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40年前の標準レンズと最新のレンズは実際どれくらい画質が違うのか撮り比べてみた

前回、次は標準レンズの撮り比べをするぞ!と書いてから、早1年半も経ってしまいました。ごめんなさい。

こんなnoteの片隅の記事など誰も読んでないだろうと思っていたのですが、なんと先日うちの社内のグループウェア(kintone)で、「続きはまだですか?」と言う驚きの催促メッセージをいただき、比較のために撮影した素材をデスクトップの奥から引っ張り出してきました。

今回は4本のレンズを比較してみます。

とは言え、メーカーからモニター品が送られてくるわけでもないし、そんなに稼いでもいないので、比較的誰でも入手しやすい安めのレンズばかりです。

比較するレンズのご紹介

エントリーNo.1

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キヤノン FD55mm F1.2
EOSが出るずーっと前のレンズ。1971年3月発売。
世界で初めて非球面レンズを採用したらしい、レンズは6群8枚
発売時の価格は145,000円!!同じ年に発売のホンダシビックは42万で買えたことを思うと、今にすると50万円は軽く超える感覚ですな、たっけー!!
プロ用市場で当時ニコンに全く勝てなかったキヤノンが巻き返しを図って出した一眼レフF-1に合わせて発売されたそうです。
中古では5万以下です。

エントリーNo.2

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SMC PENTAX 1:1.2/50
1975年発売(らしい)世界初の一眼レフ用 50mm F1.2の大口径レンズで、6群7枚。
他社が55mmだったのに初めて50mmを実現したということで、プロ用機じゃない分野とはいえPENTAXの設計力が高かった時代ですね。(当時はシェアトップ)
価格は当時でも5万円程度とキヤノンに比べたらかなりリーズナブル。最新レンズとの比較はもちろんですが、3倍の価格のキヤノンFDレンズとの違いも興味深いところ。
中古ではこっちも5万円以下です。

エントリーNo.3

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SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM
2008年発売、発売時の定価は6万円ほど。レンズ構成は6群8枚。
デジタル時代に対応する新設計のレンズのさきがけで、発売時はキヤノンなどのメーカー標準レンズより重くて価格も高かった。当時のサードパーティの(安くて品質もそれなり)という常識を打ち破った金字塔レンズ。
出た当時はかなり話題になって、フォーカスが合っているところはめちゃ鋭いが合う範囲が極めて狭く、ずれると盛大にボケるプロ仕様だとか。

そんな話題のレンズですが、その後レンズ競争が勃発してSIGMAが10万円ほどする高級標準レンズをすぐ数年後に出して置き換わったので、この型が中古市場に洪水のように流れ出て、今では2万程度で手に入る超コスパ高い標準レンズになってます。
(今は私も新しい方を持ってますが、レンズの性能ではなく動画のAF性能で買い替えただけで画質的にこのレンズで不満は無かったのです)

エントリーNo.4

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smc Takumar(PENTAX) 50mm F1.4 (後期型)
高級玉ばかりではなく、普及玉だったらということで登場してもらいました。レンズ構成は6群7枚。
1973年発売、発売時の価格は2万程度。数が出ているので中古では1万円以下で入手できます。
設計はCarl Zeissのプラナーにかなり似ているらしく、ボケ味も評判がいいレンズです。

オールドレンズ楽しむなら、コレクターになる気がないならタクマー(PENTAX)は、ほとんどが低価格で解像度そこそこ高くておすすめです。

現在の中古価格から言うと、
キヤノン>PENTAX(1.2)>SIGMA>Takumar(1.4)となるんですが、画質はどうなんでしょうね。

最初の一枚

全部のレンズをα7Ⅲにマウントアダプター経由で取り付けて、絞りは全開放で同条件で撮影比較してみます。

では、まとめてドンっ!

1-FD50-1 [オリジナルサイズ]

1-PENTAX-1 [オリジナルサイズ]

1-sigma-1 [オリジナルサイズ]

1-takumar-1 [オリジナルサイズ]

このサイズで使ったらどのレンズでも普通に大丈夫ですね。とはいえ、判別しやすい条件を選んだので、詳しい人ならたぶんこれでも区別できるでしょう。

順番は以下の通り

キヤノン FD55mm F1.2
SMC PENTAX 1:1.2/50
SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM
smc Takumar(PENTAX) 50mm F1.4

先ほど挙げた現在の価格の高い順に並べています。価格差と言っても上が3万円台くらいなんで最新レンズに比べたら大したことないんですけど。

中心部のアップで比較  

今度は、真ん中のピントの合っている場所のアップです。
さっきとは意地悪く順番を変えてみます。わかりますでしょうか?

