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ノルディックイノベーションによる持続可能な#水産・漁業技術 Nordic Innovation in Sustainable #Seafoodtech

ノルディックイノベーションハウス東京(NIH-TYO)は12月16日、北欧の水産・漁業関連技術をテーマにしたセミナーを開催しました。NIH-TYOにとって初の日本語によるセミナーで、駐日ノルウェー大使館とオンライン会場の両方で参加可能なハイブリット方式で実施しました。

北欧諸国と日本は、海に囲まれた国として共通項があります。何世紀もの間、海洋資源だけでなく、文化形成や国際関係の発展など、生活のあらゆる面で海の影響と恩恵を受けてきました。今日発生している気候変動や、自然保護の観点からの持続可能性の重要性の声が高まる中、今後海洋という人間が共有する自然遺産にどのように接していけばいいのかについて、意見や経験の交換の場として、本セミナーを企画しました。

北欧諸国には持続可能な水産資源の利用や海洋開発における先駆的国家が揃っています。北欧の最新の海洋経済のトレンドや技術開発など、技術とイノベーションの観点から水産・漁業を考えます。

<イベント概要>

開催にあたり、まずは駐日ノルウェー大使、インガ M. W. ニーハマルより挨拶がありました。

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「日本とノルウェーは地理的に離れていても、海洋という大切な資源を共有しています。現在、世界の海洋は乱獲、海洋汚染、気候変動など、複数の人為的な問題に直面しています。綺麗な海は私たちの未来に不可欠です。今後も海洋保護、海洋国家として海洋資産を確保する必要がありますが、これは世界的なチャレンジでもあります。日本と北欧諸国が協力し、経験を共有してお互いから学ぶことが必須です。本セミナーが意見交換の素晴らしい機会になることを祈っています」

続いて、NIH-TYOコミュニティディレクター、ニコラス・カルヴォネンよNIH-TYOの紹介をしました。

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「NIH-TYOは北欧5ヶ国が連携して行なっている政府系プロジェクト。北欧のベストを世界へ、というミッションを元に、技術系企業の海外進出をサポートしています。シリコンバレー、NY、香港、シンガポールに続き、今年5月に東京がオープンし、今までピッチイベントなどを行ってきました。
本日は時間の都合上3カ国からのみの発表ですが、漁業イノベーションはフィンランドとスウェーデンにとっても大事。例えばスウェーデンでは養殖が盛んで、現在建設が進んでいる最新の養殖場が2023年に稼働すると、ヨーロッパ最大の養殖場となリます。フィンランドでは特に海産物のバリューチェーン全体における持続可能性が非常に重要視されていて、消費者への可視化が進んでいます」

さていよいよ本題へ。まずは日本の漁業を取り巻く現状について、2名の専門家より発表をいただきました:

一般社団法人 大日本水産会 魚食普及推進センター センター長 
川越 哲郎氏 日本の水産物マーケットの現状

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「世界の水産物消費は増加しているが日本では2001年来右肩下がり。漁獲は、日本で昔から季節がくると食べるものを楽しみにしていた主要魚種が不漁。25年以上、消費の4割が輸入。このような状況下でイノベーションとも言えるのが、ノルウェーのアトランティックサーモンが日本に作り上げた生食鮭(=サーモン)のマーケット。以前は日本で鮭と言えば銀ジャケ、つまり加熱して食べるものだったのが、今では寿司ネタとしてサーモンという言葉も一般的になりました」


日本農林水産省 水産庁増殖推進部 参事官 越智洋介氏 
日本の水産業 その特徴と技術開発の方向性

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「日本の水産業の特徴として、多様な魚種、多彩な漁法であることが挙げられます。魚種組成は、例えばアイスランドでは5種、ノルウェーでは8種が漁獲量全体の80%を占めるのに対し、日本では16種で80%を構成。このように多様な魚種を効率よく捕獲するために、多彩な漁法が行われています」

「現在漁業を取り巻く問題としては、1)生産量の減少、2)漁業者数の減少、3)気候変動の影響、があります。政策としては資源の増大と生産性の向上を目指し、2019年より水産新技術の現場実装推進プログラムを開始しています。例えば定置網漁業に関しては、定置であるが故のリスクに対応するため、網の質の向上や選択的な漁業ができるようにするための技術開発に取り組んでいます。またスマート水産業の推進では、資源の持続的利用と、成長産業化を目指し、ビッグデータの活用、普及を推進しています」

次に、北欧の水産・漁業技術について、ノルウェー、アイスランド、デンマークの国別に発表をしました。

駐日ノルウェー大使館通商技術部 ベルグ・ミカール

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「ノルウェーのシーフードは食品生産のためのグリーンなソルーション。絶え間なく技術開発にも取り組んでいます。主な漁法は延縄、トロール、沿岸漁業、捕獲類は白身魚、遠洋漁、甲殻類。ノルウェーの養殖業は産業経済の中で4番目の価値をもち、総雇用人数も58,000人。ノルウェーの技術とイノベーションの事例は、養殖場での魚と海洋への負担を軽減するためのモニタリング装置、世界初の電気船舶など多数あります。The Explorer(ノルウェーのグリーンテックソルーションを紹介するサイト)に掲載していますので、ぜひご覧ください」

