長く腰痛に悩まされている人へ

▽腰痛や肩こりがない人はいない?

初診でどこがお辛いですか?  とクライアントに尋ねると

肩こりや腰痛を訴える人がほとんどです。腰痛は肩こりと並んでも誰もが抱える体調不良の代表選手となっています。

腰痛と言っても、場所や症状(痛み、しびれ)は様々。足のしびれなどの坐骨神経痛の症状を呈している人も少なくありません。

腰痛に関しては、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、脊椎すべり症、変形性脊椎症などの病名がありますが、医者でこれらの病名を告げられ、数ヶ月から数年も通院してもよくならない方が、時々、私のところに来られます。

クライアントに伺うと、簡単な問診をされてレントゲン撮影(必要に応じてMRI)、後は消炎鎮痛剤と湿布薬を処方されて、患部のみのリハビリを受けていると言われます。でも症状は改善されない。その間、ずっと鎮痛剤と胃薬を飲み続けている。

当方で丁寧に問診と触診・検査をすると筋肉に原因があって痛みが発生しているケースも少なくありません。この場合はマッスルワークという技術を使って筋肉を弛緩して、必要に応じて腰椎の特定部位をモビライゼーション(反復的に揺らしたり振動を与える技術)したり、特にはアジャスト(矯正)した上で、栄養療法と運動療法の指導を行います

「ぎっくり腰」は病名ではありません。急性腰痛症といい、椎骨、椎間板、靭帯、筋肉に部分的な損耗によって発症します。これまで診たクライアントさんに限っていえば、ぎっくり腰の治療も基本、薬ではなく炎症を抑える適切な措置をしてから徒手療法を行うことで、大抵は痛みが軽減されるケースがほとんどです。

▽触診(palpation)でかなりのことがわかる

カイロプラクターは問診と触診・検査が命綱です。

すなわち触診(palpation)はカイロプラクターの腕の見せ所です。以前は静的触診(static palpation)が主流でしたが、最近では徒手療法の普及に伴い,関節の遊びなどの可動性に焦点を当てた動的触診(motion palpation)を行うことが多くなりました。私も両方を併用しています。

腰椎の椎間関節の可動制限の方向を静的および動的触診で見極め、徒手で調整していきます。例えばL4(腰椎4番)の右側を触診して硬ければL4は左側に回旋している可能性が高いので、これを徒手で調整していくわけです。

矯正しなくとでも硬直化した筋肉を弛緩すれば、左右の筋肉のバランスが整い、自然に椎間関節のズレが解消されることもあります。

要するには筋肉や関節を「元の状態」の戻すだけなのですが、多くの腰痛のクライアントの症状が改善されました。

▽腰痛の原因とその背景にあるもの:生活習慣が引き金に


腰痛が生じる要因は
① 骨盤・仙骨のゆがみ(仙腸関節の問題を含む)
② 腰椎の椎間関節のゆがみ
③ 椎間板の変性(狭くなる)
④ 腰椎まわりの筋肉(特に腰方形筋)の硬直化
⑤ 股関節の可動域の減少
⑥ 梨状筋(お尻の筋肉の一部)の硬直化
が挙げられます。

さらに腰が悪い人は頸椎も悪い方が多いです。したがって腰部だけの治療だけでは症状が改善されない場合が少なくありません。ぎっくり腰で腰が痛くて治療できない場合は、頸椎を矯正をして腰の痛みを緩和するときもあります。

腰痛の背景にあるのは、やはり生活習慣(仕事を含む)です。

・ 仕事で重たいものを持ち上げる(運送業、建設業など)

・ 何時間も猫背の姿勢で仕事をしている(プログラマー、料理人、ネイリスト、ウェイター、車を使う営業マンなど)

・ スマホを連続で長時間利用している

・ やわらかい寝具で寝ている

・ 運動不足による筋肉の衰え(特に背筋・腹筋のアンバランス、インナーマッスルの衰え)

一番悪いのは悪い姿勢を何時間も続けることです。時々、意識して正しい姿勢に修正したり、背伸びなどするだけで腰への負荷は軽減されます。

痛み等の症状は、「炎症」か「神経の圧迫」が引き金になっています。だからこれらを取り除くための徒手療法等の治療をしなければならないわけです。

▽椎間板は若い頃から老化が始まる

脊椎と脊椎の間には椎間板という特殊な軟骨が存在し、クッションの役目を果たし、さらに背骨に動きを与えています。

椎間板は体の中でも最も負担のかかる組織ですが、なんと椎間板にはほとんど血行がありません

栄養が届きにくい椎間板は、人体の中でも最も早く10歳代後半から老化が始まります。加齢によって椎間板からみずみずしさが失われてクッションとしての機能が果せなくなると、椎間板が潰れてきます。

アメリカでは実際に高齢者の人体解剖をしましたが、コルクのように変性していました。

その結果、周囲の関節、靱帯や筋肉に負担がかかり首や腰の痛みが出やすくなります。進行すると脊椎がズレたり変形したりして脊柱管の中で神経が圧迫され、しびれや麻痺など神経の症状が出るようになります。

▽コンドロイチン等のサプリメントは必要

コンドロイチンは、水溶性の食物繊維で、コラーゲンと共に体内の結合組織を形つくり、細胞に保水力や弾力性を与え、栄養補給の消化吸収、代謝を促す重要な栄養素です。

軟骨や椎間板、関節の滑液にも多く含まれていて、軟骨、それによって起きる関節の炎症に対して非常に効果がある物質です。

しかし、加齢により体内で作る量は減少していくので、外から補給する必要があります。

▽椎間板が狭くなるとどうなるか?

