時間自由 子連れ出勤可 9割がワーママ、それでも成長する新しい働き方の会社の作り方(2)
※2019年5月16日初出の記事をnoteに引っ越ししたものです
ワーキングマザーにとって理想の働き方ともいえる独創的な事業を展開する「お掃除でつくるやさしい未来」の前田社長インタビューの続き。
大企業で優秀な社員を取るのはそう苦労はしませんが、掃除という職種で、しかも福岡の小さい会社が優秀なスタッフを揃えるのって、まじで大変だと思うんです。ところが、前田さんに聞いてみたら、これが全然コストかかってない。
今回は働くということに求めているものに対する認識をいろいろ考えさせられました。
話し手:株式会社お掃除でつくるやさしい未来 代表取締役 前田 雅史さん
聞き手:サイボウズ 野水
前の回はこちらです
給与も待遇も書かない求人広告、でも理念で人は集まる
どうやってぜんぜん違う地域のお母さんたちとつながったんですか?
最初はメルマガを打ちました。子育て中のお母さんとかがよく読むようなメルマガに。
広告とかで出すんですか?
めちゃ怪しい一文なんですけど、「あなたの空き時間に賢く小遣い稼ぎしませんか?子連れOK!」みたいな。
怪しい!出会いサイトのサクラ募集みたいな広告ですね。(笑
でも、その怪しさがあっても結構見られていたみたいで、怪しいけど一回会ってみるかみたいな人が出てきたんです。会ってちゃんと今までの経歴と理念等を持っていることを伝えたら「もちろんやります!」という人がちょこちょこ出てきました。
やっぱり、主婦というか子育て中のお母さんが多かったんですか?
そもそもそこを狙って送りました。子育て中の人が取るようなメルマガで
そういう人しか応募がそもそもないようにしたんですね
そうです。そうやって遠くで働くスタッフもできてきたんですけど、次に課題になったのが、そのお母さんたちがいかにモチベーションを落とさずに掃除をするか、というところが次の会社としての課題。
要は出社しないわけだから、常に一人なんですよ。そうならないようにいかにつながるか。
いかにリアルに感じてもらうかというところが一番の課題だなと思って、それを補うためにサイボウズOfficeを導入しました。
ありがとうございます!それでグループウェアを使っての会話ってできてました?
当時はほとんど使ってなかったですね。一方通行ですね。
あらら、それではコミュニケーションの課題って解決できなかったんですね?
当時は上手くできてなかったと思います。時系列でどんどん流れていったのかな。だから、すごく管理が増えていくと難しくなっていったんですよね。そんな時にある人に相談すると、そういう使い方だとkintoneの方が絶対いいと思うよという風なアドバイスを頂いて。
うわあ、(サイボウズにとって)神様みたいな方がいる。実際にソフトを変えた時に使い方も変わったんですか?
完璧に分けましたね。サイボウズOfficeの方はグループウェアとしてお互いのスタッフのスケジュール管理が中心、kintoneの方は報告書の作成と、この報告書アプリの中にお客さんも入ってきてもらうという仕組みになります。
いままで紙ベースでやっていて、会社でも写真を撮って、持って帰って、パソコンに落として、Excelに落として、報告書を作って月末まとめて、とかやっていたのを。ここにお客さん入ってきてもらえばみんな速くなるし楽だよねと。
作業報告はサイボウズのkintoneを使いこなす。現場に到着したことの証明は物件の写真で。作業終了時も写真にコメントを付けて報告。時間も状態もリアルタイムに会社だけではなく、お客様にも共有されるのでスタッフは事務所などに行く必要はない。
なお、サイボウズのホームページでは、「お掃除でつくるやさしい未来」様の詳しい使いこなし事例を紹介しています。よろしければそちらも合わせてご覧ください。
「掃除のおばちゃん」ではなく「○○さん」と呼ばれた瞬間
でも、それもコミュニケーションとちょっと違う気もするんですけど
どちらかというと生産性向上なんですけど、kintoneにお客さんも入れるようになって、ちゃんと〇〇さんという風に認知されるようになったんですよ
そうか、掃除のおばちゃんに言っておいてではなくなる?
会話の中で〇〇さんという感じになりますよね。お互い同じところで入っていっていると。
社長ではダメなんですね
社会的存在意義って結構大事だと思うんですね。自分がやっていることがどれだけ意義のあるで対外的にどう評価されるかというのは、きっと大きいんじゃないかなと僕は思いますね。やっぱりそういう言葉ってお客さんに言われるのが一番嬉しいんですかね?
大きいと思います。あと入居者さんにとかもですかね。
入居者さんとの関係も変わるんですか?
掃除していると結構ありますよ。ジュースもらったとか、飴もらったとか、ありがとうの手紙をもらったとか。
やっぱり当然、挨拶しますよね。うちのスタッフが掃除の誇りとプライドと持って元気はつらつで基本やっているので、そうするとやっぱり向こうから「お疲れさん」とか言われたりとか、子どもと一緒にお掃除している人とかは、そこに年配の方が出たりとかすると、自分の子世代と孫世代がお掃除している。これは絶対たまらないですよね。
全然仲良くならない人だって、というか、そういう掃除の会社のほうがむしろ多いですよね
管理会社さんから聞いたことがあるのが、「入居者さんから不審者がおる」って連絡があった、と。急いで行ってみたら、お掃除の業者さんがごみ置き場を一生懸命掃除していた。嫌々下向いてこうやっているのが、不審者に見えたんでしょうね。
掃除している姿とごみを漁る姿は紙一重ですか…
一番はやっぱり会社が目指していることに則ってやっていること。掃除というだけではなく、うちの会社の社名が「お掃除でつくるやさしい未来」ですが、その「じゃあ優しい未来って何だろう」とか「何のためにお掃除をしているのか」とか、そういう気持ちをしっかり持ってお掃除していると、やっぱり掃除している姿ってすごい人の心を動かすと思うんです。
リクルーティングはSNSで
でも、やりたいと手を上げてこられる方から「何でそんな社名なんですか?」って聞かれません?
