見出し画像

インターナショナルスクールに入れる覚悟はありますか?

以前、都内のインターナショナルスクールで秘書として働いていたことがあるので、当時から連絡を取っている元同僚や卒業生に「何故、息子を日本の学校に入れたのか」を聞かれた。

インターナショナルスクールで働いていたからこそ、日本の学校にしようと決めた要因がいくつかあった。

「英語が話せる=国際人」は勘違い。英語が話せることは、「能力」としてプラスになるけど、必ずしも「国際人」として急に目覚めるわけではない。英語を話す相手として白人だけではない、黒人、ラテン系、ユダヤ系、アジア系、サモア系、たくさんいる。英語が母国語の国には、日本では考えられないくらい国や地域からの移民がいる。移民は英語が第2外国語の人が多いので、みんな訛りがある。(私がいつも聞き取りに苦労するのは、インド系の英語だ。)宗教や政治の話は学校のディベートの授業ならまとめ役の人がいるから場が収まるけど、プライベートでは口論の原因にもなってしまう可能性もある。国際人=全く異なる文化や習慣を受け入れ、敬意をずっと示せる人だと思う。英語だけ話せるだけでなく、多文化を受け入れる器になることが求められますよ。

お父さん、お母さん、ご自宅で「日本語教育」のサポートはずっとできますか?宇多田ヒカルがデビューした当時、バイリンガル教育がそれまで以上に注目された。英語と日本語が両方わかってすごい、かっこいい。確かに日本人のルックスをしている子が、ペラペラ英語を話している姿は人目をひく。しかしながら英語と同じくらいに、日本語をきちんと理解し、大人が想像するくらいに日本の文化やマナーに精通している子供はほとんどいない。我が子をバイリンガルにしたいという父兄でご自身が英語は苦手という人たちは、「インターナショナルスクールに我が子を入れればそれが自然と出来る」と思っている。現実として家庭では日本語を話し、日本の習慣や文化を子供にきちんと伝えることが大事になる。事あるごとに、親が日本語教育のフォローをする必要がある。わたしがインターナショナルスクールに勤務していた時、ほぼ毎日生徒と話す機会があった。帰国子女の子に、日本語のことわざ、例として「時は金なり」を言ってもポカンとしてる。彼らにわかるように英語でTime is moneyと言うと理解する。こんな感じなので、我が子と日本語で「普通に」コミュニケーションを取りたいなら、親の努力も必要となる。おじいちゃんおばあちゃんと、日本語でスムーズにコミュニケーションをさせたいなら、なおさらですよ。

先生とのコミュニケーションは必須。これも避けられない。「インターナショナルスクールには通訳できる人がいるんでしょ?」と質問されそうだけど、彼らは「通訳」としてインターナショナルスクールでは働いていません。教員なり職員として働いているので、優先事項は各々の担当業務なのだ。頻繁に通訳を頼もうものなら「私の担当業務ではありません。」とお断りされることも当然ある。担任とコミュニケーションを取る必要がある時は、ご自身で通訳を調達する必要がありますよ。それに日本人の「言わなくてもわかるでしょ」という考えは、外国人の先生には通じません。英語圏の人たちは小さい頃から「自分の意見を言う」ことが当たり前という環境で育っている。「質問内容を明確にする、先生からも家庭での様子に関する質問や、要望を聞かれる」ことを前提に、コミュニケーションを取るほうが良いでしょう。

高校卒業後の進路。インターナショナルスクールは高校卒業までの期間なので、卒業後の進路も当然考えなくてはいけない。卒業後ほとんどの生徒が、アメリカを始めとする海外の大学に進学する。「あら学力があればいいんでしょ」と思っていると、思わぬ盲点がある。アメリカの大学に進学する場合は、アメリカ国籍もしくは永住権資格者以外の生徒は留学生扱いなので、学費がとんでもない金額なのだ。いくら高校時代の成績が良くても、日本国籍だけしかないなら留学生枠の学費を大学に納めなくてはいけない。そして留学生ビザを取る際に、親の残高証明書なるものを提出して大学に「ちゃんと学費を4年間払えます」という証明書類を提出しなくてはいけない。晴れて入学できても、長期の休みの度に日本に帰ってくる時の航空チケットや諸々の経費も親はサポートしなくてはいけない。都内でもお高い物件が買える金額を想像してください。

他にも諸々あるけど、こういった点を考えて「わたしには無理だな」と思ったので、息子は日本の公立校に入れている。ずっと日本の学校に行っていた母としては、息子の担任とのコミュニケーションもスムーズだし、「はい、これからママ先生が算数と国語の宿題を教えまーす」なんて言いながら宿題を手伝っていた。

それに親の希望と子供の性格・性質が噛み合わずに、結局は日本の学校に編入した家庭を見てきているのも事実だ。

我が子がこれから英語に興味が出てくるかなんて、全くわからない。何よりも楽しく通学してほしい。友達と沢山思い出を作ってほしい。英語に興味が出てきたら、わたしがサポートすればいいし、英語教育に力を入れている学校への進学を考えればいい。海外の友人・知人のところにホームステイをお願いすることも考えている。

こういった理由から、我が子をインターナショナルスクールに入れなかった。今のところ親も子も「これで良かった」、そう思っている。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?