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5月24日の日記「だいぶビルド寄りの日」


 日付が変わったあたりから新しいベッドの組み立てを始め、40個あるネジに発狂しながら夜通し作業して、けっきょくベッドが完成したのが朝の6時とかだった。嘘でしょ、ぜんぜん休めてないじゃん。誰かお駄賃を深夜手当てと休日手当てこみこみでおくれ。自分のために働いたときの報酬は、誰に求めればいいのだろう。自分には求めたくない。報酬を支払うのも受け取るのも自分なら、プラマイゼロだから。やっぱこの世の仕組みはどこか狂ってる。

 新しく我が家の一員となったベッドは、見た感じ床の強度が心許ない。また壊してしまわないよう、おっかなびっくりしながら横たわっている。こいつに完全に心も体も預けられる日は、まだ遠そうだ。あと、ベッドの下が空間じゃなく引き出しになっているので、今までのように乱雑に物をぶちこむことができない。俺はいったい、これからどうやって部屋を綺麗にすればいいのよ……(普通に掃除しろ)。




 ベッドを組み立てながら、映画『最強のふたり』を見ていた。(あらすじを説明するまでもないだろうけど)社会から爪弾きにされた若者ドリスと、障害を持ち介護必須な老人フィリップの交流を描いたお話。年齢も性格もバックボーンも全然違うのに、彼らは奇妙なくらいぴったり噛み合う。普段の2人の会話はユーモアたっぷりで遠慮の欠片もないが、本当に大事な部分に踏み込むときはお互い、どこまでも真剣で誠実になる。そんな二人の友情が、見ていてとても気持ちいい。個人的に、こういうのにすごい弱いんですよね。横たわる障害をものともしない友情……障害を乗り越えるというよりは、最初からそんなの関係なくない? みたいな感じの友情に。ちょっと違うかもだけど、助っ人外国人が日本を好きになっている姿とかみると、すごく嬉しくなっちゃう。……かなり違うか?


 ドリスはときにブラックジョークの域さえ跳躍した、痛烈な言葉をフィリップにぶつける。自らの障害を笑い飛ばすくらい遠慮なく接してくるドリスに、フィリップは好感を抱く。でもこの二人の関係性を、コミュニケーションの理想モデルとするのは誤りだろう。ドリスは確かにいいやつだけど、彼の率直さがハマらない、何なら気を悪くする人も多くいると思う。それは個人の良し悪しじゃなく、相性の問題だ。彼らの友情から、何か応用できるものを得ようとしてはいけないと思う。彼らの友情は彼ら二人だけのもの、『最強のふたり』なのはドリスとフィリップだけなのだから。




 夜、久しぶりに自炊をした。1年ほど前からコンロを使ったらブレーカーが落ちるようになったので、長い間自炊を封印していたのだが、けっこう時間も経ったので案外直ってるのでは? と思ったのである(科学を信用しているのかナメているのかわからんな)。いつ部屋が真っ暗になるかびくびくしながら料理したんだけど、結局なんのトラブルもなく完走できたな。作ったのはオムナポリタン。最近ファミマで買ったのが旨かったから、自分でも作ってみようかと思ったのだ。具はタマネギとベーコンだけのシンプルなもの(具をいっぱい買ったり切ったりするのだるいだけ)で、味付けはケチャップとニンニクとコンソメと、小細工としてちょっと牛乳とか入れてみた。作って食べた感想は、「ケチャップの味がしておいしい」だ。ナポリタンとかオムライスとか、ケチャップを使う料理は味をケチャップが支配してくれるから作りやすい。あと、家で作るナポリタンってどうも炒めてる感がないね。温めてるだけって感じ。火力が足りないのもあるけど、炒めるって状態まで待つのだるいんだよな。そんな上等なものはハナから作れないんだから、さっさと作り終えてさっさと食べたくなる。


 それにしても、コンロが使えるって知っちゃったら、これからちゃんと自炊しなくちゃいけなくならないか?  ダルすぎる。久々に食べ終わったあと皿とかフライパンとかの後始末をする面倒くささを思い出した。俺はただ飯を食いたいだけなのに、調理と後片付けをしなきゃいけない。新しいベッドで寝たいだけなのに、徹夜で起きてそのベッドを組み立てなきゃならない。ただ幸せになりたいだけなのに、多くの代償を支払わねばならない。ほんに人生とは、ままならないものよのう……




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