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順番はこんな感じです。

smc Takumar(PENTAX) 50mm F1.4
キヤノン FD55mm F1.2
SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM
SMC PENTAX 1:1.2/50

大体これで等倍です。
印刷の場合もウェブページの場合もこれ以上拡大して使われる事は無いですし、そもそも等倍で使われること自体が稀です。
ということから、思ったほど差が出てないというのが普通の感想ではないでしょうか。
私もそう思います。

キヤノンの55mm1.2とTakumarの50mm1.4 は当時10倍近くの価格差があったのですが、その価格差はどこから出てくるのか不思議でたまりませんと言うレベルです。

これだったらカメラのレンズにお金をつぎ込むより、ヘッドホンやイヤホンにお金をつぎ込んだほうがよほど元が取れそうです。

たださすがにデジタル用に再設計されたSIGMAの50mm1.4は、色の出方と良い解像度といい頭一つ抜けていますね。

仕事で使っている時でも、お散歩フォトレベルなら正直どのレンズを使っても問題ないのかなと思います。ただ一度インタビューでオールドレンズを使ったのですが、ボケはいいものの、人の顔がいまひとつはっきりしない感じになってしまいました。

人間の目は、人間の顔を最も詳細に判別するようにできていますから、長時間人の顔を見続けるカットで使うのはやはり避けたほうがよさそうです。
とは言っても、ピントのずれたカットよりは全然マシですけどね。

ボケ味を比べてみよう

次は背景のボケを比較しましょう。

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順番はさっきと同じで

smc Takumar(PENTAX) 50mm F1.4
キヤノン FD55mm F1.2
SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM
SMC PENTAX 1:1.2/50

真ん中上の部分を抜き出してみました。これもほぼ等倍です。
40年前はボケ味についてはそれほど重視されていなかった頃なので、ここでは最新のシグマのボケ味の柔らかさが際立って見えます。

意外だったのが、当時の最高級高額レンズのキャノンFDのボケの汚さ。

もちろん写真の表現によっては、こういう輪郭が際立つリングボケが必要な場合もあるんですが、通常はこれだけ輪郭ばっかり重なると、うるさくなります。

オールドレンズの中では1番重くて大きな魂だったので、このレンズが1番ボケ味がいいんじゃないかと思っていたんですがびっくりしました。

実はこのレンズ比較をやった後に、1.2のペンタックスの方を売却しようと思っていたんですが、この比較で気が変わってキャノンの方を売却しました。

違う写真でも比較してみましょう

他の写真でも比較してみましょう。
全景(SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM)

2-sigma-1 [オリジナルサイズ]

真ん中ちょっと右側のピントがだんだん外れていく場所を選んで等倍に拡大します。

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smc Takumar(PENTAX) 50mm F1.4
キヤノン FD55mm F1.2
SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM
SMC PENTAX 1:1.2/50 の順です。

ここも同じ傾向でキヤノンのボケが一番汚く、SIGMAが最も自然です。

明暗の差が激しいところも比較しよう

全景(SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM)

3-sigma-1 [オリジナルサイズ]

境目を拡大してみます。

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smc Takumar(PENTAX) 50mm F1.4
キヤノン FD55mm F1.2
SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM
SMC PENTAX 1:1.2/50

本当は、パープルフリンジ(レンズの収差)について調べるはずだったのですが、ススキが細すぎてさらに風が吹いていたため、レンズの収差の問題なのか、シャッタースピードによるブレで色が混ざったのか、センサーの偽色なのか区別がつかず、ここではノーコメントです。

※ちなみにレンズの収差とは、プリズム効果によるRGBの光線のズレによって本来の色と違う色が輪郭に出ることです。

こういうはっきりした条件だと、シグマのレンズの解像感が際立ちますね。それにしてもキヤノンはほんとにアレですね…。

みんな大好き夜景イルミボケでの比較

最後に、夜景でのイルミボケです。インスタやってる人は、イルミボケはかなり重要じゃないでしょうか。

8-FD50-1 [オリジナルサイズ]

8-PENTAX-1 [オリジナルサイズ]

8-sigma-1 [オリジナルサイズ]

キヤノン FD55mm F1.2
SMC PENTAX 1:1.2/50
SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM
※Takumarは撮り忘れました、すみません。

細かいところを探るとキリがないですが、まあはっきり言って大差ありません。

夜景ボケでは、単純にレンズの開放絞りの大きさがものをいいますね。
なので、1つだけ絞りが1.4とちょっと暗いSIGMAのレンズのボケが1番小さいです。

あとの2つはボケ玉の大きさはほとんど同じですが、キヤノンのほうはちょっとボケがレモンボケになる傾向があるようです。ここでもPENTAX優秀でした。

まあ結論としては、レンズを変えると腕が上がると言うのはほぼ幻想です。

ただ、そのブランドを持ってると言うことで、自分で自分を騙す事って十分にありますし、気分によって撮る写真が違ってくると言うのはまあ事実ですから、好きなレンズ使って気分をよくすると、一番いい写真が撮れるんじゃないでしょうかね。

間違ってもレンズ購入の家庭内稟議を通すときに、データを根拠にしないように!

ちなみに晴れた日の逆光比較なんかも欲しいけど、今回のレンズの半分は売り払ったのでもう追加比較はできません!

※2021/4/19 訂正
最後のイルミボケの比較でPENTAXとSIGMAを逆に表記していた部分を修正しました。

あ!!この記事とぜっんぜん関係ないんですが、40代以上向けのYouTubeチャンネルを始めてみました。なかなか人が来なくて困ってます。
人助けだと思ってちょっと覗いてくださるとうれしいです。m(_ _)m

40チャンネル 人生の後半戦をたのしく



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