速水健郎のこれはニュースではない『サーストン・ムーアのステイタスはなぜ落ちないのか?』を聴いて

はい、きたー、これは神回ー。ってな感じで私は興奮しましたわ。

フードコートの話から入ったのは通常運転で、イベント告知をしつつもラーメン屋の話をさりげなくする。

ふーん(ラーメンあまり興味ない)、と思いながら、ああ、そうだ。自分が今暮らす地方のフードコートは中々悲惨で、閑散としているよなあと思い浮かべつつ、実は最近、行動療法(外出して読書する)の場所の中にそこも選択のひとつかなあと思い始めたのは、イベントとなどでの速水さんがフードコートを利用してるって話が、頭の片隅にあったんだって、思い出した。

ただ、私の場合は1、2時間の話ではないからね。図書館とは違って、他にも移動を考えねばなあ…。

あ、ごめん、話が逸れた。

いや、何が神回かって、タイトルに「サーストン・ムーア」の名があるではないですか。

ソニック・ユースがお好きか、って?

いえ、特に。

グランジど真ん中世代のグランジ野郎(チェック柄のネルシャツね)でしたけど、ソニック・ユースがフックアップした側面もある、ニルヴァーナにクソほど影響受けましたがね。人生おかしくなったから。それくらい影響受けてます。

じゃあ、なんで?神回なのって?

いやさ、速水さんってあんまりロックのイメージないし、確かタナソウさんのサインポッドキャストの「ロックTシャツ」の回で、ロックはそんなに通ってないって言ってたような気がしたんだよねえ。記憶ちがいかしら…。

で、サーストン・ムーアってのはソニック・ユースというバンドの中心人物。まあちょっと実験的でノイジーでそれでいてインテリジェンス・パンクって感じ。インテリジェンス・パンクなんて言葉はないよ、勝手に作ってみた。とにかく、そんな音楽性が俺には分からん、ムズイ!って感じだったんです。当時はね。

でも、あっしの大好きなカート・コバーンはリスペクトしてる感じもあるから、ほら、オレンジのなんかさ、布人形みたいなジャケットのやつ、友達から借りて聴いてみたけどさ、やっぱり、よう分からん。でも、「まあ、いいんじゃない」って感じで返したよ。キム・ゴードンなんて、クソカッコいいと思ったよ、見た感じが(すごい雑)。でも、あの時の私には、あの音楽性の良さがよう分からんかった。

負けた感じがしたっす。敵わねえって…。

だから、ニルヴァーナとかパール・ジャムが好きだった私からすると、ソニック・ユースが好きと言う人は、ロック好きのパイセン、というか「一歩先に行ってる音楽オタク」って感じだった。

そこで速水さんがそのソニック・ユースの中心とも言えるサーストン・ムーアの名を冠して、「(彼の)ステイタスはなぜ落ちないか」と来たわけだよ、君。ええ?ステイタスって??

ははーん?ほおーん?「ステイタス」ねえ。

1 社会的地位。 また、それを表すもの。
2 コンピューターやコンピューターネットワークなどで、動作中のハード ウエアやソフトウエアの状態や状況。
3 コンピューターゲーム、とくにオンラインゲームやロールプレーイングゲームに登場するキャラクターの状態。

適当なネットのコピペ

ほほーん、音楽批評な訳ではないのは分かってる。だって速水健郎ですよ、あなた。どんな変化球で来るのか、ってな感じでのこちらも臨みますわね。
私のコンプレックスをどう、突いてくるんじゃい!ってなもんでさあ。
しかも、私のカルチャー要素ど真ん中、「ロック」で尚且つ、一番人生で影響を受けた「グランジ」の超パイセンとも言える、ソニック・ユースですよ。

かなり身構えつつも、ワクワクしながら聴きましたわ。

でね、本編始まって、本の紹介が始まるわね。

デイヴィッド・マークスの『STATUS AND CULTURE ――文化をかたちづくる〈ステイタス〉の力学 感性・慣習・流行はいかに生まれるか?』

ふーん、なんや小難しそうな本やなと、で、いきなりちょっと肩透かし。まあええわ、と聴き続けますわね。速水さんの語り口は小難しいものではなく、軽妙に話してくれるから、そちらを聴いて欲しいけど、一旦、内容はこんな感じみたい。

かつてビートルズの〈マッシュルームカット〉と呼ばれた長く、だらしない髪型は各世代から反発を招き、社会を分断するほどの騒動を全世界に巻き起こした。
≪中略≫
本書で解き明かしていくステイタスと文化の原則は、捉えがたいものとされてきたセンスや真正性、アイデンティティ、階級、サブカルチャー、アート、ファッション、流行、スタイル、リバイバルといった概念や現象を明確にし、われわれを取り巻く世界を分析する際に極めて役に立つ。
歴史的事例と数々の分野の学問の叡智を統合する文化の普遍理論書。
                      筑摩書房HP 紹介文より

https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480836526/

まあ、見ての通り、「カルチャー中毒おじさん」なる私は、更なる防御の姿勢を取りながら聴き続ける。崩さない、崩したら、負ける。気張る。

いやだ、負けたくない。がんばれ、俺。

「ステイタス」「ステイタス・シンボル」「シグナリング」などの武田砂鉄的「なんとなくいやなかんじ」な言葉を並べて、速水さんは本の肝となるポイントを説明してくる。まあ、「ステイタス」並びに「ステイタス・シンボル」は、まあなんとなく、分かる。

でも、うわーこわいこわい。何、速水さん言ってくるの?

