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好きな本

私は好きな本に湊かなえ著の『告白』(株式会社双葉社、2010年発行)を紹介しようと思います。
ミステリー小説で、デビュー作にして累計340万部突破、第6回本屋大賞を受賞した大ベストセラーです。

聖職者から始まる6つの物語の中で語り手が犯人、家族、友人と次々と変わり、その中で犯人の思い、罪を犯すまでの経緯、見守る人の生活、決断が読み進めるうちに明らかになっていきます。

本書は、娘を生徒に殺された担任の女教師の終業式での告白から始まり、彼女は1年B組の生徒に向かって『愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。』p29と伝えました。事件で亡くなったと思っていた少女は殺されていたのです。
この告白は、春休みを過ごし2年生へと進級する1年B組の生徒たちその家族に大きな動揺を生み、波乱を呼ぶことになります。
狂気に取り憑かれたメインキャラクターと復讐、愛情、願望、執着、恐怖といった心情がとてもリアルに、そして詳細に描写されています。

この本を取り上げ根拠は、娘を殺された担任の女教師が犯人に言った最後の言葉です。『これが本当の復讐であり、あなたの更生への第一歩だとは思いませんか?』p300聖職者であることを捨てた女教師、自分の大切な娘を失う怒りと悲しみは、きれいごとでは済まされないという事が思い知らされる一文だと感じました。

娘が亡くなった事件の真相を女教師が気づき告白しなければこの話はありません。
同じように現実で起きている物事も、様々な目線がなければ真実はわからないでしょう。私はこの本を読んで、私たちが見ている物事は、ほんの一角に過ぎないというメッセージを感じました。大切なものを壊した人は、大切なものを壊されて初めてその痛みがわかります。
本書は、女教師の復讐によって後味は悪いが物語としてはとても良い終わり方だと感じました。しかし、物語の捉え方によっては、その人の人生、今後の考え方に大きく影響する作品になるだろうとも思います。

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