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CtoCサービスの法務戦略

士業クラウドソーシングプラットフォームを展開する株式会社BECさんの取材を受けたので、許可をいただいた上で記事を転載いたします。

C to Cサービスとはどのような特徴をもつサービスを言うのでしょうか。

C to Cとは、Consumer to Consumer、つまり個人(とりわけ一般消費者)同士の間で行われる商取引形態を指します。C to Cサービスと言う場合、個人間で物品の売買やサービス提供を行う取引のマッチングを行うプラットフォーム事業を指していることが多いのではないでしょうか。

例えば、フリマでいえばメルカリ、ECストアでいえばBASEなどがC to Cプラットフォームに当たります。また、クラウドソーシングサービスも、例えば翻訳クラウドソーシングサービスのConyacなどもC to Cプラットフォームに該当するといえます。最近話題のUber(uber X)やAirbnbも、C to Cプラットフォームに分類できると思います。

その特徴は、C to Cプラットフォーム提供者はあくまでも「取引の場」を提供するのみであり、取引主体とはならない点にあります。「場」だけあっても何も生み出されないので、ユーザートラフィックとトランズアクションが増えなければどうにもならないのがC to Cプラットフォームです。当たり前ですが、広い意味でのユーザビリティが生命線となります。

C to Cサービスで法的論点になりやすい機能や仕組みがあればおしえてください。

基本的に、ユーザー同士はお互い顔や素性が分かりません。取引相手が信頼の置ける人物であるかどうか等を判断しにくいため、対価の支払いや物品の引き渡しがきちんとされるかどうか不安です。これはユーザビリティに関わる大きな問題です。ユーザーレビューなどで取引相手の情報を入手することができるように工夫しているプラットフォームも少なくありませんが、それでも性悪説的な発想からすれば安心できません。

このような不安を解消し、性悪説的に考えても安心して取引を進めてもらえるようにするシステムが、エスクローシステムです。

エスクローシステムとは、一般には、買主が、中立的な立場に立つ第三者(エスクローシステム提供者)に売買代金を預託し、商品の引渡しが完了したことを確認できた時点でエスクローシステム提供者が売主に売買代金を支払うという、取引当事者同士の「同時履行」を確保する仕組みをいいます。

取引代金や商品を第三者に預かっておいてもらえるので、取引相手が極悪人であると仮定しても、ユーザーは安心して取引をすることができるようになります。

しかし、このようなエスクローシステムは、銀行法が定める「為替取引」に該当するとの指摘もあります。「為替取引」は銀行でないと行うことが認められないので、エスクローシステムを実施することは違法となってしまう可能性もあります。

法的リスクを避けるために各社が採用している工夫や事例などあれば教えてください。

「エスクローシステム問題」での争点は、エスクローシステムが「為替取引」に当たるかどうかです。

C to Cプラットフォーム各社は、実施しているエスクローシステムが、「為替取引」ではなく、いわゆる決済代行・収納代行であると説明できるような仕組みを構築するように工夫している場合が多いように見受けられます。

判例によれば、「為替取引」とは「顧客から、隔地者間で直接現金を輸送せずに資金を移動する仕組みを利用して資金を移動することを内容とする依頼を受けて、これを引き受けること、又はこれを引き受けて遂行すること」を指します。この定義からすると、決済代行・収納代行も厳密には「為替取引」に該当しないと言い切れるものではないのですが、一般的に普及してしまっているサービスですので、「おそらく大丈夫であろう」と判断するためのメルクマールとなっています。

具体的な工夫としては、取引に付随する送金として行うこと、短期間での決済を行うこと、ユーザーの資金をプラットフォームに滞留させないこと、金銭を受領した時点で決済完了とすること、エスクローシステム専用の口座を設けることなどが挙げられます。いずれの要素も相互に関連するもので、また、それぞれの金額や期間によっても判断が分かれ得るところです。サービス内容にも整合させる必要があるので総合的な設計が必要となりますが、現時点では裁判例もなく誰にも正解が分からない状況です。

ITビジネスにありがちなケースですが、要するに法律が追いついていないのが現状なのです。今後の法整備によってエスクローシステムの適法ラインもクリアになるものと思われますが、現時点ではグレーな状態のままサービスが展開されている状況です。

なお、銀行等以外の会社は、資金移動業者としての登録を行えば送金業務を行うことができます。資金移動業とは、銀行等以外の者が為替取引(上限金額は100万円相当額)を業として営むことを言います。これにより、堂々と送金業務を行うことができるので、資金移動業者として登録してしまうというのも有力な選択肢となります。

これからC to Cサービスを開発しようとしてる起業家にサービスの設計におけるアドバイスをお願い致します。

他社が導入している機能を表面的に真似するのはとても危険です。エスクローシステムもそうですが、他社を表面的に真似て同じ機能を導入しても、適法にシステムを提供するために必要な、外部からは見えない要素が欠けているということは少なくありません。

例えばサービス内仮想通貨(コインやポイントなど)を発行する場合にも、資金決済法や景表法等の規制が加わります。ユーザー同士の取引の決済をプラットフォーム内仮想通貨で済ませることのできるサービスもありますが、資金決済法などに配慮しながらサービス設計を行わないと、違法サービスになりかねませんので注意が必要です。

最後に、C to Cサービスの今後の展開についてお考えがあればお聞かせください!

スマホやウェアラブルデバイスが一通り普及し、GPSやリアルタイム通信も一般化し、各種ウェブ・アプリサービスにより情報の集約・拡散が容易になったことから、個人間でのマッチングコストは限りなく低くなりつつあります。

技術的なベースが整いましたので、今後は大きくわけて、「既存の仲介組織・ハブとのリプレイス」と「個人の有休リソースの活用」との2つの市場が盛り上がるのではないかと考えています。

「既存の仲介組織・ハブのリプレイス」という市場に関しては、最近Yahoo!とソニー不動産がローンチした「おうちダイレクト」に興味津々です。不動産仲介会社のリプレイスが期待されるところです。

「個人の有休リソースの活用」という市場に関しては、日本でも既に手料理のシェアリングがあるようですし、サンフランシスコには荷物を届けたい人と通勤を利用して配達業を行う人をマッチングする「Shipbird」というサービスもあるようです。さらには、近所の人から必要なモノを借りることのできる「Peerby」というサービスも出現しています。

この流れがどこまで続くのか、商社の伝統的ビジネスモデルであるコミッション商売のリプレイスはあるのか、「有休リソース」全般のマッチングをとりまとめる大型プラットフォームが現れるのかなど、今後の動向に注目しています。

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GLOBIS CAPITAL PARTNERSキャピタリスト←Supership(KDDIグループ)経営戦略室長/子会社役員←弁護士←東京大学大学院←慶應義塾大学/得意領域はBizDev、戦略提携、政策企画、M&A、PMI/「アプリビジネス成功への法務戦略」著者
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