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VR

週刊台本 #19  コント

(舞台上で「VRの映像の内容」を表現し、影マイクでその映像を見ている人の心境を表現するコント。コンビで行うが、落ち以外は片方しか舞台上に出ない)

(全セリフA、影マイクで)

いや〜VRゴーグルやっと買えたな〜、結構高かったから楽しみだな〜、どんな映像なんだろうな、ちょっとつけてみよう
(明転)
(B、上下グレーのスウェットで座椅子に座っている)
うわーすごいリアルな部屋の映像だなー
(スマホを手にとり眺める)
……え?…なにこれ?
(爪のささくれを気にする)
……嘘だろ……なにこの地味な映像……一人暮らしがのぞけるだけ?
(少し離れたところの爪切りを取り、爪を切り始める)
……何見せられてるんだよ。なんか起こるわけじゃないのかな
(しばらく爪を切り続ける)
マジの尺じゃん
(コロコロクリーナーをとってくる)
いらないってーコロコロは
(コロコロし始める)
一人暮らしすぎるだろ。なんでこんなのをVRのコンテンツで見せられなきゃいけないんだよ
(部屋を大きく左右にコロコロして、後ろに行ってから手前をコロコロする)
もっと迫力のある映像が見たいんだよ
(もう一度、後ろに行ってから手前をコロコロする)
そんなところで奥行き感とか出さなくてもいいよ。VR特有の飛び出してくる感じはこのコンテンツで見たいんじゃないんだよ
(コロコロが終わり、何もしない)
……何もしない時間が長い。何もしない時間が長いって
(時計をちらちら見る)
時計をちらちら見るだけの何もしない時間。夕方からバイトか?夕方からバイトしかない1日なのか?
(ビニール袋の中からスマホのフィルムを取り出す)
お、なんか始まった。何それ?買ったの?
(スマホのフィルムを張り替え出す)
スマホのフィルム張り替えてる。日常のイベントの中で一番切り取り甲斐ないって
(インターホンが鳴る)
ん?誰か来たのか?
(部屋から出て行き、しばらく戻ってこない)
……リアルな間だな〜、いいんだよこんなの。VRの、一人暮らしの、無人の部屋
(ダンボール箱を抱えて戻ってくる)
何か届いたのか…なんだ?
(段ボール箱からVRゴーグルを出す)
え?VR?VRの中の映像に出てるやつが今からVRを見るの?何このメタ構造
(VRゴーグルをつける)
(笑いながら動き回り、手で宙をつかもうとする)
……楽しそうだな〜あっちのVR。こっちはすごい地味なVR見てんのにすごい楽しそうなの見てんな〜
(舞台手前に向かってくる)
うわー、VRを見てる人の飛び出し感がすごい。全然嬉しくないけど
(SE、インターホンが鳴る)
誰か来たよ
(SE、インターホンが連続で鳴る)
VRに夢中で気付いてないじゃん。誰か来てるって。おーい。…あれ?
(A、VRを見ている影マイクとは別人の役として、帽子にマスク、全身黒尽くめの格好で部屋に入ってくる)
(A、VRに夢中になっているBを一瞥し、部屋を物色、財布の中身や通帳を抜き出す)
このVR外すの怖えー

祈りましょう