もういっぺん、スタート。

『カラオケで歌上手いなーってもっと言われたい』

19歳の私が考えた浅はかな望みだった。

18歳で会社員になり、先輩の誘いを断れず連れて行かれたのが当時大流行りだったカラオケボックス。ただ、それまでの自分は『人目をはばからずデカい声で歌う』人達の気持ちが理解できなかった。歌手でも無いのにマイクを通して歌を歌うという行為がとんでもなく恥ずかしい行為としか思えなかったからである。

とは言うものの、学生時代から何かと音楽に触れる機会が多かった事もあり、普通の学生生活を送っていた人よりは音程を聞く事と楽譜を読むことはできた。合唱経験もあったので、とにかく知っていて口ずさんだことのある曲を歌ってみた。

『上手いやんか』

これが全ての始まりだった。

カラオケボックスは楽しいが、やはり下手な歌を人前で晒したく無い。じゃあもっとちゃんと歌えるようになれば良いやん、とボーカルスクールに通い始めた。思うように歌える事が嬉しくてバンドのボーカルや当時の流行だったジャンルの音楽にもれなく飛び付き、Jazzだったらもっと色々な人と演奏できるんじゃ無いかと思い、行き着いた。

…んだよね。確か。

最後にバンドで歌わせてもらってから約2年程まともに歌ってない。こういう類いのものって止まる事は恐怖でしか無いんだけど、正直なとこ本気で歌いたいのか?と言う気持ちもあるのも確かだ。でも、意図的に辞めてたんじゃなくて、何かしようと考えていたら面倒ごとが起きて頓挫する…と言うのを繰り返して、いつの間にか気持ちが萎えていたような気もする。ボイトレは継続しているが、どうしても練習に向き合えない現実があった。

つい最近、会社で『(私)さんが歌えるらしい』と言う話が出ていると言うのを耳にし、当事者がどうも誘われたら断れない相手っぽいので、そのうち連れて行かれるんじゃ無いかなーと考えている。相手がどれくらい『歌える』の期待値があるのかは判らないのだが、個人的に

『あ、そんな程度ね』
と、思われる事が許せない…スイッチが入ってしまった。

こんな事でかよ?

と思ったんだが、このスイッチに乗っかってみても良いんじゃ無いかなと考えた。

どう活動していこうとか、どうすれば良いのかとかずっと考えていたんだけど、動き出した時に自分が対応できるのかと言う事がすっぽり抜けていた。必要とされた時に即戦力になれる事、相手に『よっしゃ』って思ってもらえる事、今まで出来ていた事は出来る状態になっていなきゃなと。

それ以上に、単純に『歌いたい』と思っていた自分を取り戻す事。

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