それで「シグナリング」ですよ、皆さん。
この言葉、自分のステイタスを見せびらかす的(かなり誇張してます。発信してるって意味みたいです)なものってことのようです。
ほほーん…。

みなさーん、聞こえてますか?おーい。
身に覚え、ありますよねー?
私はありまーす。

ははーん、どうやら分かってきた。「サーストン・ムーアのステイタスはなぜ落ちないのか?」ね。

具体的に説明しますわ。

例えば、あなた様がロック好きを自称する人と話す機会があったとします。で、あなたが相手に「舐められたくない」と思ってるとしましょう。
「何が好き」かによってステイタスは変りますからね。

そこで「シグナリング」ですわ。
具体的なシグナリングとして、バンドTシャツを着ましょう。
そうですね、敢えて相手をコンフューズさせましょうか。ここは「ストーン・ローゼス」のTシャツ(レモンがいいです)を着ましょう。いや、これはありきたりだ。速水的ではない。うん、思い切って「BOØWY」のTシャツを着ましょう。あるかな、分からんけど。あと「BOOWY」ではないですからね、手書きで書くなら「Ø」斜め線忘れずに。絶対ね。

そうして、相手はまあ、舐めます。間違いなく。
そして、自然と何が好き?的な会話になりますわね。あるいは「ローゼス好きなの」「ボーイが好きなの?」と先手を打ってくるかもしれません。
そこで、あなたは一拍おいて、こう言いましょう。

「うん、これも好きだよ。でもなんだかんだ言って、ソニック・ユースが好きかな。特にサーストン・ムーアのソロが好き」

あと、「キム・ゴードンの自伝は買って読んだ。あれは最高」も加わると無敵。とんでも戦士ムテキング、ですわ。

そこにさらに、そうだな、ボアダムスも加えるといいかも。いや、ダイナソーjrとかかな。その辺は適当にググりな。あ、メルヴィンズなんかいいかも。個人的にはバットホール・サーファーズがイイと思うよ(もはやグランジではないけどな)。

そんな感じですわ。違う?違ったらごめん。

さらに「シグナリング」には「キャシェ(cachet)」という手法があるそうですねん。ええー、もう無理無理、とか思いながら、実はずっとニヤニヤしながら聴いてました。

オモローって。

そこから、ベックの話になっていくんだけど、これは結構有名というか私は知ってました。ちなみに川崎チネチッタ・初来日公演行ってます。しかもロッキン・オンにハガキ送ってね、当たったんです。へへ。自慢。
それから、番組内で比較されるオアシス(再結成するね!大丈夫かよ、まだ油断するな、みんな)だけど、私はどちらも同じくらい大好きです。そんな人間もいまっせ。

面白いのは速水さん、「サーストン・ムーアの法則」をはなし始めるんだけど(しかもBGM使ってる!)、3つの法則ね。ちょっと笑いました。面白い。
第1・第2の法則はまあ、うーん、かもねえぐらい。もう今は通用しないかな。ロックがアンダーグラウンドになり過ぎた。それも面白いけど。

第3の法則はその通りかも…。

でも、そもそも若い人は知らないだろうな、サーストン・ムーア。

あ、ごめんごめん、ロック好きなもんで、そこばっかり取り上げたんだけど、他にも色々と語ってますから、速水さん。面白いから是非、聴いてみてください。

で、最後にキャシェに因んで速水さんが東浩紀の名を出すんだけど(しかも冒頭のラーメン話、ここで繋がる)ね。びっくりしたの。

って、つぶやいた後の帰り道(ツイットの時間見て!)で速水さんのボッドキャストを聴いてたもんで、まさかそこで繋がるの!って一人で興奮してもうたわ。二人の関係性なんて知らなかったからさ。

ということで、まあ、何だか面白いこともありますわね。面白いのは、私だけか。すんません。

ちなみに、日本でいえばサーストン・ムーア的な人って誰だろうって思ったんだけど、直ぐに浮かんだのは、町田康。


では、生き恥さらす創作短歌をば。

センスが良くなりたいわたしは「センスの哲学」を手に入れても読めぬ

おい、それは俺が先に欲しいと思ってたと何度も喉元過ぎて

いや、実はもう俺もその子が好きだと言えないよ「絶対に」の想いとは

いっけねえ 知らないって言おうと思ったのに 知ってるって言った間


最後まで読んでくれてありがとうございました。



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