「御社の命運を、エスパーのような能力を持つ部下を、安定的に調達し続けられるはずだ、という予測に、賭けますか?」という話。

 こんな記事を読みまして。組織改善コンサルをやっているという著者が、よくある「変わらない企業」の特徴を次のように説明しているんですね。

すでに答えがわかっていることでも、部下たち自身で主体的に考えてほしいと言ってきかない。
「そんな悠長なことを言っていられないでしょう」と私どもが主張しても、部課長たちは、「個人の『やりがい』を尊重したい」「『やらされ感』を覚えるような言い方はマズイ」などと言って譲らない。
料理で例えるなら、美味しい食材選びのコツを指南しているのに、「自分たちで主体的に考えさせてほしい」と言い張っているようなもの。そんな遠回りなことをさせて「やりがい」も「働きがい」もないだろう。
緊急時なのに「非ストレート系」の表現が飛び交う
このように、ここ10年近くで、何事も上から押し付けるような言説を控える文化が、多くの企業に浸透した。
だから、今回のコロナ対策でも「要請」とか「推奨」といった「非ストレート系」の表現が組織内でやたらと飛び交う。緊急事態宣言が発令されても、決して「強制ではない」と言い、個人の解釈次第でどうとでもとれるような発信を、社長みずからがしてしまう。
花王のように「出社禁止」といった強い対策がとれる企業はかなり限られている。
だから、企業で働く者たちは上司の顔色をうかがうことになるのだ。
昭和時代的リーダーであれば、こんなとき「私が白と言ったらシロです」と断言しただろう。「私が言っているようにやりなさい。それでもし問題が起こったら、私がすべて責任をとる。いいですか、私に従いなさい」と。
組織への忠誠心が強かった時代だから、こう言えばみんなついてきた。組織が一体になり、まさに昨年(2019年)流行語大賞となった「One team」になれた。
しかし今の時代は、上司が何も発信しない。発信したとしても曖昧だ。歯切れが悪いので、痺れを切らし、「白なんでしょうか。黒なんでしょうか」と問いただしたくなる組織メンバーが少なからずいる。にもかかわらず、今の上司はこう返す。
「君はどう思うんだ?」と。
「君は白と思うのか。黒と思うのか」
「私が決めたらいいんでしょうか?」
「君は白がいいと言うのかい」
「社長は白を推奨すると言いますが、課長はどうなんですか。はっきりしてもらえませんか」
「推奨といったら、推奨だよ。強制はしない。君の主体性に任せるよ」
「隣の課の人たちは、全員、黒だと言ってるようです」
「隣の課は、隣の課だからなァ」
「社長が白を推奨していますし、安倍首相だって白だと言ってます」
「それぐらい自分で判断してくれないかな。それに安倍さんが言うことだったら、何でも聞くのかい」
白黒はっきりさせたい部下にとっては、「俺が白と言ったらシロだ!」「私が白と言ったらシロなのよ」と断言してもらいたいだろう。一方で「社長は社長、隣の課は隣の課、安倍さんは安倍さん、そしてうちの部署はうちの部署」などと、組織によって判断が分かれるだの、仕事の中身やシチュエーションによって意見が異なるだのと言う中間管理職たち。
強制するのをやめ、中途半端にメンバーの主体性に委ねつづけた組織は、こんな緊急時であっても「決められない病」にかかっている。

 ここで「変わらない企業」の人たちが理想としている状態というのが推察できる。

 まず、「上司が、部下はAすべきだ、と思う」と。しかし「上司は、部下に、Aせよとは言わない」。じゃあどうするんだっていうと、「君は何がしたいのか、と聞く」というんですね。そこで「部下が、自ら考えた結果、自主的に、Aしたいです、という」。これが理想だというわけですね。

 で、ここからは部下側の目線出物を考えますけど、そんな構造は部下もとっくにお見通しなんですね。しかし、「上司は、部下に、Aせよとは言わない」わけですから、部下としては「上司は部下にどうしてほしいんだろう、と推察する」ことになります。いわゆる「空気を読む」、「忖度する」ということをするわけです。

 で、部下が「きっと上司はBを求めているに違いない」と考えてBをすると、上司の思っていたのと違うわけですから、まあ、いい顔はされません。そこで場合によっては、上司から攻撃を受けることもあります。悪く言ったり、人格を否定したり、成績を下げられたりですね。部下は、当然それを恐れます。じゃあ部下として一番安全なのはなにかっていうと、行動を抑制することですね。つまり、何もしない、指示待ちをする。このような消極的な状況が発生するわけです。

 空気の問題についてはこちらにも書いたのでよければどうぞ。

空気のヤバい側面とは、「空気を読まないやつには暴力を加える」という、山本の言う「抵抗する者を異端として、『抗空気罪』で社会的に葬る」という性質なんですよ。
 何がヤバいかっていうと、抗空気罪なんて罪は、法に定められていないわけです。法に定められていないのに、攻撃を加える、というのは、要するに私刑(リンチ)なんですよね。その点がまずヤバいです。

 たぶん、この消極的な状態を解決するには、大きくは次の二つしかなくて。

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