”マスク義務化”解除後のテキサス

テキサスでは今年3月10日、マスク着用の義務化が解除されました。 これに対し、「大きな間違え」「時期尚早」というのがバイデン大統領、そしてファウチ博士をはじめとする大多数の意見でした。結果、どうだったかというというのが下記の図です。マスク着用の義務化やロックダウン等、コロナ対策に関して厳しい政策をとっているカリフォルニアやニューヨークと比べてみました。

この新規感染者のグラフを合わせてみるたのが下記の図です。カリフォルニアやニューヨークと比べ、マスク解除後から5月25日に向かってのグラフの変化は、カリフォルニアやニューヨクとほぼ同じです。（画像を透明化させ、貼り付けたのみですので、微妙なズレがあります。ご了承ください。また、データの提供元はニューヨークタイムズ、2020年6月20日時点のもの。）

「欧米はワクチンでコロナを押さえ込んでいる」「日本も欧米に習うべき」ということを度々聞きますが、テキサスはワクチンで押さえ込んだのでしょうか？

テキサスのワクチン接種率は下記の通りです。

　提供元：Our World in Data、最新更新：2021年6月19日

この数値をみると、テキサスにおける必要回数のワクチン接種が完了した割合というのは、ニューヨクやカリフォルニアに比べて高いわけではないのです。日本でワクチン・パスポートの話が出ているようですが、テキサスのアボット知事は、バイデン政権でワクチンパスポートの話が出た早い段階で、テキサス内でのワクチン・パスポートの禁止する声明を出しました。（正確にいうと、テキサス州の補助金を受けているような団体に対しての声明）ただ、ワクチンを打ちたい人には迅速な対応をという方針であったようです。

テキサスのマスク解除に対するその後の反応

アボット知事のこの政策は正しいのではないかという声は、4月初旬にはすでに出ていました。さらに、制限が解除された後のテキサスで、COVID-19の症例が減少している理由について尋ねられた、ファウチ博士は「よくわからない」と述べているーーということが、ネット上で少し炎上しているようでした。

これについてはファクトチェックが出ていたので、念のため紹介します。USA Todayのファクトチェッカーによると、ファウチ博士は、「よくわからない」といったのではなく、複数の要因が考えられるため、テキサスでCOVID-19の症例が減少している理由を「確信が持てなかった」と述べたに過ぎないとのことでした。先のファウチ博士への批判は「Missing context」という格付けで、「追加情報がないと誤解を招く」としていました。何かいろいろ説明されていますが、減少要因が分からないということに変わりはないように思います。

ただ、4月上旬時点で、「数週間で政策の評価をするのは、早すぎる」という意見は確かにそうだと思います。それで３ヶ月経った結果を調べてみたのが上記の数字になりますが、今のところ、カリフォルニアやニューヨークとの差異はありません。

実は感染爆発しても仕方ない事情＝移民政策の失敗

テキサスは同２州に比べ、感染者を減らすには不利な状況にあるといえます。メキシコ国境に位置するテキサス、爆増する不法移民問題のことをご存知ですか？長旅の間に感染している人も少なくないほか、爆増に対応しきれない滞在施設はすし詰め状態。そんな１つの州だけではとても対応しきれない状態になってからも、すでに数ヶ月経っています。不法入国する人にとっても、全く良いと言える環境ではありません。

もっと最悪なのは、不法入国者数というのは、あくまで捕まった人の数です。国境警備も対応しきれない状態ですので、この数値に含まれる多数の不法入国者が国境の都市から、ヒューストンやオースティン等の都市へ向かっているという話もあります。本来ならば、感染者が増えて不思議ではない状況にあったのです。

マスクやロックダウン、ワクチンは、感染減の要因になるか？

このような数字の推移をみると、テキサスに関しては、マスク着用やロックダウンの厳格な実施や、ワクチン接種率を無理やりあげることが、感染者を減らすことと関係がなさそうだということが言えるかと思います。これだけで、マスク着用はやめた方が良いと断言するのは少し乱暴な気がもしますが、そう断言する人がいるのは、先日公開されたファウチ博士のメール問題も関係してきます。

個人的な繋がりのある博士が出張前に、ファウチ博士にマスク着用の必要性について尋ねたメールがありました。これに対し、彼は「マスクは効果がない」とコメントしていたのです！アメリカでのマスク着用に対する拒絶反応は、日本人には理解できないものでしたから、当然、ファウチ博士の炎上は当然と言えば、当然です。

次回は、テキサン（テキサス州民）視点での考察「なぜ、マスク解除後のテキサスでも、感染者数は減ったのか？」をシェアさせていただきます。