自分が〝できること〟は、誰かに頼んでも良い。

誰かと一緒にビジネスや創作をする上でモットーにしている事があります。それは「自分が出来る事なら、誰かに頼んでも良い。」です。これ、普通は逆な気がしますよね。「自分が出来ない事だから、誰かに頼んでも良い。」が一般論で、それを美しく言い直すなら「凸凹を埋め合おう」的な。ぼくが描いてる「左ききのエレン」でも、エレンとさゆりの関係はまさしくコレだと思います。でも、これには全幅の信頼が必要。日本のデザインを開拓した田中一光は、あの三宅一生のポスターをデザインした時にプレゼンを一言もしなかったそうです。「これで」「分かりました」程度のやり取りで伝説のポスターは誕生した。とても好きなエピソードです。

でも、天才で無いぼくらは、なかなか天才と仕事をする事も無いので、そう理想通りにはいかないと思っています。「凸凹を埋め合おう」を美しく解釈し過ぎてしまうと、良いものが生まれない。

例えば「左ききのエレン」は、原作版という形でぼく自身も連載をした上で、作画のnifuniさんにお願いしています。自分でやってみれば、一流には敵わない所や、自分がやると非効率的な所などがよく分かります。自分が出来る事でも「もっと上手い人がいる」「もっと早い人がいる」と分かった上でパートナーを見つければ、ビジネスや作品をより良くできるはずです。

また、ぼくは元デザイナーなので作品周りのデザインとか作ろうと思えば作れますが、デザインが全然上手く無いので(上手かったら漫画家になってない)ざっとイメージを組んだ上で、より優れた一流のデザイナーにいつもご依頼しています。同じくPVとかも、Vコン(ざっくりイメージを繋いだコンテの映像版)を作ったりします。ぼくには自分の作品周りの創作物に具体的なイメージがあるので「大体こんな感じです」までは、自分で手を動かして作る事が多いです。

そもそも、一流の仕事というのは「だいたい95%から99.999%まで」だと思っています。誤解を恐れずに言えば95%くらいまでなら、イメージさえあれば作れると思っていて、だから器用な人がパワポでデザインのラフ作っても誰も怒っちゃいけないし、イメージさえあればプロには伝わるはずです。ぼくは最近、漫画を描くアプリでデザインのラフを作ったりします。プロのデザイナーさんに見せる用で。漫画のネームもそうですよね。ぼくの仕事は、割と最近はことごとく「95%」までを作る仕事です。

あと、自分が出来ない事を誰かに依頼すると、マジで工程が分からないから苦労が全然分からない。勘所も分からないし、喧嘩の元になる。とは言え、当たり前ですがぼくは出来る事より出来ない事の方が圧倒的に多いので、そういうシーンは多くあります。作品の映像化や舞台化もそうです。だから、そういう時になったら最初に触れた「全幅の信頼」を心がけています。とにかく信じる。その時、ぼくは必ず「ぼくの顔色は気にせず、思い切りやって下さい」と言います。これは「全幅の信頼」の意思表示でもあり、一方で「あなたの全力で、これを代表作にするつもりでやって下さい」という意味も含んでいます。ぼくの意向に沿わなくて良いので、とにかく良いものにしてくれれば良い。これは、さっきまでの「依頼」とは異なりますね。これは「挑戦状」みたいな話かも知れません。ドラマは、観た時に「チクショー、やられた!」と思いました。あれは痛快でした。

昨日発表した試みも「予算」も自分が出せるし「インタビュー」も自分が出来るし「メディア」も自分のnoteがあるし、とにかく全部自分で出来ると思って、やろうと決めました。そして「全部自分で出来るから、もっと良い人(メディア)があれば協力してほしい」と思っています。


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