椎間板が狭くなると、図の真ん中の椎間関節の写真のように神経を圧迫して、下肢に痛みや痺れが生じて、ひどくなると歩行障害に至る恐れもあります。すなわち、脳からの指示が下肢に伝わりにくくなるわけです。

治療法としては、椎間関節の調整を行い神経圧迫を軽減し、かつ関節(椎間板)に栄養補給をしていきます。そしてこの後も定期的な徒手療法、継続的な栄養補給と運動療法を続けていく必要があります。これが根本治療の例です。

神経の圧迫図


▽アメリカの大学で学んだこと:徒手療法→投薬→手術

画像3

私が留学したアメリカの大学(Texas Chiropractic Colleague)のクリニックでは、医者とカイロプラクター(海外では医者と同じ国家資格)が常駐していて、または医者がカイロプラクター博士(DC:Doctor of Chiropractic)の資格を持っているケースも少なくありません。

最初に時間をかけた問診と詳細な検査をして原因や患部を特定して、第一に「徒手」療法、改善されなければ「投薬」、最終手段が「手術」、の流れで治療に入っていきます(以下)。

手技first

ただし、ほとんどの場合が第一段階(徒手)で症状が緩和されると言われています。

これは腰痛だけでなく、あらゆる痛みや痺れの治療の流れに当てはまります。

アメリカでは、時間をかけた問診と検査で原因と患部を特定した上で、詳しくクライアントに、症状、症状の原因(どこがどうなって症状が出ているのか)、今後の治療方針(トータルの治療期間、各段階の治療方針等)を丁寧に説明します。

「椎間板ヘルニア」などの病名を告げるだけではクライアントが満足しません。アメリカでは日本のような医療保険制度がないので医療費は高額です。このため、自分の体のことはよく知っていて、かつ健康への意識は日本と比べかなり高いです。したがって症状の原因や状態と治療方針への意識も高いわけです。

▽アメリカで問題になっているオピオイド系鎮痛剤

日本ではほどんど報道されていませんが、オピオイドは鎮痛剤中毒と言われるほどアメリカでは広く使用されていて、その乱用による死者数が初めて交通事故死を上回り、1日平均130人以上という深刻な問題となっています。

オピオイドはケシから採取されるアルカロイドやそこから合成された化合物です。

その背景にあるのは、肩こりや腰痛などの痛み緩和のための使用にとどまらず、熾烈な競争社会ゆえの不安とストレスに起因する心因性依存症にもあると言われています。

このため、アメリカでは薬に依存しないカイロプラクティックが見直されてきています(前述の留学先の学長の話)。

ちなみにオピオイド系鎮痛剤は日本でも使用が認められていて、手術やがんの疼痛のような強い痛みのコントロールで使われています。

私のクライアントでもロキソニンなどの鎮痛剤を常用している方がいましたが、手技療法で痛みを軽減していくので、基本、常用しないように助言しています。自然治癒力を高めて体調管理していくのがベストだからです。

▽自らの腰椎すべり症を徒手・栄養療法で克服

一時的に症状を緩和する鎮痛剤等の対処療法も必要ですが、根本療法も併せて行っていくことが重要と考えます。

完治の基本は「ゆがみの是正を含む総合的な治療法」です。

特に関節(軟骨)に必須の栄養素であるコンドロイチン硫酸、グルコサミン等を摂取することは非常に有効です。加齢とともに関節や骨の栄養素は減少するので、骨や筋肉に作用するカルシウムとともに、このようなベースサプリメントを日常的に取ることをおすすめします。

私もかつて頚椎症(C6・C7の椎間板変性、頸椎のゆがみ等)と腰椎すべり症(L3が前方に滑っていた)を患っていて、手のしびれ、お尻や下肢の痛みや痺れに悩まされていました。

特に頸椎は、MRI検査の結果、変形性頚椎症、頸椎椎間板症(ほぼ全体)、頸椎脊柱管狭窄症、C6/7右頚椎症性神経根症、と診断され、このままいくと手術、という状態でした。

徒手療法で一時的によくなるものの完治しなかったため、定期的な徒手療法に加えて、コンドロイチン硫酸を含むサプリメント(商品名はコンドロメートG)を3ヶ月程度、通常の飲用量の3倍を摂取しました。

結果、症状はまったく出なくなりました

▽インナーマッスルを鍛える

腰痛防止には筋肉トレーニングが有効です。ハードなトレーニングではなく、軽めの筋肉トレーニングや以下のようなエクササイズでも構いません。

インナーマッスルを鍛えるエクササイズとして有名なのがピラティス(Pilates)です。

ピラティスは1920年代にドイツ人の従軍ジョゼフ・ヒューベルトゥスが考案した、体幹やインナーマッスルを鍛えてバランスの取れた体にするメソッドです。

頭や手足も重さを使ったポーズや動作により、体幹深層筋群(腹横筋、多裂筋、骨盤底筋群)を鍛えることで、姿勢保持の向上、腰殿部痛の軽減が期待できるので、脊柱変形による痛みに対しての運動療法や腰痛予防、スポーツ選手のパフォーマンス向上としてのトレーニングとして利活用されています。

▽痛みの有無にかかわらずメンテナンスすること

クライアントの中には、症状がなくなると完治したと自ら判断し、通院しなくなる人がいます。

カイロプラクティックは予防医学なので、痛み等がなくても徒手療法を受け、栄養療法や運動療法を続けてもらうことをお勧めしています。

症状が出てから通院するのではなく、いい状態を日頃のメンテナンスにより持続する意識が健康の秘訣です。

▽30歳を超えたら体の定期的なメンテナンス

この習慣をつけた方がいいです。これが高齢者になって突然、重症化しない秘訣です。手術は誰もが避けたいと思うはずです。




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