駐日アイスランド大使館商務・広報担当 保坂亮介

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「アイスランドにとって漁業は大変大きな経済的支柱で、2018年度では経済収支の約40%を占めました。80年代より、各魚種の捕獲可能数の管理がTAC(Total Allowable Catch)で徹底しています。最近では一匹の魚を無駄なく利用して副産物を生産するのもトレンド。漁業にまつわる技術も発展。投資も、魚介可能技術、漁船技術の両方へ積極的に行なわれています。代表的な企業に、marel社(加工機械)、saeplast(クーラーボックス)など、Hampidjan(日本ではaCOAST株式会社)、marel(船上での加工)、Navis社(船デザインを変革することで効率向上)などがあります。沿岸部での雇用創出により地方活性の事例もあります。2021年9月にはアイスランドで漁業関連の展示会がありますので、出展のご興味がありましたらお問い合わせください」

駐日デンマーク大使館 商務部上席商務官(食品・農業担当)松本美保

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「デンマークにとってもノルウェーやアイスランド同様、水産業は伝統的で重要な産業です。北部、西部の沿岸部を中心に約16,000人のフルタイム労働者の雇用を創出しています。主な水揚げ魚種は、たら、ヒラメ、ナマズ、サーモン、ニシン、マグロ、うなぎなどです」
「イノベーションの事例としては、養豚場用のヒトデ養殖、サーモンの全自動パッケージ化、魚の骨をX線で自動感知する技術、魚を余すことなく利用する技術などがあります。水産業のイノベーションをリードする主な企業や団体には、Uni-Food Technic, Cabinplant, Landia, Kroma, Intechなどがあります」

最後に、質疑応答の時間があり活発な意見交換が行われました。

Q:
日本と北欧のコラボレーションを強化させる方策は?
A:
保坂氏 “雇用の面でコラボレーションできたらより良いのではないか。”
越智氏 ”市場の可能性として、北欧へのリーチが必要”。
川越氏 “まずはお互いのことをよく知るためにお互いの魚を美味しくいただくことから始める”。
ベルグ “意見、経験の交換が重要。今回がきっかけでNIH-TYOがプラットフォームになって情報シェアを活発化させる場ができることが素晴らしい。またSDGsは共通目標なので、その達成に向けて協力すること”。

Q:
北欧では水産業は人気職種と聞いています。日本が参考にできるヒントは?
A:
保坂氏 “国家収支の40%を占めることからもわかるように、漁業従事者も多く、個人ではなく企業に所属して漁業に関わっているので、雇用と収入が安定しているし人気もある。若者、遠方の人も働きやすい。年収1000万円を超える人もいる。Ocean Clusterという、漁業関連のイノベーションのインキュベーション組織があり、そこがスタートアップの間口になっている。” 
ベルグ “ノルウェーでは漁業はやりがいのある職業として認識されている。自分の育った場所で就職できる点も魅力的と感じられている。チャレンジしがいのある職業として教育もされており、ソフトウェアのエンジニアリング、ハイテク船の操縦など、体と頭の両方を使える点が魅力。収入もよく、昔ほど危険な作業もなく、技術面での仕事も多数。多くのスタートアップも生まれており、大きな産業に向けて若者がチャレンジしている。”

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Q:
新しい技術を開発する際に、日本では補助金に頼るのが当たり前になっている。北欧では?
A:
ベルグ“漁業従事者には補助金はないと思う。ただし、ハイブリッド船、電力船など新技術をサポートシステムはある。開発者はGreen Solution、SDGsなどがモチベーションになっている。
保坂“ノルウェー同様、漁をされている人への特別な補助金はないが、イノベーション技術への投資はOcean Clusterを通じて行なっている。”

Q:
日本と北欧にとって、持続可能な水産、漁業を実現するにあたって最大の課題は?
A:
保坂氏 “環境問題。年々氷河が溶けているせいでTACが影響を受けており、例えばししゃもがこの1−2年日本に輸出できていない。環境保全、SDGsを達成できる技術が今後ますます大事。”
越智氏 “やはり環境問題。資源の持続的利用、カーボンニュートラル、SDGs達成など、より本腰を入れて日本として取り組んでいく。”
川越氏 “お互いを知ること”。
ベルグ氏 “環境問題への取り組み”。


今回は初めての水産技術のセミナーとして、大変実り多い情報交換の場を作ることができたと考えています。今後もシリーズとして開催していきたいと考えていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

イベント録画はこちらから↓

最後までお読みいただきありがとうございました!

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