!」

メイの姿がありません。

「あれ、メイー?メイー!」

キッチンにも、クローゼットの中にも、ベッドの下にも見当たりません。

「どこに行ったんだろう……」

そのとき――。

「泥棒だーーー!!!」

隣のお店から、ジュノおじさんの怒鳴り声が聞こえました。と、同時にお店で売っているはずのミートパイを抱えたメイが、泣きながら家に走り込んで来ました。

「……メイ??」

「はい……これ……おねえちゃんの。……おなか、へってるでしょ?」

「ばか!人のものを取っちゃダメっていつもお母さんに言われてたでしょ!」

「だって……おねえちゃんかなしそうだったんだもん……よろこんでほしかっただけだもん……」

そう言ってしくしく泣くメイを見たら、アブリルはそれ以上怒れなくなってしまいました。

「……うん、ありがとね。でも、これ、どうしよう……」

そうこうしているうちに、ジュノおじさんがやって来てしまいました。

「アブリルいるかー?うちの店に泥棒が――」

おじさんの目の前にあるテーブルには、ぐちゃぐちゃになったミートパイが置いてありました。

「あ!お前らの仕業だったのか!!!良い子だと思って世話してやってたのに、泥棒だったとは!!……この村から出て行け!」

「違うの!おじさん!メイは悪くないの!」

「……なんだと?」

「わたしがひとりでやったの!だから……わたしが出て行くから!メイはおじさんが、おじさんが育ててあげて!」

「……」

アブリルもメイもわんわん泣いています。どうも様子がおかしいと思ったジュノおじさん。よく見ると、メイの襟元にはおじさん特製のミートソースがぽつぽつと付いていました。

「(そういうことか――)」

「……わかったわかった。今回は許してやるよ。」

「……え!?ゆるしてもらえるの??」

「ああ。ただし、人のものを取るのは良くないことだから、もう絶対するなよ!」

「うん!わかった!」

「じゃあ、新しいミートパイを持って来てやるから、ちょっと待ってろ」


「ほら、待たせたな。お腹いっぱい食べろ!」

「わーい!いただきまーす!」

「あー、美味しかった!おじさんごちそうさま!おなかいっぱいだー」

ほんとうに幸せそうにおなかをぽんぽん叩くふたりを見て、おじさんも嬉しくなってしまいました。

「おじさん、おわびとお礼にこれ、あげるね!」

見ると、菜の花でつくったブーケでした。

「お母さんが菜の花にお願いごとをすると叶うって言ってたけど、ほんとだった!『メイと一緒におなかいっぱいごはんを食べたいです』ってお願いしたんだ!お願いごと、叶えてくれてありがとう!だからおじさんもこれでお願いごと叶えてね!」

「……ああ」

それ以来、おじさんは毎年4月のその日だけ、お客さんに商品と一緒に菜の花をプレゼントするようになりました。常連客がその訳を聞くと、おじさんはこう言いました。

「菜の花には願いを叶える力と、『嘘をついてごめんなさい』という意味があると近所の子どもたちから教わりました。だからいつも『うちが世界一美味いパン屋だ』なんて嘘をついてごめんなさいという意味と、『それでもやっぱり世界一美味しいパンを焼けるようになって、お客さんを喜ばせたい』という願いを込めているんです。」

その噂はおじさんのパンとともにアイルランドから世界中に広まり、いつしかその日が「1年に1度だけ、嘘をついても許される日」になりました。

アイルランドでは、嘘をついたらその相手に菜の花のブーケを渡す風習が、いまでも残っているそうです。



っていう嘘。

タケダノリヒロ(@NoReHero)

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