喫茶店 〜なぐさめよう〜

週刊台本 #16

喫茶店1　〜なぐさめよう〜

（喫茶店で三人の男が時間を潰している）

鳥波：どう？最近は
樋口：うーん…
鳥波：どうよ、ここ最近
樋口：最近？うーん、まあ、そんなに良くないかな…
灰原：ええ？珍しい
鳥波：それは、仕事関係で？
樋口：うん、まあ、まあ…
鳥波：そうか、じゃあ、慰めてやらないとなあ。ねえ？
灰原：まあ、そうだねえ
鳥波：ちょっと慰めよう、2人で。…慰めるの得意？
灰原：慰めるのは、まあ、得意な方だねえ
鳥波：お、豪語？
灰原：豪語していいんじゃない？
鳥波：出たねえ。どういうなぐさめかたがいいかなあ
灰原：あれじゃない。まずはベタにいいところをほめてあげるのは？
鳥波：なるほどね。よし、やってみよう
灰原：……まあ、いろいろうまくいかない時もあるよね。……それにしてもあれだね……髪、さらさらだね
鳥波：お、いいねえ。髪褒められてやな気分になる人いないからね。いいんじゃない？
樋口：……はあ……
鳥波：ちょっと効いてないみたいだね
灰原：あれだよね、髪以外もさらさらだよね
鳥波：お、そうだよな。髪がダメなら髪以外だよな。「髪がダメなら髪以外」って言うもんな
樋口：……
鳥波：次、俺行っていい？
灰原：いいよ
鳥波：……まあ、まあ、そんなに落ち込むなよ。いいところいっぱいあるじゃん。……おしゃべりも堪能だしさ。…もう、すごいもん。…ホンジャマカの恵かと思うもん
灰原：すごいね
鳥波：ねえ
灰原：一番喋るもん
鳥波：お前も思う？
灰原：俺も。ホンジャマカの恵かと思う時ある
鳥波：なあ
樋口：……
鳥波：うーん、こんなに褒めてもダメか
灰原：相当褒めたけどね
樋口：……はあ……
鳥波：次はあれだね、なぐさめるときってやっぱり共感が必要なんじゃない？原因を聞かずにさ、勝手に決めつけてもよくないしさ
灰原：いける？
鳥波：うーん、まあ、そうだな。あんまり気にすんなよな。そういうこともあるよ。仕事関係だよね？あれだよね？コーヒーにミルクを入れようとしたら手元が狂ってポーションごとコーヒーの中に入っちゃったんだよね
灰原：あー、まあ、しょうがないよね。夜も眠れないくらい引きずるのはわかるけどさ。……まあ、まあ、わかるよ。あれでしょ？ロバートキャンベル見ようと思って「スッキリ」つけたらその日はロバートキャンベルの出てる曜日じゃなかったんでしょ？
鳥波：あー。そっちだ。それだね。みんなあるよ。誰しもそう言う経験は
樋口：……はあ……
鳥波：まあ、まだ落ち込んでるけど…ちょっと元気出てきたのかな？
灰原：顔色も良くなってきたんじゃない？
鳥波：最後はやっぱり自分の思ってることをストレートに言う方がいいのかもね
灰原：あー、なるほどね
鳥波：それでやってみる？
灰原：お前は〜あれだな
鳥波：お前は〜ほんとにな
灰原：お前はほんとどうしようもない
灰原：ほんとだよ。この「少食のゾウ」が
鳥波：それは本当にそう。みんな言ってる。ほんとに。お前なんかもう「違法C言語」だよ
灰原：まったくだ。よく言った。このままだと「アウンサンスーチーおばさん」になるのも時間の問題だからね
鳥波：うん。親が悪い。お前じゃなくて親が悪い。まじで。「軽くてよく飛ぶだけが取り柄のゴルフボール」だよ
灰原：うんもう「岡本太郎の生まれ変わり」だよ
鳥波：お前さいればもう何もいらないよ
樋口：後半ずっと褒めてんじゃねえかよ
鳥波：え？
樋口：悪口言うコーナーだっただろ。で、その悪口もずっと変だし
灰原：え？間違ってた？
樋口：間違ってたよ
灰原：え？
鳥波：え？
（A、C、顔を見合わす）
樋口：なんでそんなびっくりできるんだよ
鳥波：え？どっちが？
樋口：両方だよ。両方がずっと違うよ。ヘタだよ、ずーっと、最初っから。なんだよ最初の「髪さらさらだね」って。女褒める時に言うやつだろ。なんだよ「ホンジャマカの恵かと思った」って
灰原：うれしくない？
樋口：うれしくねえよ。申し訳ねえけど。で、次、理由探そうとしてただろ。なんて言ってた？
鳥波：……コーヒーにミルクのポーションごと落としちゃった
樋口：それで悩まねえよ。一晩引きずらねえよ。その日じゅうに忘れるよ。でお前、変なこと言ってたな
灰原：ロバートキャンベル見ようと思って「スッキリ」つけたらその日はロバートキャンベルの出てる曜日じゃなかった……
樋口：そんなやついねえよ。まずロバートキャンベルを能動的に見ようと思ねえだろ。「仕事関係」っていうヒントどこ行ったんだよ
灰原：ええっ、違うの？
鳥波：意外な顔すんなって。で最後なんだよ。悪口合戦。「少食のゾウ」「アウンサンスーチーおばさん」悪口言ったことないんか、なあ。どこが悩み解決するの得意なんだよヘタだよ。一番ヘタだよ
灰原：……まあでも、悩みなんてどうでも良くなったでしょ？
樋口：……まあ否めないね