虚構と現実の接点を増やしたい

漫画家のかっぴーです。日付が変わって本日13時に、左ききのエレン特別編を公開します。今朝それを納品して、やっと息ができた気持ちです。

突然ですが、最近「左ききのエレン」描くのがとても楽しくて、第一部を描いていた当時よりやりたい事に近づいてる気がしてます。リメイク版でサントリー編を、原作版でグッドパッチ編、朝日新聞編を、そしてクラウドファンディングで今後の企業コラボも確定しています。もちろん、本日公開予定の特別編もそうです。

エレンの感想には、あまり無いのですが(無くはない)漫画に実際の企業が登場すると冷めてしまうケースもあります。幸い、エレン読者の性質か、あるいは現実世界を舞台にしているからか分かりませんが、受け入れられやすい傾向があると感じています。ぼく自身がどう思っているかと言うと、実在の企業や商品を登場させる事、そして現実にあった出来事を物語に組み込む事は、出来るだけ虚構と現実の接点を増やしたいという意味で歓迎しています。

ぼくが企業コラボ漫画を描く時に守っているマイルールがありまして、それは「必ず正史にする」です。本編と全然関係なく、コラボが終わった時に無かった事になるのは確かに冷めると思うので。

一方で「コラボ漫画はどうしても受け付けない」という方も中には居るかも知れないので、正史だけど読み飛ばしても話は繋がる様には描いています。

余談も余談ですが、ドラマ主題歌の「女神」をリメイク版で登場させた時に「どうして2005年のニューヨークにポルカが居るんだ」と思った方も多かったと思います。しかも原作では別の曲だったので余計に思ったかも。あれがどういう意味だったのか説明しますと、実はヤングマガジンに掲載した番外編が重要になっています。その番外編は、朝倉光一の部下が光一から聞いた話を元に、左ききのエレンのドラマ化を企画するというメタな展開でした。つまり、リメイク版と原作版で大きく違うのは「左ききのエレンがドラマ化された後に描いている」という点です。

これが、さっき言った「現実にあった出来事を物語に組み込む」という姿勢です。原作版第二部でも、ルーシーがドラマ化について触れる番外編を描きました。つまり、物語の世界でもエレンのドラマが放送された事実が正史になっているという表明です。で、ニューヨーク編は老いたルーシーが独白する荒唐無稽な脚色ありありの冒険譚として位置付けています。つまり「2005年のニューヨークにポルカがいた理由」の結論は「老いたルーシーのジョークだった」です。誰も伝わんないと思いますが、少なくとも原作者はそう思ってました。

この姿勢からして、現実世界の大きな転換点は無視できません。なので、第一部は「震災以前」までを時代劇を描こうと思っていました。まだ分かりませんが、第二部HYPEはもしかすると「コロナ以前」という区切りになるのかも知れません。

まだ話題の途中ですが、長くなったので残りは月額マガジンに入れます。

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