盛り上げたと思う時は相手が盛り上げてくれてるし、私の方が冴えてるって時は相手の方が賢いもんだ

あいつって俺のこと好きだからさあ〜

ご機嫌に話す彼は数ヶ月後に地獄を見ることになる。

そんな話になったのは先週のことだ。
その記憶が想起されたのは会社帰りに電車にて恋愛漫画を読んでいたときに思い出した。

彼との付き合いは前職で同じ部署だったことから始まる。
顔は別にイケメンでもなくブサイクでもないTHE普通の顔。
なのだが自信が人の何倍もある。
もうそりゃすごいなんのって感じ。
でも、その自信が結果に結びついたものだから嫌味がない。
まあ、あくまで私視点だけども。

そんな彼は一年付き合っている彼女がいる。
一度見たことがあるがおとなしい感じの可愛い子だった。
そんな彼女にベタ惚れだったはずなのに、彼は堂々と浮気をしている。
それを私に言うあたり根性が座っているなと思う。
言いふらしたらどうするつもりなのだろうか。

そんな思考がよぎりながら電車から降りる。
ほんとくそ暑いなあと真っ昼間の日差しを避けるように目を伏せて内心つぶやく。
今日はなんと土曜日だったのだが、一度会社に行く羽目になったのだ。
クライアントが土曜日に仕事をしていて申込書を回収しないといけなかった。
そして会社のルールで申込書回収後はオフィスに行って保管をしないといけないルールがあった。

ただその仕事も終えたので、ここからが私の土曜日なわけだ。
行こう行こうと思っていて行けていなかったパンケーキ屋を目指す。
初めていく場所なのでGoogleマップを見て移動をするが、その道中に過去に彼と来たお店を通る。
そのお店が過去の記憶を刺激する。

いや、浮気はばれなきゃ浮気じゃないの
幽霊と一緒。いても見えなきゃいないのと一緒なの

ああいえばこう言うやつだと彼を見て思う。
カフェでレモンティーを飲みながら軽蔑の目を向ける。
なんで浮気をしているのかとため息混じりで質問をする。

いやさ、男が女を抱ける時間は限られてるんだよ
だから今のうちに死ぬほどやっとかないと結婚したら浮気しちゃうと思うんだよね

自信満々でそれっぽいことを言うが、本当にこのバカはやめることができるのだろうかと思考が過ぎる。
バレても知らないからねと伝えると笑顔で答える。

あいつって俺のこと好きだからさあ〜

彼女がほんと不憫だ、、、
まともな人だととめるやら何かするんだろうが、私は何もしない。
実害が私にないからだ。性格悪いだろうか。
こいつは恋愛面がこのように終わっているがそれ以外はまともだったりする。
だから友達ではいたいと今は思っている。
だからわざわざ余計なことをしないのだ。

まあでもいつか天罰がくだることだろう。
大きな怪我をする前に神様、、こいつに天罰を与えてやってください。
そう祈ったことを思い出したと同時に過去から今に引き戻される。

お店から視線を戻してパンケーキ屋がある方向に向かう。
10分くらい歩いただろうか。
パンケーキ屋が近い目印になるチャペルが見えてきた。
家でストリートビューを見た時に目印にしたのだ。
白い教会のような仕様のチャペルを見て、いつか自分も利用することもあるのだろうかと視線を向ける。

ん?視線が何かを捉えたのか、違和感から立ち止まる。
そのチャペルでは結婚式が行われているのだろう。人が賑わっていた。
柵越しに彼らの姿を見るとブーケトスをする花嫁が階段を登って振り向く。

彼の彼女だった。

見ているものが理解できなかった。
そっくりさん?結婚式に見えるけど、何かのイベントなのか、、、
思考が巡る。
確かめたいけれど確かめる手段がない。

私は目的を忘れてチャペル近くのカフェに入った。
そして開催が終わるのを見越してチャペルに歩いていく。
人がゾロゾロ出てくる。ゼロになったのかチャペルの関係者と新郎新婦だけになる。
そして新婦が外に出てきたときに私と目が合った。

ハッと見開いた後に申し訳なさそうに視線をそらしてチャペルへ戻っていった。
それで理解した。やはり彼女だったんだ。

その後私は彼に事実を伝えることもなく日々を過ごしていった。
それから一週間経過したくらいのタイミングで彼が振られたという事実のLINEが届いた。
浮気をしていたくせに結構ダメージがあるようで男友達と仕事終わりは飲みに明け暮れているらしい。
振られた理由は好きな人ができたというものだ。

間違ってはいない。
ただ結婚をしたということはおそらく長く付き合っているはず。
その中で彼に浮気したのだ。

なんと滑稽な話だ。
自分のことが好きだと思っていたら、彼女は遊びだったわけだ。
人と会話して盛り上げていると感じた時は大抵の場合、相手が盛り上げてくれているし、あほだなと思った相手は実は相手のほうが頭がよかったりする。

彼女がベタ惚れが理由で恋愛関係が成り立っていると思っていたが、実際は彼が惚れていたのだ。

その事実は伝えなくてもいいだろう。傷を抉る意味はない。
ただ、気がかりなのは
もしこの結果が自分が天罰を祈ったから起こったのかもという思考が過ぎる。

でも、そうだとしたなら二人の悪人のどちらに天罰が降ったのだろうか。

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