見出し画像

パーティが増えた話

甥っ子は2歳になる。完全に親バカ的だけれど、控えめに言っても、ものすごくかわいい。話すようになってきて、かわいさはパワーアップしている。


「姉は結婚しようと思う」

と言われたのは、4年前だ。唐突なLINEの内容に姉らしさを感じながら、とても驚いた。そんな人いたの?どんな人?なんで?と矢継ぎ早に質問しまくった。

ついにきてしまったか、と思った。もう終わりだ、絶望だ。と思った。結婚するという相手に言うのもどうかと今では思うが、

「人生終わる感じする」

と伝えた。すると姉は

「人生は、まだまだこれからだよ。あなたもわたしも」。

そんなこと信じられなかった。


姉と同じ歳になった。姉は母になっている。

私はといえば、誰かとこれからを生きる未来など微塵も見えてこない生活を送っている。相変わらずいろんなことに悩み、へこたれ、時に信じられないほど加速したり減速したりしながら生きている。



姉の引っ越しの手伝いをしながら、子どもがいるってどんな感じ、子どもができたときどうだった?と聞いてみた。すると

「子どもができたとき、よっしゃー!!って思った。自分のパーティが増えるって思った。」


今までに聞いたどのサクセスストーリーの言葉とも違う言葉で語られ、面食らった。よっしゃー?パーティ?考え方が違うなあと思いながら、それでもなんだかとてもいいなあと思った。

姉曰く、家族が増える感覚はRPG系のゲームでいうところの、パーティのメンバーが増えていく感覚であるらしい。自分にとっての絶対的味方。共に戦ってくれる仲間。そういう感じらしい。



わたしが今まで考えていた結婚と随分違っていた。巷に溢れるストーリー(スタンダードだとわたしが思っていたもの)は、二人が出会って、なんだか素敵なデートを重ねて、愛を伝え合って、だんだんと結婚を意識し始め、プロポーズ、結婚、といった感じだ。お互い向き合っている、手を取り合っている感じ。それが辿るべき道だと思っていたから、恋愛がどうもうまくいかない自分は相当変なのか、と思っていた。


でも、そうでもない。


姉の結婚観を聞いていたら、いわゆるサクセスストーリーって、誰のストーリーなんだろうと思った。一緒に生きていく仲間、パーティ。なんだかその方がずっと気楽で楽しそうだ。向き合うんじゃなく、肩を組んで進んでいく感じ。いいじゃないか。わたしが頑なに信じていたそれとは随分違うけれど、そんな結婚ができたら、その先には楽しそうな自分が見える。自分に合ったものを探すことが認められる今、結婚だって自分の心地よいものを選んでいい。振り返ってみればこんなに簡単なことににやっと気づいた。


結婚が絶望だとはもう思わない。



小さな大怪獣に会えるのは、雪の積もる時期になるだろうか。パワーアップしていることだろう。これからもわたしは好きな人に会いにいく。好きなものに会いにいく。いつかパーティが組めるといいな、と思いながら。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?