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あなたは大丈夫?正義中毒オタクが陥りがちな「トレパク警察」

「トレパク」という言葉、所謂オタク界隈の人であれば意味をご存じだと思います。
絵を描く人が他人の作品をトレース(透かして写し取る)して描いたものの事です。
私が初めてこのトレパクという言葉を目にしたのは約10年程前の事ですが、それから今日に至るまで、トレパクの疑いをかけられ炎上した事案は多数ありました。
そして先日、またしても「トレパク」がツイッターのトレンドワードに上がっていました。
以下の事案がその原因だったようです。

今や超人気ジャンルとなった「鬼滅の刃」界隈で発生したこと、そして当該人物が過去にも複数回トレパク疑惑をかけられている事がトレンドワードにまでなった理由でしょうか。
当該人物(以下Rさんとします)は、先日トレパクの事実を認め謝罪をしたようです。これについてはRさんのFacebookアカウントを突き止めるなど、素性を特定する動きが出始めた為ではないかとも言われています。

私はトレースによる模倣を「トレパク」などと呼び、ネットユーザーが糾弾する行為は一概に不当な私刑であると考えています。トレパクという表現を用いて他人を非難する人間は一律にネットリンチの加害者と言っても差し支えないでしょう。
これはトレースによって描いた作品を公表することの是非とは別問題です。
あくまでも「部外者が権利侵害を糾弾すること」の不当性について問題視しています。
トレパクに限りませんが、所謂オタクの中には著作権侵害に対して高い意識を持っている事を自負するあまり、自分とは何の関わりもない他者の権利問題にまで過剰反応し、不要な干渉をする人がしばしば見受けられます。
最近は落ち着いていますが、トレパク警察以外にも一時期は「無断転載警察」のようなユーザーも存在していました。毎日無断転載しているユーザーを見つけ出しては声をかけ、注意に応じなければ晒し行為を行い炎上を煽動するという行動に明け暮れるその様は正に「異常な正義中毒」そのものであり不気味ですらありました。
勝手に人のイラストをレタッチソフトを用いてこねくり回し、パクだラレだ線が一致しているからこれはトレパクだ、などと騒ぎたてるトレパク警察も、正義中毒をこじらせた異常なメンタリティが起因した行動と言えるでしょう。
こういったパクり警察ごっこに興じる人達も当然知っているとは思いますが、著作権侵害は親告罪です。違法であるという事が事実として成立するのは「誰かが盗作を見つけた」時ではありません。
権利者が盗作された、権利を侵害されたと訴え出て、司法が精査し、司法によって権利侵害があったと認定された時に初めて違法行為があった事実が成立するのです。
法律において「盗作である」と判定される基準は、「『本質的特徴』にあたる部分が元の作品と共通しているか」という事になります。これを判断するのも司法の役目ですので、線が被ったからアウト、などという事には当然なりません。


さて、権利者でもない部外者が上記の正当な手順も踏まずにこれは盗作だ、著作権侵害だ、違法行為だ泥棒だと騒ぐとどうなるか。その時点で著作権侵害は成立しませんが、疑いをかけられた人に対する「私刑」が成立する訳です。私刑も著作権侵害同様、法(憲法)で認められていない行為です。

過去の判例などを引き合いに出して「だから本件も黒だ」と主張する者も居ますが、判例はあくまで判例です。個別の事案ごとの事情というのも勿論考慮されますし、それも踏まえて権利侵害があったかどうかを判定するのは司法において当該事案を担当する裁判官だけで、どのような判例があろうがそのようなものを根拠として部外者が勝手に断罪する事は認められません。

話が前後しますが誰も頼んでもいないのにトレパク警察が勝手に行う「検証」も決して信頼できるものではありません。殆ど言いがかりのような検証も散見されます。雑な検証で黒だパクりだと騒ぐ様子は、明らかに「燃やしてやろう」という悪意が伺えます。裁判上の検証ではない素人の検証など、いくらでも捏造が出来るのです。

さて、今回話題になったRさんについてはトレパクをしたと認める謝罪をしていますが、そこに至る経緯は先程にも述べた通り、Rさんの素性を特定する動きがあったからとも言われています。
Rさんの件についてはトレパクされたとする本人がRさんと直接対話をしています。最早この時点で部外者が介入する必要など何処にもありません。丸く収まろうが決裂しようが、あとは本人同士の問題でしかないのです。
しかしRさんがこれまで一貫してトレパクを認めなかった為、部外者の糾弾は続きました。炎上は対象者が非を認めるまで続くものです。その間あらゆる手段を用いて対象者は攻撃されます。素性に繋がる個人情報の詮索や晒し行為も炎上加害の常套手段です。特定や晒しは実生活に危害が及ぶかも知れないという計り知れない恐怖を対象者に与えるものです。嫌がらせを恐れるあまり圧力に屈し、本意ではない謝罪をした可能性も十分あると言えるでしょう。
例え何をした人であってもこのような形で謝罪を強いられるべきではありません。そんなものは相手が望む謝罪ではありませんし、実際謝罪をした事で更に叩かれています。結局Rさんがどのような対応をしようが部外者は叩きたいだけなのです。

正義中毒を卒業しよう

このように部外者のトレパク叩きはトレースで作品を模倣した事とは関係なく、不当な私刑であるためすべきではありません。「トレースで模倣した」という目先の事に安易に飛びついて糾弾をしてはいけないのです。「注目されたい為に不正をするなんて!」と憤るのは構いませんが、非難を言葉にする前に自分は部外者である(=部外者の糾弾は私刑にあたる)ことを強く自覚せねばなりません。
正義中毒は称賛されるものでも尊敬されるものでも、勇気ある行動でもありません。只々独善的で見苦しく、醜いものです。それに気づかず傲慢に振舞うトレパク警察に迎合しないよう、節度ある振る舞いを心掛けましょう。

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