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蒼に染る如月、横浜で。

indigo la End 武道館公演から半年も経たずして、
夏夜のマジックのMV撮影地でもある横浜でのワンマン。

indigo la End 蒼き花束 vol.3
in パシフィコ横浜

ちょうどその日には、終演から間もなくして小雨の予報。
そして私自身、19年目を迎えて初のライブになる。

いつだってindigo la Endを聴いた日の空は曇りがかっていた。偶然の何物でもない全てが演出かのように。

正直なところ、あの武道館公演では
前日まで行くのを躊躇していた。


私の中で "推しバンド" という存在は固まっておらず、心に空いた穴を埋めるものがただ単にライブという事だっただけであった。浮いていたバイト代で思い切ってリセールチケットの購入ボタンを押したのを未だに覚えている。どんな気持ちで押したかまでは鮮明に覚えていないが私の中で確実にこのクリックが後の音楽への価値観に大きく影響を与えることになった。

(音楽への価値観、自分で書出してみて抽象的すぎて規模が大きすぎる。ただ、なにか代名詞を付けるとしたら私の中の語彙ではこれでしか絞れなかった。)

ゲスの極み乙女と同時にメジャーデビューを果たしたindigo la Endというバンド。Apple Musicの説明欄では、ゲスの極み乙女の世界観とは対照的な歌詞に、人間関係を映し出しているとのことだった。私はこの説明欄を見るまでに、この人との関わり、所謂人間関係という主題を捉えられず、その関係に露呈した恋愛を描いているバンドだと勘違いしていた。かなりバンドに対しての理解が浅はかであるが、それと同時に圧倒もされた。

かなり大袈裟な表現をしているが、それほどに武道館公演の演出はとてつもないものであったことを痛感している。

"ねぇ、このバンド、売れるかな。"

ベランダに体を向けて公演の主体となる女性が
シャボン玉を片手にする彼に対して問いただす。

そんな始まりだったのを鮮明に覚えている。

これまでの公演の映像がフラッシュバックさせるかのようなスライドで背景を映し出すと"彼ら"はステージに立っていた。

武道館は180度、3段構えての席で構成されている。
私は2階席の後方で彼らを見ていた。だが、もう既にのみ込まれていた。距離など関係ないほど、没頭していた。
当時の席の状況を覚えていないのがその理由にもなる。

オープニングが終わると、馴染みのあるイントロが演奏された。

sweet spider

後にこのsweet spiderは、セトリ先頭に置かれることが珍しいことを知った。武道館公演の始まりはいつだってSweet Spiderだと言わんばかりに、これ以外に相応しい曲が思いつかない。聞く度にあの始まりを思い出す。何回でも思い出すのだろう。オムカエデゴンス、と語って。

全てのセットリストに感想をつけてもいいのかもしれない。
だが、私が今日書きたいのはそうでは無いはずである。

シャボン玉に包まれたステージに流れる夏夜のマジック、

まるで公演のために用意されたかのような、

Play Back End Roll

武道館公演の準備に携わった全ての人たちと一緒に、エンドロールとして流れていく。

会場を出ていた頃にはもう既に虜であった。
走ってグッズ列に並んで、迷っていたチューリップロンティーからバングルライトに手を出していた。

今、それらをバッグに会場にいる。
ここまで来るのにどれほど聞いてきた??
数え切れないほど、唯一バンドの中で曲を知った気でいれるほど聞いてきた。そのつもりで今ここにいる。

会場に入り、エスカレーターを昇っていく。

扉の前は硝子張りの構造をしている。横浜の港を一望できた。

席は2階席の最後尾に当たる後方席。


18時。少しして、照明が突然全て消える。

またこの始まりだ。この始まりを待っていた。

スクリーンが映し出され、見えているのは、蒼色の花。


肉眼で彼らの顔をはっきり見るのは難しかった。
そんなことを気にしなくていいほどに、やはりまた没頭されていた。眼球の奥底まで音を貫かせて。

ただ、胸が少し痛かった。ドラムの音域を超えている。

勝手に思っていたindigoらしさを覆すイントロ。
聞いたことがない。新曲だと勘違いをした。

レナは朝を奪ったみたいだ

“渚にて” 2012年リリースアルバムより

曲の途中に挟んだ、リリック。

「やっぱおかしな世界だよ、」

これが後のMCで入る伏線になるのに気づかされる。

(入りの前で間違えちゃったと絵音。空気を和ませていた。)

想いきり

さよならベル

渇き

邦画

重に恋して

夜行

夏に限って、恋をする。夏に限って、失うこともある。
花火の情景と一輪の花を重ねて、横浜の地で、
夏の匂いを吸い込んで吐き出す。

夏夜のマジック


さざなみ様

チューリップ

心雨

" まだあるの、あなたに相談したいことが "

彼女の相談


ヴァイオレット

「何も見ない、何もしない、
僕らはどうしてか始まらないし終わらない。」

アリスは突然に

"あなたはあなたらしく生きたの?"

問題ない関係で悩んだりしないから。

名前は片想い

鐘泣く命

夜明けの街でサヨナラを

名もなきハッピーエンド

夜の恋は

インディゴラブストーリー

ステージのスクリーンから大きく外れて映し出される花束。
これまで何色に染まってきたのだろうか。

夜明けの意味を携える。

プルシュカ

" 歯止めの効かない優しさと風が頬を、 "


en.
知らない血
unpublished manuscript


"正しさを決めていく世の中や社会"に
違和感を覚えることがあると語った絵音。

4畳半で音楽を作り続けてこうして13年、
もし音楽の神様が居たとしても、
見抜きもされてなかっただろうな。

「ライブのこの瞬間のために、ステージに立って一瞬の楽しさや幸せを感じるために音楽を作り続けてきたから、、」

客席を見渡して、改めてそう言っていた。既にこの会場にいる人々を惹き付けているはずなのに、彼のMCは少し行き詰まっているようにも思えた。ただ、それは少し嬉しさも滲み出ていたとも思える。

彼を完全に分かりきることはできない。

ただ今回の公演で何がわかっただろうか?
分かりきった気で居ても勘違いでまるめてしまう。

ただその "勘違い" でも、
彼の音楽が寄り添ってくれたと感じることができたのならば。

また僕の音楽を聞きに来てください。
そして僕の話を聞いてください。


彼女の相談をセトリに入れた意図が関係しているのかもしれない。ライブに来ることで彼の相談を持ちかけられている。

僕は音楽にすることでしか、
社会の生きづらさや苦しさを発散させているだけだから。

そう残してステージを後にした。

会場を出ると小雨は降っていなかった。
予報は外れていたのか、

ただ、風は強く、ただただ強く吹いていた。

最寄りに着いた頃には、雨が降り、寒くなりすぎたせいか雪になりかけていた。もう2月は終わるのに。

2023年 2月25日 蒼き花束 vol.3 パシフィコ横浜
Nopperemon




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