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ペテルブルグのたまねぎ

ヘッダーの写真は、ペテルブルグに到着したその日の夜に撮った、血の上の救世主教会(Храм Спаса на Крови)。写真は現地時間で22時くらい(日本時間で午前4時くらい。どうりで徹夜明けみたいなテンションだったわけです)。

このあいだロシアのサンクトペテルブルグに行ってきたので、記憶が薄れないうちにここに書いておきます(出発前は個展とそのワークショップの準備でいっぱいいっぱいで、情報がほとんどないまま行ってしまったので、いま調べながらまとめてます)。

グリボエードフ運河(канал Грибоедова)からの眺め(とさらっと言ってますが、この運河の名前もさっき調べて判明)。教会の手前に広場などはなく、運河の横にいきなり建っているので、全体を撮ろうとすると橋の上とか運河沿いの道から撮るしかなく、ちょっと離れると手前の建物で右側が隠れるという。広場の中央にどーんと建っている感じをイメージしてたら(モスクワの赤の広場の印象のせい)、だいぶ違いました。絵葉書がつくりにくい建物です。

写真を見てみると、軽い散歩のつもりが、ホテルの近くだったエルミタージュ(の広場のところ)はともかく、血の上教会から書店ドム・クニーギ(Дом Книги)付近まで行ってることが判明(文中にできるだけキリル表記を入れてるのは、カタカナ化表記がばらついてるからです。下の地図の時点で、「クニギ」と「クニーギ」がすでに競合してます)。

※移動で疲れている到着日、しかも夜にこれだけ移動できてるのは、現地のガイドさんがついててくれたからです。ひとりとか初めてだと危ないです。

血の上の教会、カザン大聖堂、イサアク大聖堂、エルミタージュ美術館、ロシア美術館あたりは徒歩で回れる距離にまとまってるので、観光しやすい街です。マリインスキー劇場も歩いて行けなくもないんですが(エルミタージュ付近にホテルをとったとして)、夜の部を観劇すると、当然帰りが夜遅くなるので、歩いて帰るならロシア人のボディガードをつけるとか、対策したほうが安全だと思います。

エルミタージュ広場の入り口(上)と、広場に入ったところ(下)。ヴィーナスフォートみがあります。驚異的にでかいですが。

夜見ると悪魔城みたいなんですが、昼間見るとお菓子の家かおとぎの国です。写真は快晴ですが、わたしが滞在した10月下旬にこの天気は超レアだそう(基本は曇りか雨。青空バックは望めないそう)。ありがたいことに、滞在中ほとんど晴れでした。メンバーのなかに強烈な晴れ人間がいるのでは(もしくは全員がそれでは)、と思うくらい。昼間でも暗いから眠くなりますよ、ペテルブルグにいる間は太陽は拝めないと思ってくださいね、と脅されて来たんですが、毎朝天窓からさんさんと光が。

別の日に撮ったもの。どこかへ行く途中に通りすがることも多かったので、血の上教会の写真はわりとたくさん残ってました。中央の塔は補修工事中で覆われてます。ここに限らず、ほかの施設でもメンテナンスしてるところが多かったです。いるはずの像がいなかったりします。開いてるはずの店が閉まってる、あるはずの入口がない、さっき通れたとこが通行止め、みたいなことはこの国では日常茶飯事らしいんですが、滞在してる間にあまり気にならなくなりました。ガイドブックはあてにならないですが、これはこれでRPGみたいで楽しいです。

ロシアというとたまねぎ屋根を思い浮かべることが多そうなんですが(わたしがそう)、ペテルブルグにはあんまりないので、ここは貴重なたまねぎです。ペテルブルグは、ヨーロッパに追いつくために、18世紀に急ごしらえでつくられた街なので、たまねぎ屋根(=古臭いもの)は最初からつくる気がなく、それで少ないみたいです。わたしが見た範囲では、ここしかなかったような。この教会だけがっちりロシアっぽいデザインなのが不思議ですが、19世紀後半あたりは、まあそういうのあってもいいかな、というムードになっていたんでしょうか。レトロブーム、リバイバル的な。

中はこんな感じです。高い塔とかついてるから、2階とかあるのかな?と思ってたんですが、1フロアでした。青ベースに金で、僧侶ちゃんカラーです。何も描いてない壁はないんじゃないかという勢いで、宗教画が描いてあります。空白恐怖症な傾向はここに限らず、他の教会や聖堂、宮殿や邸宅にもあって、装飾がない壁は許されないのかと思うくらい、びっしりとなにかが施してあります。壁の絵をぜんぶ撮影するだけで、1冊本ができると思います。

こんな感じで天井までびっしりなので、真面目に見てると首が痛くなります。あと、油断するのでスリにも注意です。

いまはこんな豪華なたたずまいですが、第二次世界大戦中はじゃがいも倉庫にされてます(ソ連時代は宗教はすべて廃止、宗教施設は倉庫として使えなければ壊してしまえ、という感じだったそうです)。ぜいたくは敵だ、のソ連時代に雑に扱われてて(持ち主の貴族は国外逃亡)、その後がんばって修復した施設が、ペテルブルグにはこのほかにもたくさんあって、修復前の写真と見比べてみると、それに費やした労力と工夫にくらくらします。

この教会は、ロシア皇帝アレクサンドル2世がここでテロ(1881年)にあってそれが原因で死んだので、その追悼のためにつくられたものだそうで、だから「血の上」という名前がついてるんですが、もっと婉曲的な表現はなかったのだろうか…(正式名称は別にありますが)。テロにあったときに皇帝がもたれた橋の欄干とその場所を保存するために設計されたので、運河の横にいきなり建ってる、という事情です。

はじめてPhotoshopの「遠近法ワープ」を使ってパースを除去してみました。でもまあ一枚絵なら「自由変形」でもいいかもと思います…。あれは三点透視みたいなのを平たくするのには便利です。パースかかっててもあとからどうにでもなるので、とりあえず撮っとくといいです。

この麹菌か界面活性剤みたいな模様がとてもかわいい。こういう小部屋で読書がしたい。細かいところがいちいちかわいいんですが、何かが施してある面積が広すぎるので、ターゲットを絞らないと資料も撮りきれません。内装ばかりに気を取られて、肝心の、保存してあるはずの橋の欄干を見るの忘れました…

出口にあった柱。たぶん地元のひとにはどうでもいいようなところが、いちいちかわいかったです。


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