うちの場合はリクルーティングはすべてSNSを使っているんですよね。
どうやってやるんですか?
facebookです。
facebookで求人広告?
そうですね、新しい物件、今回は熊本なんですけど、熊本で何十棟も決まったりすると熊本の子育て中のお母さんにターゲットを絞って有料で記事を書きます。
なるほど、それで応募があった方でも、「お掃除でつくるやさしい未来」という変な社名の会社だなと思って来るわけですね、失礼ながら
Facebookで来る人はまず徹底的に調べますよね。会社のFacebookページを。それとか僕のことも調べている人が多いですし。
なので、社名の意味ってそういうことかって。
その募集記事の中には、給料も書かないし募集地域も書かない。僕は報酬には目に見える報酬と、目に見えない報酬があると思うんですけど、目に見える報酬は一切書いてないです。やりがいとか、何をしているとか、仲間がいるとか、そこの目に見えない報酬に引っかかる人と一緒に働きたいというのがあるので。
そこでまず、興味を持ってくれない人はまあいいや、と
そうそう、そうです。「僕はもうなんでもします、金が高ければ」みたいなという人とは別に働かなくていいので。
結構それで来るものですか?
来ますね。大体今回の熊本でも一週間で10人ですね。
うわっ!この求人難というか人材難の時代に?ちゃんとインターネットも使えて、理念にも共感してくれる人が一週間広告出したら10人は集まる?
おそらく紙ものの媒体で求人をかけると、そんなこと言うと紙ものの媒体会社さんに申し訳ないんですけど、うちが募集をかけても来ないと思うんです。さらに遠くの場所なので、Webリテラシーがある程度ないとダメなわけですよね。
遠くでも、ちゃんと人と人はつながれるということを信じている人としか仕事ができないので、そういう人が応募してきます。
広げてゆきたいのは事業ではなく理想の地域
仙台も先に案件がきたんですね
今8人、全部SNSからでしたね。去年一年で8人まで増えたんです。
うちの仙台営業所より成長ペースが速い
その中でも面白いなと思ったのは、最初に応募してくれた方が子育て中なんですけどダブルワークなんですよ。しかももう一つの仕事のほうがはるかに給料が高い。
え?何で掃除しようと思ったんですかね
何であなた掃除なんかしてるの?みたいなことを言わるんですよって言うので、何て答えるの?と言ったら、会社の考え方とか社名の意味とかを話して、こんな考えの会社って東北にないでしょう。それをやったら私ってかっこよくない?って。
おお、かっこいい!
最近多いのは若いオーナーさんとかでどうしてもうちがいいと言われる方とかですね。
マンションのオーナーさんが指名で?
オーナーさんは東京、物件は福岡の久留米とか、兵庫県の山奥に1件だけ持っているオーナーさんがどうしても掃除をうちに頼みたいと言って、わざわざ九州の僕たちに頼んだりとか。今までの常識とされていた距離とかの弊害とかビジネスの在り方というのは実は崩れているというか。
対人距離というのは物理的距離と関係ない?
関係ないです。少々弊害があった方が、それを乗り越えようとするアクションをするので心の距離が近くなると思う。
障害のある愛ほど燃えるみたいな
そんなニュアンス
ハナから連絡が取れると思っているから逆にダメになる場合もあるかもですね
そうですね、どうやったらできるだろうかとまず考えたり、アクションを起こしたりするから近くなりますよね。
でも、一回しか会ってないまま一年経ったら、社長の顔ってどんなだったか忘れる人って出てきそうですね
どれだけリアルに仲間を感じるかというのは大事で、リアルって会わなくてもリアルに感じるためのツールってありますよね。
例えば、ZOOM(テレビ会議サービス)もうちはかなり多用してますし。毎朝9時にはZOOMの案内を全スタッフに流すわけですよ。
子育て中のお母さんもいるから9時に入れない人もいるけれども、10人から20人までいないくらい、ZOOMでバーっと入ってきてみんなで朝礼するんですよね。
前田さんの理想は、「お掃除で作るやさしい未来」という理想を広げることだと思うんですけど、いたずらに拡大していくのとは違いますよね
そうですね、今までのマーケティングというのは、大都市なら大都市のマーケットを調べて、そこに営業所を構えて、部隊を送り込んだり作ったりしてシェアを取っていく、というのがやり方だと思うんですけど、僕の広げ方は、どんなに田舎でもどんな地方でも、そこで「僕たちの会社の在り方っていいよね、この会社に頼みたいよね」と思ってくれるお客さんがいて、僕たちの考えに賛同してくれるお母さんがいて、そこが僕たちにとっての市場なわけなんです。
それに賛同してくれる人が日本中いたるところに増えていって、結果的にどこに旅行に行っても、お掃除している子どもとお母さんがいるよみたいな状況が日本中に広がっていったら最高だなと。
だから「お掃除」より、「やさしい未来」なんですね
そうです、そうです。
さらに続きます。
Facebookで求人で大量採用とか半信半疑のまま福岡から仙台へ飛び、もっと給料高い仕事のダブルワークとして、わざわざ掃除を選んだスタッフにお話を聞きに行きました。
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